普段使いにぴったりな居酒屋チェーン。しかし、昨年後半から直近まで厳しいビジネス環境が続いています。というのも2019年10月から10%に引き上げられた消費税に続いて、足元ではコロナショックが居酒屋業界の経営を直撃しているのです。しかし、売上減少を軽微にとどめて、健闘する居酒屋チェーンもあります。さて、どんな居酒屋が健闘しているのでしょうか。月次の売上高データを元に、各社の動向をさっそく見てみましょう!

大手チェーンは営業自粛の体力あり

日本文化のひとつでもある居酒屋業界が新たな試練を迎えています。2019年10月に消費税が8%から10%に引き上げられて会社員の財布の紐が堅くなるなか、居酒屋を含む外食産業は、厳しい業界内の競争にさらされています。

そうしたなか、新型コロナウイルスの感染拡大から緊急事態宣言が発出されて、東京都で居酒屋の営業時間は午後8時、アルコールメニューの提供は午後7時までという指針が示されました。

東京都の小規模店舗の居酒屋では、開店時間を早めて「昼飲み」を推進するほか、ランチや持ち帰り需要の掘り起こしに努力しています。出前やテイクアウトでの受託も目立っています。

しかし、感染拡大防止のため、「鳥貴族」などは4月4日から4月 12日まで直営店全店での臨時休業、直営店以外での臨時休業や深夜営業の自粛を5月6日まで延長するなどの措置を打ち出しました(4月9日プレスリリース)。串カツ田中なども店舗臨時休業期間の延長を発表しています。

短期的な収益機会のロスは大きいですが、新型コロナウイルスの感染が収束すれば、資本力と企業体力に勝る上場企業の居酒屋チェーンに活躍の場が広がってくる可能性があります。

健闘企業の特徴は単一ブランド

近年、健闘している居酒屋チェーンの特徴は単にメニュー単価が安いだけでなく、焼鳥、串カツ、餃子と特定の食材に特化していることを強みとして、単一の店舗ブランドを展開している企業が多いことが特徴です。ある一定のコアなファン層をつかんでいることが予想されます。

また、純粋な居酒屋カテゴリーではないものの、焼肉、ラーメンなどでチョイ飲み需要を取り込んでいる企業の健闘も目立っています。

最近、アルコールも提供する店舗併設型のイートイン店舗の出店が目立つたこ焼チェーン「築地銀だこ」を運営するホットランドや、「吉呑み」としてディナーの需要を開拓している牛丼の吉野家ホールディングスのようなケースも話題となっています。

これに対して、複数の店舗ブランドを抱える居酒屋チェーンは3月の落ち込みが厳しくなっている傾向があります。こうしたなか、直近の売上高動向からみて健闘している上場5社のポイントをそれぞれ挙げてみます。

【物語コーポレーション】東証1部

メディアで取り上げられることが多い「焼肉きんぐ」を中心に焼肉業態が中心ながら、ラーメン、お好み焼きなども展開。既存店売上高は2019年11月から2月まで前年同月の実績を上回っています。特に2月既存店売上高は前年同月比124.2%、同3月は97.1%と健闘しています(4月末店舗数は515店舗)。

【鳥貴族】東証1部

税別298円均一メニューを看板に、大阪、東京、名古屋を中心に店舗を拡大する焼鳥屋です。2017年10月に均一価格を280円から298円に引き上げた後、売上が低迷していましたが、2019年11月から2020年2月まで4ヵ月間は既存店売上高が前年同月を上回るなど復調していました。

直近3月の既存店売上高は前年同月比83.9%とコロナの影響を受けていますが、比較的健闘しているといえるでしょう(4月末の総店舗数は639店舗)。

【ハイデイ日高】東証1部

「熱烈中華食堂 日高屋」を展開し、ラーメンチェーンのカテゴリーですが、居酒屋的なチョイ飲み需要を取り込んでいます。3月末の総店舗数は443店舗です。

既存店売上高は2020年1月、2月と前年実績を上回っていました。直近3月の既存店売上高は前年同月比82.0%とコロナの影響を受けていますが、同じく健闘している部類に入るでしょう(3月末の総店舗数は443店舗)。

【串カツ田中ホールディングス】東証1部

「串カツ田中」の単一ブランド展開で、2020年1月の既存店売上高は前年同月比117.4%増、2月は同102.9%増と前年実績を上回っていました。直営店舗の全面禁煙をいち早く打ち出すなど、素早い経営方針に定評があります。

直近3月の既存店売上高は前年同月比77.4%とコロナの影響が目立ち始めてきました。直営とフランチャイズ合計の店舗数は3月末現在で276店舗となっています。

【NATTY SWANKY】マザーズ

「肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場」を運営する企業で、2019年3月に上場したばかりです。既存店売上高は2020年2月まで4ヵ月連続で前年同月実績を上回っていました。

直近3月の既存店売上高は前年同月比74.7%とコロナの影響が目立ち始めてきています。直営とフランチャイズ合計の店舗数は3月末現在で89店舗と拡大余地があります。