経済産業省は、「2020年までにハウスメーカーなどの注文一戸建ての過半数でZEHを実現すること」を目標に、積極的な普及に向けた取組みを行っている。その象徴が、「ゼロエネルギーハウス支援事業」だ。最大では1戸当たり115万円の補助金が出る制度だから、注文住宅の建設や建売住宅などの取得を考えている人は、見逃さないようにしたい。

ゼロエネルギーハウス(ZEH)とはどんな住宅なのか

ゼロエネルギーハウス。英語の頭文字から、ZEH(ゼッチ)と呼ばれている。どんな住宅なのか――。

まず、住宅の壁、床、屋根、窓などの断熱性能を高め、冷暖房や給湯などの省エネ性能の高い設備を導入、住まいのなかのエネルギー消費量を抑える。その上で太陽光発電設備を設置して、住宅で使う消費エネルギー以上のエネルギーを創り出し、年間に消費する住宅でのエネルギー量が正味でゼロ以下になる住宅のことを指す。地球への負荷が小さく、環境にやさしい住まいだ。

その結果、年間の光熱費負担は大幅に減少し、太陽光発電で余った電気を電力会社に売電して得られる収入のほうが多くなるケースもある。実質的なエネルギー消費量がゼロ以下になって地球にやさしいだけではなく、光熱費負担は支出どころか実質的にプラスになって家計にもやさしい――それがZEHということになる。

ZEHビルダーは全国で6000社を突破

このZEHの普及策を推進しているのは経済産業省資源エネルギー庁。ZEH支援事業においては、自社が受注する住宅のうちZEHが占める割合を2020年までに50%とする目標を宣言、公表する住宅メーカーなどを「ZEHビルダー」として登録する制度を実施している。その社名や目標値などをインターネットなどで確認できる。以下のサイトから都道府県別などで検索できるようになっている。

ZEHビルダー検索

2017年10月現在、このZEHビルダーに登録している会社数は6179社に達し、全都道府県に存在するので、どのエリアでもZEHを建設、取得することが可能になっている。

このZEHビルダーを通してZEHを建設、取得する場合には、ZEH支援事業から補助金を受けることができる。2017年度の制度では、下にあるように、地域や規模、構造などを問わず1戸当たり70万円の定額制で、合わせて家庭用蓄電池を設置する場合には、上限40万円が上乗せされる。合計すると最大115万円の補助金だから、メリットは大きい。

ZEHにすることによって建築費や取得費は高くなるものの、それによって住み心地が向上すると同時に、高くなった建築費、取得費を補助金によってかなりの部分までカバーできるわけだ。

補助金額および上限額

①補助対象住宅/1戸当たり75万円の定額制
②蓄電システム

  • 蓄電システムの補助額 1㌗当たり4万円
  • 蓄電システムの補助額上限 補助対象経費の1/3または40万円のいずれか低い金額

原則は一戸建ての専用住宅だが例外も

補助金の対象になるのは、先に触れたような高断熱、高性能の住宅で、太陽光発電設備を設置した住宅。原則的に一戸建ての専用住宅ということになるが、例外もある。

最近は、賃料収入を得るために賃貸住宅や店舗などを併設する賃貸併用住宅が増えているが、それも自己の居住用部分がZEHの条件を満たしていれば、自己居住用部分のみZEHの補助金を申請できる。賃貸住宅もZEHの条件を満たしているとしても、補助金の対象になるのはあくまでも自己居住用の専用住宅のみになる。

また、集合住宅に関しては原則的に対象にならないが、その住宅の所有者が申請住宅に住み、かつZEHの条件を満たす場合には、その自宅部分についてZEH補助金を申請できることになっている。

