給与明細をみて所得税が引かれていることは知っていても、どのような計算方法となっているのかわからない人は意外に多いようです。企業に勤めていると年末調整で税金の計算がなされるので、毎年そのままにしているという方もいるかもしれません。

しかし、所得税や所得控除の仕組みを知って上手に活用できれば、節税につながることもあります。ここでは、20~30代女性の平均年収を例に、所得税や所得控除の計算方法を紹介していきます。

所得税の計算方法

(写真=siam.pukkato/Shutterstock.com)

所得税はおおまかに以下の計算式で求めることができます。

所得税=課税所得金額(収入-①所得控除)×税率-②税額控除

所得税は、収入から所得控除を差し引いた金額(課税所得)に対し、決められた税率を掛けることで求めることができます。

①収入から差し引くことができる所得控除には、主として以下のようなものがあります。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除
  • 扶養控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 医療費控除 会社員の場合、所得控除は年末調整で手続きできます。

    ②税額控除は、課税所得から一定金額を控除できるものです。
    税額控除できるのは、株式等の配当金を受け取った場合の配当控除、住宅ローンを組んだ場合に一定の割合で控除できる住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)などがあります。所得税額から直接差し引くことができるので、節税効果があります。

    ただし、税額控除を受けるには確定申告が必要となるケースがあります。たとえば、配当控除を受けるには、配当金収入を確定申告する必要があります。住宅ローン控除の場合は、控除を受ける初年度に確定申告をします。会社員の場合、2年目以降は年末調整の際に手続きすることができます。

    女性の平均年収で所得税を計算してみると?

(写真=puhhha/Shutterstock.com)

国税庁が行った調査によれば、25~29歳までの平均年収は311万円、30歳から34歳までの平均年収は307万円でした。ここでは、25~34歳の女性の平均年収を309万円として、所得税を計算してみます。

ステップ1:課税所得を求める

まずは所得税の計算をする際の基本となる、課税所得の金額を計算します。

今回の計算では、所得控除として誰もが一律に享受することのできる基礎控除と、会社員であれば加入が義務付けられている社会保険の保険料控除のみ該当するケースを想定し計算していきます。

①給与所得を算出
収入がそのまま課税対象になるわけではありません。給与所得は、以下の計算で算出します。

給与収入-給与所得控除額=給与所得

給与所得控除額は所得税法で決められています。
年収が180万円超~360万円以下の場合

収入金額×30%+18万円

年収が309万円の場合の給与所得(給与所得控除後)=198万3000円

上記の金額が給与所得となります。
    
②基礎控除は誰でも一律38万円

③社会保険料控除
健康保険料:年収×健康保険料率9.9%(※)
厚生年金保険料:年収×18.3%(※)
※平成30年保険料率より。健康保険料率は全国健康保険協会管掌健康保険料・東京都の場合。

年収309万円×(9.9%+18.3%)=871,380円

社会保険料は会社員の場合、会社との折半となるため上記金額の1/2の負担額となり、
871,380円÷2 ≒ 約44万円が控除額となります。

課税所得の計算
198万3000円-(38万円+44万円)=116万3000円(課税所得)※千円未満端数切捨て

ステップ2:課税所得から税率を求め所得税を計算

課税所得が116万3000円の場合、税率は5%です。

所得税の計算
116万3000円×5%=58,150円

このように、年収が309万円の場合の所得税は58,150円となることが分かりました。

※今回は平均所得とした309万円がすべて給与所得であると仮定して計算をしています。平均所得の中に賞与が含まれる場合、賞与部分の計算式は異なりますのでご注意ください。