育児休業を取得した後、復職せずに退職するケース。育休は復職を前提とした制度ですし、心情的にも抵抗感のある人は多いと思います。一方で、仕事を続ける予定だったのに、どうしても両立できなくなる現実は確かに存在します。

もし自分が復職間近になって退職せざるを得なくなったら、どのように対処し進めていったらいいのでしょうか。働く母親の現状と、育休後の退職におけるルールと手続きを見ていきましょう。

育休後の退職の実態

(写真=Kekyalyaynen/Shutterstock.com)

育休終了後、復職する人と退職する人の割合

厚生労働省『平成27年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書』(2018年)から、末子妊娠時の女性の仕事の継続状況を見てみましょう。

正社員では80.1%、非正社員では37.9%が仕事を継続していますが、残りは妊娠・出産を機に退職。その多くは妊娠中の退職ですが、「産前・産後休業中または復帰後間もない時期に退職」が正社員で4.4%、非正社員で7.1%、「育児休業中または復帰後間もない時期に退職」が正社員で4.9%、非正社員で4.8%を占めます。

産休育休含め、休業明けに退職する割合が10%前後は存在することが分かります。

退職理由は「両立困難」

妊娠・出産を機とする退職理由を調べると、もっとも多いのは「家事・育児に専念するため自発的に辞めた」です。次に多いのが「仕事と育児の両立の難しさで辞めた」という理由。その両立困難の内容を尋ねると、次のような結果となりました。

<正社員>
第1位:勤務時間が合いそうもなかった(合わなかった) 56.6%
第2位:自分の体力が持たなそうだった(持たなかった) 39.6%
第3位:職場に両立を支援する雰囲気がなかった 34.0%

<非正社員>
第1位:勤務時間が合いそうもなかった(合わなかった) 37.9%
第2位:妊娠・出産に伴う体調不良のため  34.8%
第3位:保育園などに子供を預けられそうもなかった(預けられなかった) 27.3%

必ずしも積極的な理由ではなく、やむを得ず辞めざるを得ない状況が見えます。

育休後に退職するのはルール違反?

(写真=Helen Sushitskaya/Shutterstock.com)

法律の規定は?

育児休業について定めている「育児・介護休業法」は、基本的に雇用者の義務と働く人の権利を定めた法律です。よって、育休中や復職直後の退職を禁止する規定はありません。

しかし、この法律の目的は働く人が仕事と家庭を両立し、継続して働けるようにする、というところにあります。育休を明けた後も同じ会社で働くことが前提となった法律なのです。

最初から退職予定で取得するのはあり?

育休は正社員だけでなく、非正規の職員など期限付きで雇われている人でも取得可能です。取得要件は次の通りです。

① 同じ雇用者に継続して1年以上雇われていること
② 子供が1歳6カ月になる日までに、契約が終了すると決まっていないこと

やはり「雇用の継続」がポイントとなるのです。ですから正社員でも、退職を前提に育休を取得するのは、禁止規定がなくてもルールに反すること、と理解しておいて差し支えないでしょう。