夫婦共働きが当たり前の昨今、夫より年収が高いという女性も珍しくはないでしょう。
江戸時代にも同じような夫婦がいました。
今回は、夫より稼ぐキャリアウーマンが登場する落語、「厩火事(うまやかじ)」をご紹介します。
キャリア妻とヒモ亭主「厩火事(うまやかじ)」
高給取りの髪結い・お崎の亭主は、俗に言う「髪結いの亭主」。お崎より年下で、女房に稼がせて自分は趣味の骨董集めに昼酒と良い身分だ。
そんな亭主に今日も今日とて愛想が尽きたと、お崎は町内に住む仲人の家へ飛び込んだ。
話を聞いた仲人は「もう別れてしまえ」と言うが、お崎は「そんなことを言ったって、あの人にも良いところがあるんです」と話が違う。働けなくなっても、年を取っても、自分のことを好いてくれるかどうか心配なのだという。
ヒモ亭主が大切にしている骨董茶碗を割ってみろ
それならばと、仲人は孔子の逸話を持ち出す。
弟子の不手際で馬小屋が火事になり、孔子が大切にしている名馬が死んでしまった。しかし孔子はそれを咎めずに、弟子が火事で怪我を負わなかったかと心配したという。
「あいつの骨董茶碗をお前さんが割って、それでもお前さんの怪我を心配したのなら本物だ」
「大丈夫か?怪我はないか?」
お崎は家に帰り、夕げの支度をして待っていた旦那の前で骨董の茶碗を割ってみた。
大いに驚いた亭主だったが、お崎に優しく「大丈夫か?怪我はないか?」。
感激したお崎が「やっぱりあたしの方が大事かい?」と聞くと、亭主は次のように言った。
「当たり前だ。お前に怪我なんかされてみろ、明日から遊んで酒が飲めない」
夫を変えようとするエネルギーは不安な胸を焦がすだけ
お崎の職業「女髪結い」は、江戸時代の花形キャリアでした。当時、大工の棟梁でも年収400万円程度という中、女髪結いは年収800万から1000万ほどを腕一つで稼ぎ出したといわれています。
当然そんじょそこらの男たちよりも稼ぎが多いのは自明の理。落語で語られるほどに、稼ぐ女房にヒモ亭主は鉄板だったようです。
高キャリア女性の「わたしばっかり頑張ってる?」は、200年も前から変わらない夫婦の悩み。どうやら、稼げていない夫を変えようと燃えさかることは、体力・気力を消耗させ、不安な胸を焦がすだけなようです。
ならばいっそ、自分が快適に、かつ自由に仕事ができるように夫を教育してしまいましょう。怠け者で遊び人というお崎の亭主だって、夕げの支度をしてお崎の帰りを待っていました。すっかり立派な「主夫」なのです。
ある種の諦めと割り切りで、夫婦は丸く収まります。男は裏切るけれどもキャリアは女を裏切らないくらいに思っておけば、いらない言葉を聴くこともなく夫婦円満でいられるのです。
文・櫻庭由紀子(落語・時代考証ライター)/DAILY ANDS
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