転職が評価の妨げになった時代も変わり、キャリアアップのためのポジティブな選択として前向きに捉える人が増えてきたと感じます。しかし、「望まない転職」もまだ、女性の生涯には立ちはだかります。

女性が家庭を持つと直面せざるを得ないのが、家庭と仕事の間にいまだ存在する壁、両立を求められるのにできる環境にない矛盾。その問題点を確認し、将来を展望したいと思います。

女性の転機①:妊娠・出産

(写真=Antonio Guillem/Shutterstock.com)

M字カーブと産休・育休の現状

女性の労働力率をグラフにすると、出産育児期の20代後半から30代にかけての層が落ち込みます。結婚や妊娠・出産で離職する女性が多いためで、この現象はグラフの形から「M字カーブ」と呼ばれ、女性のキャリアや所得獲得のうえで大きな問題となってきました。

国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」(2015年)によると、結婚を機とした退職は、1985~1989年では結婚した女性の37.3%。2010~2014年には16.8%と大きく減少しています。

しかし、第1子出産時の退職で見ると、結婚年1985~1989年では37.3%、2010~2014年は33.9%と、3割から4割の女性が退職する状況が今も続きます。

産休・育休の女性間格差

第1子の出産に伴う女性の働き方の変化を、雇用形態別に見てみましょう。2010~2014年に第1子を出産した女性で、妊娠時に正規雇用だった女性と非正規雇用(パート・派遣)だった女性では、子供が1歳になったときの雇用形態がどのように変わっているのでしょうか。

正規雇用だった女性では62.2%が正規雇用を継続、パート・派遣に働き方を変えた人は6.3%です。しかし、妊娠時にパート・派遣だった女性では74.8%が無職、22.5%がパート・派遣労働となっています。

この背後には、育児休業制度の利用格差があります。正規雇用の女性の54.7%は育休を利用しているのですが、パート・派遣の女性では10.6%しか利用していません。

育児休業制度では、1日ごとの契約である日々雇用の労働者や、有期雇用で雇用期間が1年以内の人、子供が1歳6カ月になるまでに契約が満了する人などは育休を取ることができません。非正規雇用は正規雇用に比べて育休取得が進まない現状があるのです。

男性の育休はなぜ増えないか

『夫の家事・育児参加と妻の就業決定-夫の働き方と役割分担意識を考慮した実証分析』(鶴光太郎・久米功一、独立行政法人経済産業研究所、2016年)では、夫の家事・育児負担が妻の就業を促進し、さらにその負担割合が高ければ正社員として働ける可能性が高いことを明らかにしています。

夫の育休取得は出産後の妻の仕事継続を助けるはずなのですが、男性の育休取得率は2016年で民間企業が3.16%、国家公務員8.2%、地方公務員が3.6%と、依然低いままです(内閣府『平成30年度版男女共同参画白書』2018年)。

育休を取得する男性への嫌がらせ「パタハラ」などの実態も明らかになりつつあり、背後には家庭事情への配慮を嫌う企業文化が見え隠れします。仕事と育児が対立するとき、女性のほうが働き方を調整せざるを得ない状況が続いているのです。