前回に引き続き、精神科医・藤野智哉さんが現代社会を生きる働く女性が身に付けておきたい「心の防衛術」について解説。

今回は、「職場の人間関係疲れ」に悩む読者からの相談に、答えてくれました。

職場の人間関係でギスギス。ストレスに押しつぶされそうになった時の頭の切り替え方【精神科医・藤野智哉】

藤野智哉さん
精神科医。産業医。秋田大学医学部卒業。幼少期に川崎病に罹患。心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続けている。障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見を発信している。精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、医療刑務所の医師や看護学校の非常勤講師なども務める
Twitter:@tomoyafujino

職場の人間関係でギスギス。ストレスに押しつぶされそうになった時の頭の切り替え方【精神科医・藤野智哉】

29歳/企画職/Cさん

職場のチームに全く考え方の合わない人がいて、いつも意見がぶつかってしまい、仕事がうまく進まないことにイライラします。

どちらかの考え方が間違っているというのではなく、とにかく考え方が合わないので折り合いがつかないのです。

職場でもギスギスしてしまうし、仕事の進捗には支障が出るし、家に帰ってからもその相手のことを思い出してはイライラして苦しくなってしまいます、どうすればいいでしょうか。

回答:「これってもったいなくない?」自分に問い掛けて

職場の人間関係って、すごく難しいですよね。これが趣味のサークルなどであれば、「距離を取るのが一番です」とアドバイスするんですが、職場となると、そう簡単に「その人と距離を置いて」とはいかないものです。

しかも最近ではテレワークが普及し、自宅=オフィスというケースも増えています。すると、物理的にも、心理的にも仕事のことばかり考えやすくなり、ストレスを溜め込んでしまいがちです。

その上でアドバイスするとしたら、「この人のことを考えてイライラしている時間、もったいなくない?」と考え方を切り替えてみること。

人間、事故にあえば明日にでも死ぬかもしれません。なのに、「あぁ、嫌いな奴のことばっかり考えてたな」って思いながら最後の時を迎えるなんて誰でも嫌じゃないですか。

「あの人の顔を思い浮かべながら死ぬなんてごめんだ!」と思ったら、もっと楽しいことを考えようと頭を切り替えられるかもしれません。

職場の人間関係でギスギス。ストレスに押しつぶされそうになった時の頭の切り替え方【精神科医・藤野智哉】
(画像=『Woman type』より引用)

そして、前提なのですが、職場の人と仲良くすることって、決してマストじゃないですよね。「仲良くしなければいけないのに……」と思っているんだとしたら、その考え方を見直してみるという手もあります。

協調性を大事にする日本人は、「仲良きことは良きこと」というのが前提になってしまいがちなのですが、仕事仲間はあくまで仕事仲間。「目的が達成できれば、それでいいじゃん」と割り切ることもできますよね。

そして、仕事には得たい利益や達成したい目標が必ずありますから、いくら意見が合わない人がチームにいても、目的達成のための合理的な方法を双方で考えてみて、どちらがより合理的かを比べてみて、どちらの方法論を採用するか上司に判断をくだしてもらえれば、答えが明確に出ることも多いはず。

一見すると意見はぶつかっているけれど、目指している目的は一緒だった、なんてことはよくあると思いますよ。

「いつもぶつかる」それってホント? 事実と感情を区別して考えて

ただ、Cさんには耳の痛い話かもしれませんが、一度冷静に確認した方がいいのは、自分が苦手だと思っている相手が、Cさん以外の人ともうまくやれていないのかどうかです。

他の人とは人間関係もよく、職場でも評価されており、なおかつ特に誰ともぶつかっている様子がない。なのに、なぜか自分とだけは意見が合わない。

そういう状況なのであれば、Cさん自身にも問題があるのではないでしょうか。

相談文を見ると、「全く意見が合わない」「いつも意見がぶつかる」とあります。「全く」「いつも」などの極端な言葉が使われていますが、事実は本当にそうなのでしょうか?

人間は成長するにつれ、物事にはいろいろな面があり、必ずしも0か100かではないことを学びます。

職場の人間関係でギスギス。ストレスに押しつぶされそうになった時の頭の切り替え方【精神科医・藤野智哉】
(画像=『Woman type』より引用)

例えば、『ドラえもん』のジャイアンは、乱暴者だしのび太のことをいじめるし、ちょっと困った子です。でも、人情にあついところがあり、頼れる場面もある。「悪いところもあるけど、彼にはいいところもあるよね」って大体の大人は思うわけです。

ところが、ストレスで思考が硬直化すると、相手のことを0か100かでしか捉えられなくなってしまう。ジャイアンは完全に悪人だ! と思い込むわけです。

すると、「何て嫌な奴なんだ」「何をしても腹が立つ」というように、さらにストレスがたまる悪循環に陥ってしまうのです。
Cさんも実は、同じ状況にいませんか? 感情的になってしまう部分を一度落ち着けて、「事実」をありのまま受け止めてみれば、10回に1回くらいは意見が合うこともあるのでは? だって、同じ目的に向かう組織の中で働いているわけですから。

100%相性が良くない! と決めつけるのではなく、「まぁ、相性の良さは20%くらいかな」くらいに受け止められるようになった方が、自分自身の力みがとれます。

そして、「嫌いだ」「苦手だ」と思い込んでいる人に対してのCさんの態度は、きっとそのお相手にも伝わっていると思います。すると、相手はもっと心を閉ざすし、緊張してしまうし、あなたへの態度も余計に悪くなる。イライラして相手に接しても、結局自分にとってもいい結果は生まれません。