今の日本は、さまざまなところで「二極化」が起こっています。それはお金の面でもいえるのですが、長い年功序列の名残から、年上・高齢者ほど資産があるといえます。

高齢な親をもつ女性としては、遺産・相続に期待する声も多いでしょう。親に万が一のことがあったとき、実際にいくらくらいもらえそうなのか、気になる方も多いのが実情です。

しかし、たとえ親子間であっても、お金のことは話題にしにくいもの。「いくらくらい遺産をくれる?」などと聞いても、マトモに答えてくれる親は少ないでしょう。

そこで今回は、遺産相続の平均額とともに、概算で遺産額を推測する方法、その他の注意点についてお伝えします。

遺産相続の平均は〇〇円。ただし……

(写真=BrAt82/Shutterstock.com)

実は今の日本には、遺産相続の金額について明確な統計がありません。代わりに「平成29年版高齢社会白書」で貯蓄額を確認してみましょう。同調査によると、60歳以上の世帯の中央貯蓄額は1,592万円となっています。ちなみに4,000万円を超える世帯は、全体の約18%です。

フィデリティ投信が2017年1月に発表した「相続人5000人アンケート」によると、相続金額総額の中央値は、2012年が862.5万円、2016年が約1,087万円と増加傾向にあります。さらに、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成29年)」では、70歳以上の世帯の中央貯金額は1,500万円となっています。

これらのデータから、遺産相続の平均金額は1,000~1,500万円程度と考えられるでしょう。相続人が何人いるかによっても、もらえる金額に大きく差が出てきます。

ただし、上記の高齢社会白書によると、約22%は500万円以下の貯金額、約8%は100万円以下となっています。「遺産がある人はあるが、ない人はない」という二極化を前提に考えましょう。

「自宅の有無」で大きく差が出る

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それでは、どのようにして親の遺産を試算すればいいのでしょうか。

まず、親の財産の有無は、「自宅などの不動産」を考えることが一番分かりやすい概算方法といえます。

不動産には明確な値段はありませんが、最近なら複数の不動産業者に「(参考として)買い取り価格の試算」を依頼できますし、周辺の売買価格からおおよその金額が想像つくはずです。

先ほどの「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成29年)」の中央値を見ると、持ち家の有無によって、約10倍の資産格差が出ています。自宅がない場合、遺産は期待しない方が賢明かもしれません。

他にも最近では、定年後の労働の有無や、倹約思考の有無でも遺産額は変わってきます。早い話、「あなたに残すつもりがあるのかないのか」で考えておくと良いでしょう。借金が怖い方なら「信用調査」も手段の一つです。

もらえるばかりではない、争族・税金に注意

(写真=polkadot_photo/Shutterstock.com)

遺産や相続を考えるときは、もらえるばかりではない点に注意が必要です。

相応の遺産相続が発生する場合は、それはそれで一族間での争い(争族)が発生する可能性があります。どんなに仲の良い兄弟姉妹であっても、大金は人を変えることもありますから、警戒が必要です。

争族が発生するときは、併せて相続税の対策も必要となるでしょう。

「遺産があるから安心」という考えが一番危険です。たとえ遺産がゼロでも自分の未来や老後は大丈夫、その上で「もらえたらラッキー」程度のライフプランを考え、これからの人生を歩んでいきましょう。

親の財産・遺産というのは、あってもなくても一定の問題が発生しやすいため、その財産額を把握しておくことは極めて重要なことです。親の考えやタイミングもありますから、強引に聞き出すことは難しいですが、少しでも把握できるよう努めましょう。

文・婚活FP山本(山本FPオフィス代表)

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