育児休業の取得は女性のキャリア継続に重要な意味を持ちますが、悩みのタネがその間の収入減。給付金を受給できるとはいえ、フルの給与額に比べれば7割程度に減ってしまいます。

子育てがスタートし、ただでさえ出費のかさむ時期。頭の痛い思いをしますが、じつは育休期間中に配偶者の「扶養」に入れることを知っていますか?税金控除の仕組みを知って、世帯にかかる税額を抑え、収入減の期間を賢く乗り切りましょう。

「扶養に入る」の2つの意味

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私たちは日常的に「扶養に入る」という言葉を使いますが、そこには2つの意味が含まれます。1つは社会保険上の「被扶養者」のことで、もう1つは所得税上の「配偶者控除」のこと。育休中の「扶養に入る」とは、後者の所得税上の「扶養」を意味します。それぞれ詳しく見ていきましょう。

社会保険上の「扶養」

職場の健康保険や厚生年金に加入している場合は、被保険者の納める保険料や年金で配偶者の健康保険や年金もカバーすることができます。健康保険では「被扶養者」という扱い、厚生年金では国民年金の「第3号被保険者」という扱いになります。

健康保険で被扶養者と認定される基準は、年間収入が130万円未満かつ被保険者の年間収入の2分の1未満であること。健康保険の扶養対象となれば、年金でも第3号被保険者となる要件を満たします。

しかし、育休中は社会保険上の扶養に入る必要はありません。産休・育休中は、自分の健康保険や厚生年金に加入したままで、保険料の払い込みが免除されるからです。

所得税上の「扶養」

共働きでそれぞれに収入がある場合、それぞれの給与から税金を引かれるわけですが、一方の収入が一定金額以下の場合は、もう一方の所得税において控除を受けることができます。配偶者の税控除は、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の2種類です。年末調整や確定申告で反映させます。

控除の対象になるかどうかは、収入の額によって決まります。フルタイム勤務の会社員などの場合、収入が多いため、配偶者控除の対象になることはあまりありません。しかし、産休や育休に入り給付金を受けている期間は、妻を配偶者として申告することで、控除を受けられる可能性が出てくるのです。

2018年、配偶者控除の制度が改正された

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配偶者控除は1961年、妻の家計への貢献を考慮して控除額を引き上げ、一般の扶養控除から分離して創設された制度です。1987年には、配偶者の収入が増えたときに控除から外れることでかえって世帯収入が下がる逆転現象に配慮して、控除額の減少をなだらかにする配偶者特別控除が設けられました。

このとき、配偶者の年収上限として103万円という額が設定されました。しかし、家計の補助として働く妻の間で収入を103万円以下に抑える働き方が広まり、女性の就労を抑制する「103万円の壁」として問題となりました。

そこで、2018年の税制改革において、女性の働く意欲を後押しし就業調整せずに働ける環境を整備する目的で、配偶者控除および特別控除の年収上限が引き上げられることになったのです。一方、納税者本人の年収要件は厳しくなり、本人の年収が一定基準より高い場合は、配偶者控除が受けられなくなりました。