「離婚話が長引くのが嫌なので、離婚協議で金銭的な問題をはっきりと言うことができなかった」という女性は案外多いものです。

確かに、金銭的な話題を持ち出すのはなかなか気が引けるものですし、特に夫に離婚原因がある場合、早く離婚したいという気持ちが強く、ますます金銭的な取り決めを行うことが面倒くさく感じられるかもしれません。

先日、離婚から1年たった女性(Aさん)から、「離婚の際に養育費をもらわなかったのですが、今からもらえますか」という相談を受けたことがあります。今回は、離婚後の養育費に関する悩みにお答えします。

そもそも養育費って何?

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子どもを育てていくには、学費や食費、医療費、被服費など、さまざまな費用がかかります。結婚しているときには、夫婦が共同で負担します。離婚後は、子どもを引き取った親(親権者)が、直接その費用(養育費)を負担することが一般的です。しかし、引き取らなかった親(親権者でない親)と子どもとの関係は、離婚後も親子であることに変わりありません。

ですから、その子どもが成人するまでは、たとえ親権者でなくても親としての責任があります。また、親権者だけが養育費を出すということは、かなりの負担になります。そこで、親権者ではない親も、子どもを育てていくための費用を負担しなければならないのです。

養育費の金額はどうやって決める?

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養育費の金額に特に決まりはなく、基本的には父親と母親とが話し合って決めます。子どもの年齢、親権者の年収、親権者でない親の年収などを見て総合的に判断します。

一つの指針として、東京家庭裁判所が過去の判例などを基に「養育費算定表」を作成しています。これには、養育費を支払うべき人(義務者)の年収と養育費を受け取る人(権利者)の年収別に、養育費の金額(月額)が示されています。

金額のほかにも、支払い方法(振り込みなど)、支払い回数(月払い、半年払いなど)、支払期間(子どもがいくつになるまで支払うか)を決める必要があります。

上記の事柄が決まったら、書面に残すことになります。このとき、できれば公証役場を利用して「公正証書」にしておくことをおすすめします。これは、支払者の滞納を防止するためです。

通常の書面であれば、滞納しても、すぐに給料差し押さえの手続きはできませんが、「公正証書」にしておけば、それが可能となります。自分で「公正証書」作成の手続きをするのは大変、という方は行政書士などの専門家に相談しましょう。

養育費請求の時効はいつか?

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それでは、冒頭で紹介したAさんは離婚後、養育費の請求ができるのでしょうか。

離婚時に決めておいた方が良い金銭問題として、慰謝料、財産分与、養育費があります。ですが、それぞれに「時効」が違うことは、意外と知られていません。

慰謝料は離婚後3年、財産分与は2年が時効ですが、養育費に時効はありません。なぜ慰謝料や財産分与に時効があって、養育費に時効がないのか。これは、請求する内容が違うからです。

慰謝料と財産分与は、婚姻関係に関する債権(相手方に請求できる権利)であり、一方の養育費は、離婚後に子どもを養育するための債権だからです。つまり前者は今までの清算、後者は今後発生する費用の請求権と考えたらわかりやすいでしょう。