好きを仕事に。
最近よく目にするフレーズだけど、ただ「好き」な気持ちだけでは足りなくて、好きなことで生きていくには、それを仕事にするだけの個の力がいる。
「北欧好きをこじらせてしまった会社員」を自称するChikaさんは、かつて「フィンランドが好き」という気持ちだけで北欧系の音楽会社に就職し、大きな挫折を味わった。
一度は北欧とは全く関係のない仕事に転職したものの、今は再び寿司職人として、憧れのフィンランドに渡ろうとしている。
紆余曲折を経て、Chikaさんはどうやって「好きを仕事に」できたのだろう。
「ここに住みたい」と思ったのはフィンランドだけだった

私とフィンランドの最初の出会いは、8歳のクリスマスシーズンでした。
英会話スクールでフィンランドのサンタクロース村に手紙を書くイベントがあって、「いつもプレゼントをありがとうございます。いつか会いに行きます」と書いたんです。
私の誕生日がクリスマスということもあり、その時のことは今でもずっと心に残っています。
実際に初めてフィンランドを訪れたのは、大学3回生のクリスマスシーズン。

当時は今ほど北欧はメジャーな場所ではなく、かろうじてムーミンを知っているくらいの知識しかありませんでした。
でも、フィンランドに降り立って、フィンランド人と出会った時、不思議と空気感がぴったりと肌に合った感じがあって。
学生時代はバックパックを背負っていろいろな国を旅しましたが、初めて「ここに住みたい」と思ったんです。それは自分にとって、とても大きな衝撃でした。
なんだか、自然との距離感と、人との距離感がとても心地良かったんですよね。
ヘルシンキは首都でありながら、森や湖がシームレスに存在していて。便利さと自然が共存している街は、田舎育ちの私にとって理想的な環境でした。

また、人々の距離感は尊重と無関心の間にあるというか。「私はこれが好き。あなたはそれが好き。それでいいよね」と、みんなが自分らしさを大事にして、自立している。そこから生まれる距離感が、なんだかうれしかったんです。
例えば、ある男子大学生と出会って「一緒に遊びに行こうよ」という話になった時。彼から最初に提案されたのが「森にピクニックに行こう」だったんです。その人が好きなことに普通に誘えるんだって、めちゃくちゃびっくりしました。
私だったら相手の好みに合わせたり、流行りを考えたりしただろうなと思ったし、同時に「これまで周りを優先して、本当に自分が好きなものを大事にしてこなかったかも」とも思って。その男子大学生の提案が、なんだか響いたんですよね。
こうして一人旅で1カ月間滞在したフィンランドに、気付けばすっかり惚れ込んでしまいました。



