職場になじめず、辞めてしまったり、勤め先が倒産してしまったりなど、心細い状況の中で頼りになるのが失業給付です。就業経験がある人にだけ与えられた特別な収入といえます。雇用保険の基本手当とも呼ばれるこのお金は、求職中なら誰でも受け取れるわけではありません。どのような人が、いくらくらいもらえるのでしょうか。

再就職活動中の人はたいていもらえる

簡単に説明すると、失業給付をもらえる人は「仕事を辞めて新しい就職先を探している人」です。辞める前に正社員や派遣社員、週20時間以上のパートやアルバイトとして働いていたことで、雇用保険に入っていた期間が少なくとも1年以上なければなりません。自営業者や会社の役員は対象外です。そのため、「数年がんばった看護師の仕事を辞めて就職活動中」という人は、多くの場合、失業給付を受け取れます。

失業給付の金額はいくらくらい?

1日あたりの失業給付の金額は、働いていたころの収入によって決まります。新しい職場が見つかるまで一定の期間ごとに受け取れるのですが、日数には上限があるため注意が必要です。この所定給付日数は雇用保険に加入していた期間と退職理由によって変わります。つまり、前職における収入と働いていた年数によって最大限もらえる額が変わるわけです。

1日あたりの金額を計算するには、まず働いていたころの平均的な日給を求めます。辞める前における半年分の給料を180で割り算しボーナスは除きます。こうして計算された「賃金日額」の50~80%が、1日にもらえる「基本手当日額」です。パーセンテージに幅があるので個別に計算しなければなりません。この割合は、賃金日額が高ければ高いほど低くなります。

所定給付日数は最低でも90日間で、働いていた年数が10年以上なら120日間、20年以上なら150日間です。もし退職理由が倒産やリストラだった場合はもっと長く、年齢と勤続年数によっては最長330日間になることもあります。例えば、月給が通勤手当含めて42万円、前の職場と合わせて18年間勤めた38歳の場合、失業給付は次のようになります。

(賃金日額)
42万円×6ヵ月÷180日=1万4,000円

(基本手当)
1万4,000円×50%=7,000円

自己都合による退職の場合、1日につき7,000円が再就職するまでの最大120日間、支給されます。なお、ここで記載したことはあくまでも原則論です。社会保険の仕組みは複雑で、この例に当てはまらない場合もあるのでご注意ください。

公務員は失業給付がもらえない代わりに退職手当がある

雇用保険は民間企業で働いたり、自営業者に雇われたりする人が加入するものです。市立病院や国立病院などで公務員看護師を務めていた人の場合はどうなるのでしょうか。実は、役所や公立病院を辞めた人に失業給付はありません。なぜなら、そもそも公務員は雇用保険に加入していないからです。その代わり、「失業者の退職手当」が支給されることがあります。

条件は、雇用保険の失業給付とほぼ同じです。1日当たりの支給額の計算方法も変わりません。失業給付と大きく違うのは、所定給付日数分が一括してもらえることです。例えば、失業給付の場合、最大90日間もらえる人が70日目に再就職したら、残りの20日分はもらうことができません。しかし、退職手当の場合は一度にもらえるので、給付日数を残したまま再就職しても最大限の金額がもらえるのです。

さらに、もう1つ違いがあります。民間の失業給付を受けるためには、求職活動をしてその内容をハローワークに報告することが給付条件の一つです。公務員の退職手当を受ける際には必要ありません。実は、この報告の仕組みが、受け取る金額に影響を与えることがあります。