人とは違う、自分もいい。
My Life「私たちの選択」

結婚する? 子どもを持つ? 仕事はどうする? 現代女性の人生は、選択の連続。そこで本特集では、自分らしく生きる女性たちの「選択ヒストリー」と「ワークライフ」を紹介します

世の中には「結婚して、子どもを産み、育てる」女性の話がたくさんある。一方、「結婚して、子どもを持たない」ことを自ら選んだ女性の体験談は少ない。

「私は子どもを持たない選択をしたことを、全く後悔していません」

そう話すのは、「心の解放」をテーマに創作活動をする造形作家の澤奈緒さん。

「うちらに子どもはいらないね」ずっと二人で生きていくと決めた夫婦の“足るを知る”生き方【澤奈緒】
(画像=造形作家 澤 奈緒さん 1977年東京生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。ブラジルで思春期を過ごす。「心の解放」をテーマに、立体やアート仮装、VRなどを制作し、国内外で作品を発表。2014年、IMA展外務大臣賞受賞、『Woman type』より引用)

「プレゼンの神様」と呼ばれる澤円さんと30歳で結婚した時から「子どもは持たない」と決めていたという。その決断から現在に至るまでの過程には、どのような思いがあったのだろうか。

結婚した時から「子どもは持たない」と決めていた

結婚をした30歳の時から、「子どもは持たない」と決めていました。というのも、私には母性本能と言われるものがないみたいなんです。

小さい頃からお母さんごっこに興味がなくて、「女の子らしさ」を求められることもしっくりこなかった。

子どものころは男の子と木登りをしてやんちゃに遊ぶような子だったし、大人になってからも自分の中には女性性と男性性が同じぐらいあるような感覚です。

友達からは「いつか母性が出てくるよ」と言われていたし、30代は「子どもはつくらないの?」と聞かれることも多かった。

それで私も、「いつか自然と子どもが欲しいと思う日がくるのかな」くらいに思っていた時期もありました。

「うちらに子どもはいらないね」ずっと二人で生きていくと決めた夫婦の“足るを知る”生き方【澤奈緒】
(画像=『Woman type』より引用)

でも、結局いつまでたっても「子どもが欲しい」と思う日はこなかった。

年齢を重ねるうちに気持ちが変わることもあるのかな……なんて考えていたけれど、今も母性は全くないし、自分のおなかが膨らんで、子どもが出てくるイメージも湧かない。むしろものすごい違和感があります。

また、私も夫もアダルトチルドレン(子どものころの家族関係が原因で、精神的に不安定な状況のまま大人になった人のこと)なこともあって、二人ともハッピーな生活を子どもに提供できる自信がなかった。

だから、結婚をした時に「子どもは欲しくないけど大丈夫?」と聞いた私に対して、「自分も子どもは欲しくないから大丈夫だよ」と彼が言ってくれて、ほっとしたのを覚えています。

結婚後も折に触れて子どもについて話すことはあったけれど、「うちらは子どもがいなくてよかったよね」という文脈がほとんど。

私たちは二人とも感情のコントロールが難しいところがあって、私も彼もキレちゃう時があるんです。子どもがいると、日々何が起こるか分からないじゃないですか。「その環境はうちらには絶対無理だったね」と話しています。

「うちらに子どもはいらないね」ずっと二人で生きていくと決めた夫婦の“足るを知る”生き方【澤奈緒】
(画像=ベルギーのラグジュアリーブランド『Dries Van Noten』のジャケットと『BARNEYS NEW YORK』のシャツに、高円寺の『むげん堂』で買ったパンツを合わせる夫の澤円さん(写真左)。「最近は『むげん堂』がユニホームです」(円さん)、『Woman type』より引用)

私は家のことをほったらかしてやりたいことに没頭しちゃうし、彼も仕事が忙しい時は余裕がなくなる。もし子どもがいたら、子どもがけんかの原因になってしまっていただろうなと思います。

だから子どものためにも、「子どもを持たない」という選択をして本当によかった。

また、私たち二人が金銭的な余裕を持って、気ままな生活ができているのも、子どもがいないことが大きい。

今は東京と千葉で二拠点生活をして、それぞれが好きな時に行き来していますが、夫婦二人きりだからこそ、こういう気ままな生き方も実現しやすいのだろうと思います。

血のつながりがあればいいわけじゃない

「子どもがいないと老後が寂しい」という声も耳にしますし、そうなのかなと思ったこともあります。ただ、最近考え方が大きく変わりました。

昨年末に父が亡くなったのですが、その過程で家族といろいろあって。私のメンタルが崩壊してしまい……実家と距離を置くことにしたんです。

「うちらに子どもはいらないね」ずっと二人で生きていくと決めた夫婦の“足るを知る”生き方【澤奈緒】
(画像=『Woman type』より引用)

でも「本当にこれで良かったのかな」としばらく引っかかってました。いろいろあっても血のつながった家族だし……と。

しかも、全部が全部つらい思い出ばかりではないので、ふと家族と過ごした楽しい瞬間が頭に浮かんで「私の我慢が足りないだけなんじゃないか」と自責の念に駆られたりもする。でも、関わったら自分がまたひどく傷つくのは目に見える。

そうやってぐるぐると苦しんでいたら、彼が「自分を一番大事にした方がいいんじゃない?」と言ってくれて気持ちがすっと楽になった。だから自分を守るためにも、実家と離れた方がいいと決断できました。

あとは、彼の家族の存在もとても大きかったんです。彼の家族とは以前からとても関係が良く、それも実家とは離れてもいいと思えた大きな要因でした。実家より彼の家族の方が心の距離は近くて、今もいろいろな面で助けてもらっています。

だから、血のつながりがあればいいわけではないんだなと。

同時に、もし私に子どもがいたら、同じことになっていたかもしれないとも思いました。血のつながりがある親子でも、許し合えないことはありますから。

そして、いさぎよく自分の実家から離れられたのも、私に子どもがいなかったことが影響しているような気もします。