誰にでもいつか訪れるお別れの時。その時に直面する「遺産相続」。2016年には全国の家庭裁判所で1万2千件もの遺産分割の調停が行われています。ここでは相続が起きた際のもめやすい事例をランキング形式でご紹介し、事前にできる対策をお伝えします。

3位)知らない相続人が現れる!

精神的にかなり痛手を受けるトラブルです。被相続人(残す人)が亡くなった後から、自分の知らないきょうだいや配偶者が現れたりする、ドラマのようことが現実にも起こります。元の配偶者の子供や認知された子供だったり、独身だと思っていたら親がいつのまにか婚姻届を出していたりなど、自分の知らない相続人が現れるのです。

思いがけなくそして否応なしに相続人が増えるため、トラブルになりやすい事例です。なかなか対応は難しいですが、被相続人が生まれてから現在までの戸籍を取り寄せて確認しておけば、ある程度「知らなかった」ということを防げて、心の準備ができるかもしれません。

2位)土地・不動産

不動産以外の資産が少ない場合、その不動産の相続人以外が不公平を感じるパターンです。この場合、不動産を売却して相続財産を分けるとなると今まで住んでいた家を手放さなければならなくなることもあります。他にも、親きょうだいと一つの土地建物を共有名義で保有して、のちのちもめるパターンも多く見られます。

不動産を相続する人が自分の現金資産を代わりに渡す「代償分割」という手段はありますが、渡せるだけの資産を持っていないとこれも使えません。土地建物は換金するにも時間と手間とコストがかなりかかるため、前もって相続人で分け方を考える、現金を用意しておくといった事前対策が必要です。

1位)きょうだい間のトラブル

遺産相続で圧倒的に多いのはきょうだい間でのトラブルです。親が亡くなるまでは仲の良い家族だと思っていたのに、相続後にしこりを残すのもこのトラブルの特徴です。原因の一つにきょうだいの「配偶者」という存在が大きくあげられます。相続は比較的大きなお金が動くので、人の心理としてどうしても少しでも多くの遺産をもらいたい、という気持ちになります。そこに「配偶者」が口をはさんでしまうのです。

もう一つの原因として、「長男だから」など、特定の相続人に偏った相続を主張されることにより起こることがあります。金融機関が持ってくる相続資産のシミュレーションもいまだに長男の配分が多く、他のきょうだい達の分が少ないパターンがあります。

残す側の被相続人が、どの資産をどのような配分で誰に残すか、遺言やエンディングノートに残しておけばこのトラブルをある程度防ぐことができます。

残される子供たち(相続人)の対策として、自分たちの相続に「配偶者」が口を出さないという状況も作っておくことも必要ですね。相続の話し合いの時に同席してもらい、どうしてこの配分なのかを理解してもらうのも余計な口出しをさせないために有効な方法です。

相続人全員が納得する相続のために

全員が納得する相続は、とても難しいのが現実です。すべてを現金にしない限り平等には分けられず、被相続人に対し、どのようなかかわり方をしてきたか、などの「想い」も絡むので実際のところ平等はありえないといえます。

例えば親の老後にきょうだいみんなで平等に面倒を見てきたとしても、学生時代自分は公立の学校だったけれど兄は私立学校でかかっている金額が違うなどの過去も含めて争いの種になったりします。その中で、納得する相続を実現するためには遺言書を作るほか、普段からコミュニケーションを円滑にしていろいろ話し合っておくことが大切ですように心がけておきましょう。

文・矢澤理恵(ファイナンシャル・プランナー)

【こちらの記事もおすすめ】
「謎の風習」のせいで相続税6,000万円を払わなければいけなくなった話
節税対策として有効な「生前贈与」、よくある7つの誤解
知らないと損をする!「実家の相続」3つの注意点
親の不動産・実家をどうするか 名義変更の方法は?税金はどうなる?
多くの富裕層が「一番の相続対策」と口を揃える方法とは