「年金」は現役時代に積み立てたお金を老後に受け取る制度だ。残念ながら、現代は年金だけを当てにしていてはとても安心して老後を迎えることができない。そこで、個人型確定拠出年金を利用すれば将来に備えられるだけでなく、さまざまな税制面でのメリットも受けられるのだ。

個人型確定拠出年金とは

毎月確定した金額を納め、その資金を運用して老後に受け取ることができる「iDeCo(イデコ)」。国民年金や厚生年金といった公的年金とは別に用意されている私的年金であり、加入するかどうかは個人の自由だ。

しかし、公的年金と異なるのは、確定拠出年金は支払い時、受け取り時と両方で税制優遇を受けることができる点だろう。老後だけでなく今からでも始めるメリットがある制度だ。

個人型確定拠出年金の対象者

もともとは将来の年金額が少なくなりがちな自営業者、勤務先に企業年金がない会社員のための制度だったが、2017年1月の法改正によって新たに対象者が拡大された。

従来の第1号被保険者、第2号被保険者に加え、勤務先に厚生年金や企業年金がある会社員、公務員、専業主婦(主夫)といった第3号被保険者も対象となったのである。これによって現役世代のほぼ全員が個人型確定拠出年金を利用できるようになったと言える。

対象にならない人

以下の人は確定拠出年金に加入することができない。

  • すでに60歳以上の人
  • 国民年金の滞納または免除を受けている人

日本の年金制度

ここで、日本の年金制度についておさらいしておこう。日本の年金制度は国民年金、厚生年金、確定給付企業年金の「三階建て」と呼ばれている。

国民年金は20歳以上の国民が必ず加入する義務があるもので、一階に相当する部分となる。国民年金は加入期間の長さによって受給できる金額が決まるようになっており、2018年2月時点での国民年金保険料は一律1万6,260円となっている。

続いて、二階に相当するのは、会社員や公務員が加入する厚生年金と、自営業、フリーランスが加入する国民年金基金がある。厚生年金は強制加入となっているが、国民年金基金の加入は個人の自由なのが特徴だ。

最後に、三階に相当する企業が従業員のために独自に運営する企業年金だ。こちらは企業によって用意されている内容も将来受け取れる金額も異なる。

確定拠出年金の登場

近年、日本人の働き方が流動的になってきた。個人が定年まで同じ会社で勤め上げることは珍しくなり、従来の終身雇用制度と企業年金制度が機能しなくなってきたである。そのため、個人は自助努力によって老後に備える必要が出てきたため、従来の三階建てに上乗せする形で「確定拠出年金」が登場したのである。

確定拠出年金には企業型と個人型があり、両者の大きな違いは資金を拠出するのが企業か個人かの違いにある。

個人型確定拠出年金の3つのメリット

個人型確定拠出年金のメリットは3つある。どれも税金面でメリットがあるのが特徴だ。

  • 積立は全額所得控除対象
  • 運用益非課税
  • 受け取り時は「公的年金控除」「退職所得控除」対象

積立は全額所得控除対象

個人型確定拠出年金で積み立てたお金は上限額までであれば全額所得控除を受けることができる。

確定拠出年金の上限額

公務員……月1万2,000円、年14万4,000円
会社員(企業年金あり)……月1万2,000円または2万円、年14万4,000円または24万円(※企業年金の種類による)
会社員(企業年金なし)……月2万3,000円、年27万6,000円
専業主婦(夫)……月2万3,000円、年27万6,000円
自営業者……月6万8,000円、年81万6,000円

自分がどれだけの控除を受けられるかはシミュレーターを利用すると分かりやすい。毎月支払う金額は大きくなくとも、60歳まで続けるとかなり大きな金額の所得控除を受けることができるのが分かるはずだ。

運用益非課税

通常、株式や為替などの金融商品で出た利益(運用益)は約20%の課税対象となるが、確定拠出年金は運用益が非課税となる。つまり、儲けた分はすべて自分の元に入ってきて、そのまま運用資金として再投資することができるのだ。

20%を非課税で運用し続けることができれば、その効果は非常に大きなものとなる。以下の例で見てみよう。

毎月1万2,000円を20年間拠出して、年率2%の運用益で回した場合

20年目の元本……288万0,000円(1.2万×12ヵ月×20年)
課税された場合の20年目残高……338万9,646円
非課税の場合の20年目残高……353万6,644円
差額……14万6,998円

毎月1万2,000円を30年間拠出して、年率3%の運用益で回した場合

30年目の元本……432万円(1.2×12×30)
課税された場合の30年目残高……629万3,240円
非課税の場合の30年目残高……696万2,145円
差額……66万8,905円

このように運用期間が長いほど、運用利回りが高いほど非課税の恩恵は大きいことが分かるはずだ。

受け取り時は「公的年金控除」「退職所得控除」対象

確定拠出年金は給付開始年齢になったときに「一時金」として一括で受け取るか、「年金」として分割で受け取るかを選択することができる。いずれの場合も「一時金」の場合は「退職所得控除」として、「年金」の場合は「公的年金控除」の対象となる。

一時金は勤続年数が長い場合におすすめだ。なぜなら、勤続年数が長いほど退職所得控除がたくさん受けられるためだ。勤続年数が長くない場合は年金として受け取った方が税制面でのメリットは大きい。

退職所得控除の計算方法

勤続年数20年以下の場合……40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円)
勤続年数20年超の場合……800万円+70万円×(勤続年数−20年)

公的年金控除の計算方法

65歳未満の場合……年間70万円(70万円超130万円未満の場合)
65歳以上の場合……年間120万円(130万円超330万円未満の場合)

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