補助対象となる事業者と住宅

(1)申請者が常時居住する住宅
(2)専用住宅であること(ただし、住宅の一部に店舗等の非住居部分がある場合は、住居部分が「設備等の要件及び補助対象設備等一覧」の条件を満たしている場合には申請できる
(3)既存戸建住宅の場合は、申請時に申請者自身が所有していること
(4)新築建売住宅の場合は、申請者は建売住宅の購入予定者であること
(5)賃貸住宅・集合住宅は対象外(ただし、申請者が所有する賃貸住宅・集合住宅の一部に、申請者自身が居住し、かつその住戸が本事業の公募要件を満たす場合は、その自宅部分について申請することができる)

早いほどおトク!補助金額は年々縮小する傾向に

このZEH補助金、年々金額が少なくなっている点に注意しておきたい。上に触れたように、2017年度の蓄電池システムを除いた1戸当たりの補助金は70万円だが、2016年度は125万円だった。それ以前の2013年度には何と1戸当たり350万円という時期もあった。普及が進むに連れて価格も低下していくため、補助金も削減されるわけだ。

2018年度の制度に関しては2018年の春には明確になるが、いずれにしても、長い目でみれば、補助金額は年々少なくなっていくのは間違いない。かつては太陽光発電設備の設置に関しても国の補助金制度が実施されていたが、価格の低下が進むにつれて補助金額が縮小され、現在では国の補助金制度は廃止されている。都道府県や市区町村などでは継続されているところもあるが、国の補助金制度はもはや存在しなくなっている。

その意味では、ZEH補助金に関しても補助金額の多いうちに、早めに申請するのが得策ということになる。

都道府県や市区町村の補助金制度もチェック

このZEHに関連にして、環境性能の高い住宅については都道府県、市区町村レベルでの補助金制度もあるのも、それも見逃さないようにしたい。

たとえば、太陽光発電システムについては、上に触れたように国の補助金制度は終了しているが、都道府県では継続しているところもある。埼玉県ではスマートハウスの重点実施街区(所沢市、草加市の一部など)で、太陽光発電設備(上限20万円)、高効率給湯器(上限10万円)などの補助金制度を実施している。合わせて、埼玉県の補助金の対象になっている所沢市では、太陽光発電について上限8万円などの補助金制度がある。

生垣や屋上緑化などへの補助金制度もある

自治体内に緑を増やして美化を促進、地球環境に貢献しようとさまざまな補助金制度を行っている市区町村も多い。生垣緑化、屋上緑化、壁面緑化などがそうだ。

なかでもそうした制度が充実しているのが東京都の世田谷区。生垣緑化に関しては、高さ1.0m以上の中木なら幅1m当たり1万2000円、花壇助成が1㎡当たり6000円、シンボルツリー助成が1万2000円~2万4000円で、以上を合わせて合計25万円が上限だ。また、屋上緑化は1㎡当たり1万5000円~2万円、壁面緑化は1㎡当たり1万円で、屋上緑化と壁面緑化を合わせて上限額が50万円となっている。

そのほか、雨水タンク、雨水浸透施設などに関する補助金制度もある。

自分で調べて必ず事前に申請する

こうした補助金制度は、自分たちの住む都道府県、市区町村の制度を調べて、必ず事前に申請するようにしたい。

自治体の補助金制度は、原則的に事前に申請し、審査を経て承認されてから着工するのが原則。着工してから気づいて申請しても受け付けてもらえないので注意が必要だ。

良心的な業者なら、事前にこうした補助金制度の有無を教えてくれるものだが、そんな業者ばかりとは限らない。勉強熱心でない営業担当者だと、地元の情報をキチンと調べていない可能性があるし、なかには知っていても教えてくれないケースもあるので注意しておきたい。

というのも、各種補助金制度は事前の申込みが原則で、承認までに一定の期間が必要になる。業者からすれば、手続きが面倒だし、承認が下りるまでの間にお客に心変わりされては困ったもの。できるだけ早く契約に持ち込み、着工したいのが本音だから、知っていても素知らぬふりをする業者がいてもおかしくはないわけだ。だからそ、自分で調べて、自分で手続きする積極的な姿勢が欠かせない。それが、少しでもトクすることもつながるのだから、手間ヒマを惜しんではならないだろう。

文・山下和之/ZUU online

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