連載:「私の未来」の見つけ方
生き方も、働き方も、多様な選択肢が広がる時代。何でも自由に選べるって素敵だけど、自分らしい選択はどうすればできるもの? 働く女性たちが「私らしい未来」を見つけるまでのストーリーをお届けします

自分らしさってなんだろう。

パーティードレスのレンタルサービス『ANDYOU DRESSING ROOM』を立ち上げた松田愛里さんは、かつてそんなモヤモヤを抱える一人だった。

彼女の転機は、勤務先の新事業提案制度に応募し、大賞を取ったこと。そこから起業して3年が経ち、胸を張って「今の自分が好き」と言えるようになった。

起業と聞くと遠い世界のように感じてしまうけれど、松田さんが自分らしく、ハッピーな日々を生きられるようになった過程には、「会社員だからできる」ヒントがあった。

ご祝儀貧乏を失くすために起業して分かったこと「会社にいるからこそ知れる自分は絶対ある」/アンドユー代表・松田愛里
(画像=株式会社アンドユー 代表取締役社長
松田愛里さん
1991年生まれ。上智大学総合人間科学部を卒業後、ノバレーゼに入社。社長室・広報室でIRやPRを担当する。2018年10月、新事業提案制度『ノバレボ』に応募し、大賞を受賞。19年1月、アンドユーを設立し、代表取締役社長に就任。4月より『ANDYOU DRESSING ROOM』を開始、『Woman type』より引用)

「ご祝儀貧乏」という言葉がある現状を、容認したくなかった

私はノバレーゼというブライダル事業を行う会社に新卒で入って、約5年間広報を担当していました。

営業経験もなければ、ドレスを扱っていたわけでもない。そんな私がアンドユーを起業したきっかけは、ノバレーゼの新事業提案制度です。

毎年1回、誰でも自由に事業提案ができる制度で、私も毎年2〜3案を応募していて。毎年200案くらい応募があって、割とカジュアルに参加できる制度だったので、お祭り感覚で参加していました。

パーティードレスのレンタルサービス『ANDYOU DRESSING ROOM』の元となる提案をしたのは、入社4年目。自分が結婚式に参列する機会が増えたことで、女性特有の悩みに直面するようになったんです。

それが「着るもの」と「お金」の問題です。

ご祝儀貧乏を失くすために起業して分かったこと「会社にいるからこそ知れる自分は絶対ある」/アンドユー代表・松田愛里
(画像=『Woman type』より引用)

SNSに写真を上げることも多いから、毎回同じものは着られないじゃないですか。

私自身、兄の結婚式で着たワンピースを同期の結婚式にも着て行ったら、「そのワンピース、お兄さんの結婚式の時も着てたよね」と言われたことがあって。相手は何気なく言ったことでしたけど、「やっぱりみんな見てるんだな」と痛感しました。

同時に、なんだか新郎新婦に申し訳ないような気もしてしまったんですよね。そんなつもりは一切ないのに、同じものを着たことで手を抜いたような感覚になってしまって。

ご祝儀もあるのでドレスにお金はかけられないけれど、あまりチープなものも着ていけない。100%の気持ちで祝福したいのに、心配事が先に立ってしまう。

同じような思いを同世代の女性たちも絶対にしているだろうなと思いました。

そもそも、「ご祝儀貧乏」という言葉がある現状を私は容認したくなかったんです。新郎新婦が「結婚式に友達を呼ぶのは申し訳ない」と思うような状態では、結婚式市場は盛り上がりません。

パーティードレスのレンタルサービスのニーズは絶対あるし、会社としてやった方がいい。そう思い、新規事業として提案したんです。

結局、その年は最終審査で落選してしまいましたが、諦められずに翌年再応募。資料1枚で提出できるところ、熱意を詰め込んだパワーポイント約40枚の資料を提出しました。

その結果、大賞を受賞してしまって。

「今回こそ大賞を取るぞ!」と思ってはいたんですけど、とはいえこの制度で大賞が出たのは私が初めて。正直、私も周りも、大賞が出たことには驚きました。

だから「優勝しちゃった、どうしよう」と、戸惑いも大きかったですね。

コロナ禍で予約はほぼキャンセルに。それでも「最高に楽しかった」

およそ半年の準備期間を経て、2019年4月に『ANDYOU DRESSING ROOM』をローンチ。何かしら自分好みのドレスが見つかるサービスにしたかったので、最初に600着のドレスを用意し、黒字化は2年目以降を想定していました。

ご祝儀貧乏を失くすために起業して分かったこと「会社にいるからこそ知れる自分は絶対ある」/アンドユー代表・松田愛里
(画像=『Woman type』より引用)

ところが、ブライダル業界の繁忙期である春シーズン目前の2020年3月、新型コロナウイルス感染症の影響で結婚式は軒並み延期に。ドレスの予約もほぼ全てキャンセルになりました。

「なんて運がないんだろう」と落ち込みましたが、「また結婚式ができる日に向けて、今できることを考えよう」と切り替えてからは、サイト管理のためにプログラミングを勉強したり、コラムを書いたりと、できることを粛々とやりました。

サービスの立ち上げが決まってから休む間もなく走り続けていたので、「先のことをゆっくり考える良いタイミングだった」と思うようにしています。

結局、その後1年半ほど苦しい時期が続きましたが、2021年秋の挙式数はほぼ回復。当社も11月には過去最高売上となりました。

また、SDGsへの関心の高まりも追い風になっています。結婚式用のドレスは数回しか着ないので、普段着のレンタルサービスよりも利用しやすいようですね。