一流の仕事人には、譲れないこだわりがある!
プロフェッショナルのTheory
この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。 多くの人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります
彼女はよく笑う。大きく口をあけて、豪快に。心から楽しんで笑っているのが分かるから、彼女の笑顔を見ていると周りもつられて明るい気持ちになってしまう。

広瀬さん
この5年くらい、ずっと言われてるんですよ、その笑い方どうにかならないですかって。
その度に「ちゃんとします」「ちゃんとします」って言ってるんですけど。結局そのまま5年経ちました(笑)
そう言ってまた笑う。俳優・広瀬アリス。今やドラマや映画のみならず、バラエティー番組にも引っ張りだこ。
きっとなかなか休む時間もとれないはず。だけど、当の本人はまるで疲れた様子も見せず、さっぱりとこう言い切る。


広瀬さん
今は仕事を頑張る時期。もう働きたくないっていうぐらい働いたら、10年後にはそれも笑い話になっているかなと思って。
今はとにかく自分をフル回転させるつもりで、がむしゃらに働いています。
そんな売れっ子俳優の仕事論。それは、彼女の人柄同様どこまでも素直で、そして意外なほどに泥臭いものだった。
大九監督のおかげで「よろい」を外して演じられた
広瀬さんが主演を務めるドラマ『失恋めし』が、現在Amazonプライム・ビデオで独占配信中だ。演じるのは、イラストレーターのキミマルミキ。連載中のエッセー漫画『失恋めし』のネタを求めて、彼女は今日も街を歩く。
見ているだけでよだれが出るような「失恋めし」と、そのゆるい世界観に心が満たされるほっこりドラマだ。

広瀬さん
あの世界観は、大九(明子)監督あってのものです。監督は、演じる人のクセやミスをそのままお芝居に生かしてくださるんです。
例えば焼き鳥を食べるシーンで、串から焼き鳥が抜けなくて困っているのも、風でボサボサになった髪の毛を直しながらせりふを言ってるところもそのまま使われていました。

広瀬さん
おかげで私も変なよろいみたいなものがとれたというか。うまくやろう、きれいにやろうとするのではなく、つくりこまずにあの世界観に入っていくことができました。
大九監督といえば、『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』など女性映画の名手。広瀬さんも大九監督とタッグを組むことで、新しい扉を開くことができたという。


広瀬さん
監督からは台詞のリズムについてアドバイスをいただきました。
本当に微々たる差なんですけど、監督の言われた通りに少し間をあけてみるだけで、台詞を言っている私まですごく心地よくなるんです。

広瀬さん
きっと最初に私が演じていたキミマルミキは、ちょっと硬かったんだと思います。でも台詞のリズムを崩すことで、がらっと印象が変わったんです。
演じれば演じるほど、私もミキのことがいとおしくなりました。
大九監督が手掛ける作品に登場するのは、少しこじらせている女の子ばかり。だけど、見ているうちに自然と彼女たちのことを応援したくなる。

広瀬さん
それは、大九監督が女性のかわいらしいところを引き出してくださるからです。今回ご一緒してみて、そう実感しました。
俳優の仕事は泥臭い。そこが、私に合っていた
近年、目覚ましい活躍を遂げている広瀬さん。だけど、「自分がプロフェッショナルだと思ったことはほとんどない」と自己評価は控えめだ。

広瀬さん
ただ、目の前にあるものを全力でやるということしかできないんです。そんな器用なタイプじゃないので(笑)

今、広瀬さんが全力を傾けているものこそ、仕事だ。

広瀬さん
今は常に仕事が頭の中にあります。お休みをいただいている間でも、仕事を忘れたことは1日もないです。それくらい、この仕事が好きで楽しいです。
人それぞれいろんな幸せのかたちがありますけど、人生で1回ぐらいがむしゃらに仕事を頑張る時期があってもいいのかなって。
ワークライフバランスが重要と言われて久しいけれど、それはなにも「仕事とプライベートを常に50:50で振り分けること」ではない。
時には仕事を100にして全力で働き、時にはプライベートを100にして思い切り遊び休む。自分のライフステージや気分に合わせて、自在に割り振りを変えることが、その人らしいワークライフバランスだ。

広瀬さん
おかげさまで今はあまり余裕がないですが、それもまた自分を知るいい経験かなって。私、追い込み型なので(笑)
これくらいの方が、私にはちょうどいいのかなという気がしています。
そんなハードな毎日を、広瀬さんはどうやって乗り越えているのだろう。尋ねると、あのおなじみの笑顔でこう答えてくれた。


広瀬さん
バスケをやってたからだと思うんですけど、根性だけはあるんです。たぶん根が体育会系なんだと思います。
うちは家族みんなそうです。家族全員で本気のバトミントン大会をするような一家に育ったので。事務所の社長からも、「根性だけでやってきた」とよく言われています(笑)
その均整のとれた顔立ちにはまるで似合わない「根性」という言葉。だけど、そんな性格がこの仕事には合っていると本人は分析する。

広瀬さん
俳優の仕事って華やかに見えますけど、とても泥臭いと思います。ドラマや映画の撮影に入ったらとにかく忙しいし、どんどんむくんだりしますが、体形は維持しなきゃいけない。

広瀬さん
台詞も覚えなきゃいけないし、お芝居に集中しなきゃいけないし、やることがいっぱいなんです。
泥臭い仕事だからこそ、根性が強みの私には合っているんだと思います。