延期を繰り返した消費増税の時期ですが、いよいよ2019年10月に8%から10%へと引き上げられる見込みです。2%の増税は、高額となる住宅購入に「大きく影響するのでは?」と考えている人も多いでしょう。

じつは、一定の要件に該当すると、旧税率を適用して住宅が購入できる方法があります。今回は、旧税率で住宅購入ができる方法や、実際に消費増税になったらどのくらいの差額が生まれるかについて紹介します。

消費増税の駆け込み需要は前回の半分?

(写真=nednapa/Shutterstock.com)

消費増税があると、住宅業界の駆け込み需要が増えると予想されています。とはいえ、今回は、第一生命経済研究所によると、前回2014年の増税時の駆け込み需要の半分程度の見込みと推測されています。

消費増税を控えていることで、旧税率が適用されるうちに必要な買い物を済ませておきたいと考えるのは、ごく自然な流れでしょう。前回よりも駆け込み需要が減ると予測されてはいるものの、一定数は駆け込みの住宅購入者がいるのではないでしょうか。

一定要件を見たせば消費増税しても旧税率が適用できる

(写真=Billion Photos/Shutterstock.com)

2019年10月に消費増税となっても、住宅購入の際に一定の要件に該当すれば、旧税率を適用することができます。ポイントは、引き渡しや契約のタイミングです。分譲マンションや戸建て、中古住宅・マンションとそれぞれ確認してみましょう。

分譲マンションの場合

物件の引き渡しが2019年9月30日までに完了していれば、旧税率が適用されます。「消費増税は2019年10月1日から適用なのだから当然のことでは?」と感じるかもしれませんが、「引き渡しが完了していること」がポイントとなります。

つまり、売買契約を2019年9月30日までに済ませておくだけではなく、最終決済が完了し、引き渡しを受けている必要があります。売買契約の適用税率は、引き渡し時で判断されることに注意しましょう。

ただし、物件によっては、内装やドアなどを別注できるケースがあります。この場合、工事請負契約にかかわる契約となり、「経過措置」の対象となります。

「経過措置」については、次の戸建て注文住宅の場合で詳しく解説します。

戸建て注文住宅の場合

住宅の引き渡しが2019年9月30日までに完了していれば、旧税率が適用されます。これは、分譲マンションと同じですね。

しかし、注文住宅の場合は、工事請負契約を2019年3月31日までに締結していれば、仮に引き渡しが2019年10月1日を過ぎても旧税率を適用することができる「経過措置」があります。

注文住宅の場合、工事請負契約の締結後、住宅の完成までには数ヵ月の工事期間が必要になります。そのため、分譲マンションや分譲建売住宅とは違って、経過措置が設けられています。

ただし、分譲マンションでも、内装替えが可能な契約で工事請負契約に該当する場合は、注文住宅と同じように「経過措置」が適用されますので、内装を替えることができる物件は旧税率が適用されるかどうか確認しておきたいところです。

注文住宅の「経過措置」は、工事請負契約の時期が大きなポイントとなります。旧税率を適用したいと考える人の多くが2019年3月31日までの駆け込み契約に動くかもしれません。また、住宅会社側も期日に焦点を合わせて獲得に力を入れてくることが考えられます。

中古住宅・マンションの場合

誰が売買するかによって消費税の取り扱い方が変わることがポイントです。また、中古住宅やマンションをリフォームする場合は、経過措置が適用されることがあります。

【売買が個人間である場合】
中古物件は個人が所有しているケースが多く、個人から個人への売買が行われるのが一般的です。個人間売買の場合、そもそも消費税はかかりません。そのため、消費税率が増税されても売買価格に影響がありません。

ただし、次に解説する「仲介」では消費税が関係します。

【売買が不動産業者の仲介である場合】
個人間の売買が一般的であるとしても、売買を不動産業者が仲介しているケースは多いですよね。仲介している場合、取引が成立すれば「仲介手数料」がかかります。

仲介手数料には消費税がかかりますので、2019年9月30日まで引き渡しが完了なら旧税率が適用され、2019年10月1日以降であれば10%の税率が適用されることになります。

中古物件の売買価格に消費税は関係しませんが、仲介手数料には消費税が関係するため、増税の影響を受けることに注意しておきましょう

【売主が法人の場合】
中古物件の売主が不動産業者などの法人である場合、売買価格に消費税がかかります。税率の取り扱いは、2019年9月30日までに引き渡しが完了していれば旧税率ですが、2019年10月1日以降の引き渡しである場合は、10%の税率が適用されます。

分譲マンション、注文住宅、中古住宅とそれぞれ引き渡しや契約時期などで旧税率が適用される要件が異なります。また、分譲マンションや中古物件であっても、内装などのリフォームを行う場合、工事請負契約での「経過措置」が適用されることがありますので、購入の際にはしっかり確認しておきましょう。

