育児休業の期間は原則1年までと法律で定められていますが、それを短いと感じるか長いと感じるかはそれぞれの事情によるもの。

職場復帰直前となっても復帰が難しい状況にある人もいるでしょうし、もう少し子供に時間を取りたい人もいるでしょう。育休の延長を希望するとき、それが可能となる3つのケースがあります。それぞれを詳しく見てみましょう。

育児休業は延長することができる

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育児休業について定めた法律が、『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律』(通称『育児・介護休業法』)です。この法律で定められている内容は雇用主の義務であり、要件を満たした働き手が育休取得を申し出たとき、雇用主は拒むことができません。

また、この法律は「これ以上に拡大して休業を与えてはいけない」という上限を定めたものではないので、雇用主が独自により手厚い規定を定めることは自由です。

育児休業の期間は、原則として子供が生まれた日から1歳の誕生日の前日までの間で、働き手が休業を申し出た期間と定められています。しかし、この規定も「1年を超えてはいけない」という禁止ではないので、1年を超えて取得できるケースがあるのです。

ケース1:特別な事情がある場合

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法の想定する特別な事情

育児・介護休業法では、1年を超えても休業が必要と認められるケースとして、次のような例を想定しています。

① 保育所などの利用を希望して申し込みを行っているが、1歳になった後も当面利用できない場合
② 子育てを主に担当する親が、死亡やけが、病気、離婚などによってできなくなった場合

このような場合は1歳6カ月まで延長が可能です。それでも復職が難しい事情が解消されない場合は、雇用主に申し出ることにより、2歳まで育休を延長することができます。

待機児童と保活の現状

近年、子供を持つ親の悩みの種となっているのが、保育園入園の難しさです。厚生労働省『保育所等関連状況取りまとめ』(2017年)によると、保育園に入れない待機児童数は2017年で約2万6000人。

ここで言う待機児童数は潜在的な入園希望をカウントしていません。「潜在的保育所定員率=保育所定員数/20~44歳女性人口」という指標を使ってみてみると、2015年の試算で13.6%になります。つまり、出産年齢にある女性1人当たりの保育所を利用できる可能性は、13.6%だということです(『女性就労は保育所だけでは力不足-保育所整備は核家族支援になるが働き方改革も必要-』みずほ総合研究所、2018年)。

2019年から保育の無償化がスタートしますが、「無償化よりもまず、望む人が全員入れるようにすべき」との声も多く聞かれます。

ケース2:パパ・ママ育休プラス

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父母がどちらも育休を取得することでトータル期間を延長できる

2009年の育児・介護休業法改正で、「パパ・ママ育休プラス」という制度が新設されました。これは、父親と母親の両方が育児休業を取得することで、トータルの育休期間が延びるというもの。1人の親の育休取得期間はそれぞれ1年ですが、時期をずらして取得すれば期間が延長される形になります。この場合、育児休業は子供が1歳2カ月になるまで取得することができます。

夫婦での取得の仕方はさまざま。母親の育児休業が終了した後に父親が引き継いだり、2人の育休期間を重ね合わせたり、母親の産後8週間の休業中に父親が育休を取ったり、それぞれの事情に合わせた取得の仕方が可能です。

諸外国の男性育休制度

パパ・ママ育休プラスの制度は、男性の育休取得率が低く育児への参加が進まない現状を踏まえて導入されました。男性育休の先進事例は、外国にあります。

有名なのがノルウェーの「パパクオータ制」。所得保障率100%で42週間、あるいは80%で54週間の育児休業が保障され、父親はそのうち6週間が割り当てられており、取得しなければこの権利は消滅します。1993年、世界に先駆けて導入され、10年間で資格のある父親の約9割が取得するようになるなど、男性の育休取得率を押し上げました(厚生労働省「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」資料、2008年)。

フランスでは、2002年に父親の3日間の「出産有給休暇」と11日間の「父親休暇」がスタート。今では、父親が育児トレーニングを積むための重要な期間になっています。(『フランスはどう少子化を克服したか』髙崎順子、新潮社、2016年)