日本は先進国の中でも管理職に占める女性の比率が低いと言われています。今回は、国際比較データや内閣府のデータを元に日本の女性管理職の現状を解説します。また、女性管理職が少ない理由や企業側の取り組み、日本での女性のキャリアアップについても考察します。

2018年の女性管理職の比率 日本はG7で最下位

国際労働機関(ILO)が2018年に発表した報告書によると、世界の管理職に占める女性の割合は27.1%。1991年の時点では24.8%なので、過去と比較するとゆるやかに上昇しているものの、いまだ男女格差の解消には程遠いことがわかります。

さらに、日本の管理職に占める女性の割合は12%で、国際平均を大きく下回る結果に。また、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・カナダ・日本の主要7ヵ国(G7)内でも最下位であり、先進国の中でも女性の社会進出が遅れています。

女性管理職の比率を世界の地域別に比較すると、米州が39%と最も高く、アジア太平洋は22.5%、アラブ諸国は11.1%。つまり、日本の女性管理職比率はアジア太平洋地域の平均と比較しても極端に低く、アラブ諸国に近い数値だということがわかります。

女性管理職が少ない理由は?内閣府のデータを元に徹底分析

(写真=PIXTA)

管理職に占める女性比率の国際比較ランキング

2016年に内閣府が発表した「管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)」の結果をランキングにしました。

1位フィリピン47.3%
2位アメリカ43.4%
3位スウェーデン39.5%
4位オーストラリア36.2%
5位ノルウェー36.0%
6位イギリス35.4%
7位シンガポール33.9%
8位フランス31.7%
9位ドイツ29.0%
10位マレーシア22.2%
11位日本12.5%
12位韓国11.2%

日本は12ヵ国の中で下から2番目であり、女性管理職の比率は低く、上位を占めるのはアメリカ、そしてスウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国です。また、東南アジアの中でもフィリピンやシンガポールは女性の管理職比率が高くなっています。

女性の社会進出を阻む理由

12ヵ国の平均31.5%と比べ、日本と韓国の女性管理職比率が極端に低い理由はどこにあるのでしょうか。まず日本と韓国の共通点として、儒教文化の浸透、家父長制度が根強く残っている可能性が挙げられます。こういった文化的背景が、女性の社会進出が進みにくい要因となっているのかもしれません。

また、日本では「母親は自分が産んだ子どもの面倒を見るべきだ」という規範意識が強く、それが女性の社会進出を阻んでいると指摘する声もあります。こういった規範意識の影響から日本ではベビーシッターが普及しにくく、必然的にM字型雇用となり復職しても家庭と両立できる働き方を選びがちだと推測されます。

また、日本も韓国も長時間労働が主流だという特徴があります。週50時間以上働く人の割合が北欧は5%未満、英米で15%未満であるのに対し、日本は30%、韓国は22%です。そのため、そもそも仕事と家庭を両立することができず、男女で役割を分けざるを得ない状況にあると考えられます。

部長・課長・係長など階級別の女性比率の推移

続いて、内閣府の調査を元に「階級別役職者に占める女性の割合」を紹介します。2015年のデータでは、階級別の女性比率は係長17%、課長9.8%、部長6.2%で、役職が上がるごとに女性比率が下がっています。一方、1989年の時点では係長4.6%、課長2.0%、部長1.3%であることから、当時と比較すると女性の社会進出が進んだとも言えます。

日本ではいまだに多くの企業で勤続年数が昇進や給与に影響を与えます。このことが、出産・育児で一度職場を離れざるを得ない女性の昇進を難しくしている可能性があります。

上場企業の役員に占める女性の比率の推移

続いて、内閣府の調査を元に「上場企業の役員に占める女性の割合」を紹介します。女性管理職比率は2006年の1.2%に対して、2015年は2.8%まで上昇しています。特に2014年、2015年の2年間で大きく上昇しました。

しかし、大和総研の調査では上場企業の6割には女性役員がいないことがわかっています。日本は女性がキャリアアップをはかるうえでまだまだ障がいの多い社会だと言えるでしょう。

また、業種によっても女性の役員比率は変わります。「有価証券報告書に基づく上場企業の女性役員の状況」によると、保険業や銀行業などは比較的女性の役員比率が高く、機械や鉄鋼などは女性の役員比率が低い傾向があります。

女性の役員比率は、そもそもの男女比率に加え、女性が強みを生かしやすい業務内容かどうかによっても変わります。今の日本社会でキャリアアップを目指すなら、職業選択や会社選択も重要な要素になるでしょう。