家族
2020/04/27

親の介護費用はいくらかかるのか?30代からの準備ガイド

30代といえば仕事が軌道に乗りはじめる年代ですが、この頃から気にし始めた方が良い事柄の一つに「親の介護」が挙げられます。両親が健在であれば気にするのはまだ早いように思われるかもしれませんが、介護とは突然やってくるものです。時間的な余裕のあるうちに備えておきましょう。

介護費用に関する考え方

「親の介護」にまつわる心配事として、最初に浮かぶのがやはり費用面でしょう。実際的な要素を 押さえれば、後々の心配事を減らすことができます。

「親の介護は親のお金で」が原則

介護費用に関する考えは人それぞれですが、基本的な考えとしては「費用面の負担は親」としておく方が良いでしょう。その理由は主に以下の点です。

・親の思いを尊重するため
子としては親の介護費用を負担することが務めのように思えるかもしれませんが、介護される側である親の気持ちになれば、必ずしもそうとはいえません。子が費用の大部分を負担することになると、親が「申し訳ない」という気持ちになる恐れがあります。お互いの気持ちにズレが生じないよう、親が本当に何を必要としているかを知るため、よく話し合う必要があります。

金銭面以外では、精神的なサポートが考えられます。こまめに顔を出し、家事を手伝ったり、少しの間でも話し相手になったりといったケアの積み重ねが、親子それぞれにとって気持ちの良いことかもしれません。

・親子共倒れを防ぐため
介護とは長期間に渡り、また終わりがいつ来るかも分かりません。その間には突然の怪我・病気に対する治療費の発生があったり、また父母と祖父母の介護時期が重なったりする状況も多々あり、潜在的リスクを数十年に渡って回避することは不可能です。介護とは金銭面だけでなく、精神的・肉体的にも関係する人の負担となります。もしもの時のため、また自身のためにも、資金を含んだ余裕を持っていなければ、親子共倒れとなりかねません。

また、自身もやがて介護対象になることを念頭に置いておきましょう。玉突き式に下の世代にお金の負担がかからないよう、費用負担の中心は常に介護される側にあった方が長期的に見て良い結果を生むこととなるでしょう。

そのために話し合っておくべきこと

・介護にかけられる費用の試算
制度や介護施設について調べるより先に、用意できる予算を洗い出しましょう。まず介護を受ける側である親の資産を算出し、場合によって子が出せる無理のない範囲での資金を提示します。最終的にかけられる介護費用の上限を親子で共有しておきましょう。

・介護保険への加入
介護保険とは、費用の負担を個人に一任するのではなく社会全体で負担するという考えのもと、2000年に導入された公的制度です。

基本は65歳以上で要支援・要介護の認定を受けた方が加入対象となりますが、より早い時期から介護が必要となった方のため、加齢による疾患(脳卒中や認知症など)と認められれば40歳からでも受けることが可能です。条件となる「要支援・要介護認定」を受けられる場所は市町村窓口で、調査員による本人また家族への聞き取り調査のほか、主治医等専門家からの意見書などを加味して最終的な判定が行われます。

親の健康状態を常に親子ともに把握し、少しでも心配なことがあれば医療機関で検査を受け、介護が必要である状態と認められれば、できるだけ早いうちから介護保険の加入を検討しておきましょう。

どの程度の健康状態から介護保険を受けられるか分からない場合、また既に介護が必要となっている場合、居住地域にある「地域包括センター」で相談しましょう。ケアマネージャーが判断、必要であれば要介護認定の申請から今後の介護計画までを取り仕切ってくれます。

・通帳や印鑑の場所
いろいろな手続きをスムーズに行えるよう、通帳や印鑑などの管理方法についても話し合っておきましょう。必要となった時にこれらの場所が分からず手続きが滞ってしまうことも珍しくありません。

介護にかかる費用はどれくらいか?

介護費用の平均は400万円を超える?

介護を行なったことがない人にとって、具体的な介護費用をイメージするのは容易ではありません。そこでまず、日本国内における介護費用の平均となる値を参考にしてみましょう。

・一時的な費用の平均
一時的な費用とは、バリアフリー工事や昇降機据え付けなどの住宅改造費用や介護用ベッドの購入などにかかった費用を指します。
 
かかった
費用はない
15
万円
未満
15~25
万円
未満
25~50
万円
未満
50~100.
万円
未満
100~150
万円
未満
150~200
万円
未満
200
万円
以上
不明 平均
15.8% 19.0% 8.6% 6.8% 9.1% 6.0% 1.9% 6.1% 26.7% 69万円

出典:(公財)生命保険文化センター

・月額平均
支払った
費用はない
1万円
未満
1万~
2万
5千円
未満
2万5千~
5万円
未満
5万~
7万
5千円
未満
7万
5千円~
10万円
未満
10万~
12万
5千円
未満
12万
5千円~
15万円
未満
15
万円
以上
不明 平均
3.6% 5.2% 15.1% 11.0% 15.2% 4.8% 11.9% 3.0% 15.8% 14.2% 7.8万円

出典:(公財)生命保険文化センター

・介護期間
6ヶ月
未満
6ヶ月~
1年
未満
1~2年
未満
2~3年
未満
3~4年
未満
4~10年
未満
10年
以上
不明 平均
6.4% 7.4% 12.6% 14.5% 14.5% 28.3% 14.5% 1.7% 54.5ヶ月
(4年7ヶ月)

出典:(公財)生命保険文化センター

以上の表は生命保険文化センターが平成30年度に行なった調査で、過去3年間に介護経験がある人を対象としています。その結果、介護にかかる一時的費用の平均が69万円、月額平均が7.8万円、介護期間が平均で54.5ヶ月(4年7ヶ月)という値が出ました。仮にこれらを合わせてみましょう。

一時費用平均69万円+月額平均7.8万円×介護期間平均54.5ヶ月=494.1万円

介護費用の平均はおおよそ494.1万円ということになります。あくまで参考ではあるものの、平均的な介護では500万円近くかかるということです。

介護費用のうち公費でまかなえる範囲は?

