育児休業の取得を決めても、期間中の収入が気になる人も多いはず。そんなときこそ、出産育児をサポートする国の制度を活用するときです。多くの企業では育休中を無給としていますが、給与が出ない期間は社会保険から手当が給付され、税制上の措置もあります。育休中のお金にかかわる制度をおさらいし、収入をどの程度確保できるのか、把握しておきましょう。

育休中は「無給」ってホント?

会社によって規定が異なる

多くの企業は、育児休業期間中の社員の給与を無給としています。しかし、育休を取得しやすい環境整備の一環として、育休を有給とする企業も出始めています。

例えば、旭化成株式会社では2006年に育休の最初の5日間を有給化。日本マイクロソフト株式会社では、2017年に6週間という長期の有給育休制度を導入しました。また、育休以外に男性が利用できる配偶者出産休暇制度などは、有給としている企業がほとんどです。

自分の勤めている会社でも、育休の一部を有給としているかもしれません。まずは規定を確認してみましょう。

雇用保険から手当が出る

育休が無給の場合、育児休業給付金を受給することができます。育児休業給付金は、失業給付などと同様、働いて給与を得ることができない期間に雇用保険から支給される手当です。

受給期間は、育児休業を取得している期間。原則として、子どもが1歳になるまでの間です。受給額は、次の算出式を使って計算します。支給額の基本となる休業開始時賃金日額は、育児休業開始前6カ月間の賃金を180で割って算出した額です。

支給単位期間(育児休業を開始した日から1カ月ごと)当たり
育児休業給付額=(休業開始時賃金日額)×(支給日数)×67%(6カ月経過後は50%)

出産手当金と育休給付金の違い

同様の手当に、出産手当金というものもあります。出産した女性は育休とは別に、産前6週間、産後8週間の休暇を取ることができます。出産手当金は、産前産後の休暇中に受けられる手当です。

出産手当金と育児休業給付金の違いは、支給元です。育児休業給付金は雇用保険から支給されますが、出産手当金は健康保険から支給されます。

出産手当金の受給期間は、出産の日以前42日から出産の翌日以後56日まで。出産予定日より出産が遅れた場合は出産予定日から、双子など多胎児の場合は出産日以前98日から受給できます。受給額は次のように計算します。標準報酬月額とは、健康保険料の額を決める際の基準とする、月収の見なし額です。

1日当たりの支給額=(支給開始日以前の継続した12カ月間の標準報酬月額)÷30日×2/3

育休中の税金はどうなる?

(写真=PIXTA)

社会保険料は免除される

育児休業中は、健康保険や厚生年金などの社会保険料が免除されます。雇用保険料もかかりません。また育児休業給付金は非課税扱いとなるため、給付金への所得税もかかりません。これら差し引かれていた保険料なども考慮すると、育児休業給付金の支給額は、手取り額の約8割に相当する額になります。

育児休業が有給だった場合は、手取り額としては100%の額がもらえます。ただし、社会保険料や雇用保険料、所得税は免除されませんので、給与から控除されています。そのことは頭に置いておきましょう。

住民税は払わなければならない

育休中でも住民税は納めなければなりません。住民税は、前年度の所得に課税される所得割額と所得に関係なく課税される均等割額の合計なので、育休中で所得がなかったとしても発生します。ただし、育休中に受給した育児休業給付金は所得ではないと見なされるので、翌年の住民税の算定には反映されず、税額が下がることになります。