日本における富裕層とはいったいどれくらいの資産を所有している場合を指すのかは、非常に難しいところであるが、一般的には「富裕層」と呼ばれる人たちは次のように定義されることが多い。世帯年収が3000万円以上・保有する金融資産(不動産を除く)が1億円以上だ。

富裕層が一般人以上に気にしているのが「税金」の存在だ。彼らはいかにして節税するかを知りたがっている。投資商品の中でも節税効果が高いのが不動産である。大きく分けて「減価償却」と「相続における固定資産の評価減」の2つを利用して節税している。

継続した節税「減価償却」、相続見据えて「路線価安い物件」

減価償却とは建物にかかった費用を残存耐用年数で経費化するもので、不動産を購入した年ではなく、定額法を用いて一定の期間継続して経費と計算する。この経費と給与所得など他の所得と損益通算すると、節税効果が生まれる。

中古不動産を購入した場合は、減価償却耐用年数を短縮することができ、1年当たりの経費は大きくなる。22年を経過した木造アパートの場合は、償却期間は4年となる。8000万円の不動産であれば、年間2000万円を経費とすることができる。

相続税対策の観点だと、売買価格と路線価が乖離している不動産が投資先として適している。不動産には購入した金額だけではなく、不動産の所在地の路線価から算出する路線価格というものがあり、相続税の計算には路線価が用いられる。通常、不動産の売買取引価格よりも路線価格は20~30%程度低くなるケースが多い。それ以外にも、

1.人に貸すことで評価が下がる「貸家建付地による評価減」⇒(相続税評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合))
2.一定の条件を満たした場合に、ある面積まで評価が大きく減額できる「小規模宅地による評価減」などが利用できる。

不動産の波は、すでに売りトレンド? 富裕層は大局的な目

積極的に資産を運用したい富裕層は、キャピタルゲインの狙える不動産であるかを見ている。著者は、現在日本で地価の上昇によるキャピタルゲインを期待できるのは東京の港区・中央区・渋谷区・品川区だけではないかと考えている。不動産の売買が本業ではないので、富裕層の不動産売買は、時間の流れを大きくとらえている。地価の上昇トレンド、下降トレンドの流れに乗りたいと考えているからだ。

ここ数年、築年数の浅い物件を中心に売買価格が年に数%ずつ上昇してきたので、富裕層は売りを模索するトレンドへと移行している。オリンピック効果は既に価格に織り込まれており、もうそろそろピークと言えるが、不動産マーケットは今後の動きを描き切れずにいるのが現状だ。そのため、富裕層の間での期待売値と期待買値のギャップが大きく、思ったほど売買が伸びていない。