次に、「介護保険」では一体どの程度の額をまかなえるのでしょうか。

・介護度の基準
介護保険では、対象者をその健康状態によって「要支援」か「要介護」かに分け、さらに要支援は1~2、要介護は1~5までの段階のどれに当てはまるかによって、受けられる支給額やサービスが決定します。この段階分けを「介護度」といいます。各介護度の基準となる健康状態は、以下のリストを参考にしてください。

要支援1:要介護状態とは認められないが、社会的支援を必要とする状態
食事や排泄などはほとんどひとりでできるが、立ち上がりや片足での立位保持などの動作に何らかの支えを必要とすることがある。入浴や掃除など、日常生活の一部に見守りや手助けが必要な場合がある。

要支援2~要介護1:生活の一部について部分的に介護を必要とする状態
食事や排泄などはほとんどひとりでできるが、ときどき介助が必要な場合がある。立ち上がりや歩行などに不安定さがみられることが多い。問題行動や理解の低下がみられることがある。この状態に該当する人のうち、適切な介護予防サービスの利用により、状態の維持や、改善が見込まれる人については要支援2と認定される。

要介護2:軽度の介護を必要とする状態
食事や排泄に何らかの介助を必要とすることがある。立ち上がりや片足での立位保持、歩行などに何らかの支えが必要。衣服の着脱は何とかできる。物忘れや直前の行動の理解の一部に低下がみられることがある。

要介護3:中等度の介護を必要とする状態
食事や排泄に一部介助が必要。立ち上がりや片足での立位保持などがひとりでできない。入浴や衣服の着脱などに全面的な介助が必要。いくつかの問題行動や理解の低下がみられることがある。

要介護4:重度の介護を必要とする状態
食事にときどき介助が必要で、排泄、入浴、衣服の着脱には全面的な介助が必要。立ち上がりや両足での立位保持がひとりではほとんどできない。多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。

要介護5:最重度の介護を必要とする状態
食事や排泄がひとりでできないなど、日常生活を遂行する能力は著しく低下している。歩行や両足での立位保持はほとんどできない。意思の伝達がほとんどできない場合が多い。

出典:(公財)生命保険文化センター

・介護度ごとの利用限度額
介護度 利用限度額
要支援1 50,320円
要支援2 105,310円
要介護1 167,650円
要介護2 197,050円
要介護3 270,480円
要介護4 309,380円
要介護5 362,170円

上記の表は、厚労省による発表で2019年10月改定後の介護度別利用限度額となります。この利用限度額を超えた分については、原則として全額自己負担となります。

介護保険サービスの利用者負担額

介護保険サービスの利用者負担額は原則として1割とされていますが、高齢者でも現役と変わらない所得がある方は2割負担、さらに一定以上の所得がある方は3割負担となります。

1人世帯か夫婦同居世帯かなどの要素でも負担割合が変動するため、以下の表を参考に計算してみましょう。
 
第1号被険者
65歳以上の方
本人の合計所得
金額が220万円
以上
年金収入+その他の合計所得金額の
合計額が単身世帯で340万円以上、
または2人以上世帯で463万円以上
3割
年金収入+その他の合計所得金額の
合計額が単身世帯で280万円以上
340万円未満、または2人以上世帯で
346万円以上463万円未満
2割
年金収入+その他の合計所得金額の
合計額が単身世帯で280万円未満、
または2人以上世帯で346万円未満
1割
本人の合計所得
金額が160万円以上
220万円未満
年金収入+その他の合計所得金額の
合計額が単身世帯で280万円以上、
または2人以上世帯で 346万円以上
2割
年金収入+その他の合計所得金額の
合計額が単身世帯で280万円未満、
または2人以上世帯で346万円未満
1割
本人の合計所得金額が
160万円未満
1割

出典:大阪市HP「介護保険サービスの種類と利用者負担」

介護保険で受けられるサービス

介護保険制度では、介護度によって受けられるサービスが異なります。要支援の方が受けられるのは「介護予防サービス」、要介護と認定された方が受けられるのは「在宅サービス」と「施設サービス」の2種です。(分けられてはいるものの、「介護予防サービス」でも」以下のリストに準ずるサービスを受けることができます)

・在宅サービス
要介護に認定された方は、以下のような在宅サービスを受けることができます。

(1)訪問入浴介護:ホームヘルパーによる入浴介護
(2)訪問介護:入浴・排泄などの身体的介護に加え、料理・洗濯・掃除など家事を中心とした生活援助
(3)訪問看護
(4)デイサービス(通所サービス)
(5)ショートステイ(短期入所介護)
(6)福祉用具の貸与:車椅子や介護ベッドなどの貸与
(7)福祉用具の購入費・住宅改修費の支給

・施設サービス
施設サービスでは、以下のような施設での介護を受けることができます。

(1)介護老人保健施設:症状が安定している人が、積極的な治療よりも看護や介護、リハビリを中心とした医療ケアと生活サービスを受けるための施設

以下の施設では、入居者が多く介護度3以上の方のみという制限が設けられることとなりました。

(2)特別養護老人ホーム・介護老人福祉施設:つねに介護が必要で、在宅での生活が困難な人が必要な介護、機能訓練、療養上の世話を受けるための施設

なお、治療を終えた方の長期リハビリ施設である「介護療養型医療施設」は、2017年の制度改正により廃止が決定致しました。
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