あまり表に出ることのないファイナンシャル・プランナー(FP)という職業の女性たちに、普段どんな相談を受けているのかリレー日誌形式でつづってもらう連載。FPの佐々木さんは要介護に近い状態となった父親に保険証券の名義人変更をするよう助言したところ、父親はこれまで世話になった長女だけでなく、実家にほとんど顔を見せない次女も保険金の受取人に指定しました。すると、音信不通だった妹さんから突然、驚くべき連絡がありました。

【前編はこちらから】

所在不明の妹から突然の電話

契約者に全ての権限が譲渡することを、お父様にお伝えし了承を得て、筆者は痺れで震える字の書類を受け取り、手続きは完了したかと思われたその数週間後、驚くべき連絡が入りました。

「解約してください」。こう電話してこられたのは、姿を消していた妹さんでした。

電話番号はわかっていても、住所を知らされていないご家族。おそらくはお母様が、一連の名義変更について妹さんに一応、知らせをしたのでしょう。妹さんは、すぐさま筆者に電話をし、「現金化して」と依頼してこられたのです。

必要書類をやり取りするのに住所をお聞きし、本人確認書類をそろえれば、解約の手続きは郵送で完了してしまいます。

父親の気持ちを話したけれど

そんなに裕福なご一家でないことは、ご実家の食卓で手続きを行った筆者であれば、わかります。一般的な家庭に介護を必要とする人がいれば、経済的に楽な状況でなくなることは、想像できることです。

先に記載したとおり、保険契約は「契約者」に解約をするかどうかの権利があります。僭越ながら、お電話口でご実家でのお父様の状況や、帰ってこない娘の為にも積み立ててきたお気持ちを、筆者はお話しさせていただきました。

「今解約すると、満期金より少ない金額で、既払い込み保険料を割ってしまいますが、よろしいですか?」

何の迷いもなく、即答で「はい」と答えられた「新」契約者。これ以上は他人である筆者が立ち入ることではないので、粛々と手続きを行いました。