10%税率と8%税率ではどのくらいの差額が出るか

(写真=Tanoy1412/Shutterstock.com)

税率が上がることで、いったいどのくらいの差額があるのでしょうか。ここからは、実際に10%の新税率と8%の旧税率ではどのくらい違いがあるかシミュレーションしてみましょう。

シミュレーションの条件は次の通り。

  • 売買価格(注文住宅の場合では請負契約額)は4000万円
  • 売買の場合は仲介ありで個人間契約

分譲マンション・戸建ての場合

売買価格(請負契約額)に消費税がかかります。

  • 消費税8%の税込み額は、4000万円+消費税8%=4320万円
  • 消費税10%の税込み額は、4000万円+消費税10%=4400万円 税込みの金額の差額は、80万円となります。計算の元となる金額が大きいために、分譲マンション、注文住宅の場合は増税による一定のまとまった差額が出そうです。

    中古住宅・マンションの場合

    個人間契約なら売買価格に消費税はかかりません。仲介手数料に消費税がかかります。

    仲介手数料は①200万円以下が5%、②200万円超400万円以下が4%、③400万円超が3%で計算します。

    ①200万円×5%=10万円
    ②200万円×4%=8万円
    ③3600万円×3%=108万円

    仲介手数料=①+②+③で126万円

  • 消費税8%の仲介手数料は、126万円+消費税8%=136万800円
  • 消費税10%の仲介手数料は、126万円+消費税10%=138万6000円 税込み仲介手数料の差額は、2万5200円となります。仲介手数料だけの差額のため、意外と差が抑えられている印象ですね。もちろん、売買価格が高くなれば仲介手数料が増えますので、差額は広がるでしょう。

    仲介手数料だけなら、旧税率との差額は思ったほど大きな金額ではなさそうですが、分譲マンションや注文住宅の場合は、10万円単位での差額になりそうです。

    分譲マンションであっても「経過措置」に該当するケースであれば、旧税率での売買契約が可能であるため、購入方法を検討してみてもよいかもしれません。

    また、住宅を取得することで、家具や新生活の雑貨など、ほかにも購入するものが出てきます。注文住宅の場合、建物本体のみではなく、外構工事や植栽などにも消費税がかかるため、売買価格以外の負担も考慮しておく必要があるでしょう。

    旧税率が適用されなくても一定額の給付制度がある

(写真=taa22/Shutterstock.com)

消費増税後に住宅を取得することになった場合、増税分の負担を軽減する目的の制度として「すまい給付金制度」があります。

すまい給付金は、一定の住宅要件や収入要件などに該当すれば、最大50万円の給付金を受け取ることができるもので、対象期間は2021年12月31日までとなっています。消費増税後でも、一定額は負担を減らすことができるため、該当するならぜひ利用しておきたい制度です。申告方法はそれほど難しいものではありませんので、覚えておきましょう。

旧税率が得なのか購入判断はあくまでも冷静に

(写真=Szekeres Szabolcs/Shutterstock.com)

消費税が増税になると聞けば、自然と「今のうちに・・・・・・」という心理が働くものですよね。差額の大小はありますが、支払う金額が多くなることは間違いないでしょう。

とはいえ、消費増税だからと大きな金額の取引となる住宅購入を、安易に駆け込みで決めてしまうことも避けたいところです。

過去の例では、消費増税が行われると、駆け込み需要が増える反動で、その後の需要が著しく落ち込み、不動産業界では問題視されていました。ある程度の駆け込みは容認するものの、その後の需要を回復させるために、すまい給付金のような負担軽減の対策をいくつか準備する可能性も否定できません。

増税の時期を把握しておきつつ、減税制度が出ていないかなど、情報を収集しながら冷静に判断することをおすすめします。

将来を見据えた最適な選択を

(写真=Alexander Raths/Shutterstock.com)

今回は、消費増税と住宅購入の税率について、差額のシミュレーションを含めてお伝えしました。分譲マンション、注文住宅、中古物件とそれぞれに違いがありますので、事前にしっかりと把握しておくとよいでしょう。

消費増税が近づくと、どうしても需要が高まる傾向があるため、売り手側も「今ならお得」と早期購入を促すような表現が多くなるかもしれません。住宅を取得することは、財産を持つことです。将来的なこともしっかりと考え、最適な選択ができるよう購入の際には十分に検討しましょう。

文・岩野 愛弓(住宅・不動産ライター、宅地建物取引士)/DAILY ANDS

【こちらの記事もおすすめ】
ふるさと納税の失敗を防ぐ3つのステップ
金運アップが期待できる都内の神社5選
注目の最新シェアリングサービス5選
年収300万円の会社員にできる3つの節税対策
マイルを貯める3つのポイント