連載:「私の未来」の見つけ方
生き方も、働き方も、多様な選択肢が広がる時代。何でも自由に選べるって素敵だけど、自分らしい選択はどうすればできるもの? 働く女性たちが「私らしい未来」を見つけるまでのストーリーをお届けします

役者業を軸に、最近では小説家としても活動している松井玲奈さん。

2021年11月26日公開の映画『幕が下りたら会いましょう』では、初の単独主演として、鳴かず飛ばずの劇団を主宰する麻奈美を演じた。

自身のキャリアについて、「明確な意思を持って自分の道を決めてきたというよりは、一つ一つの仕事の積み重ねの結果として今がある」と話す松井さん。

彼女はこれまでどんなマインドで仕事に向き合ってきたのだろうか。「私らしい未来」に続く、「日々の仕事の積み上げ方」のヒントを探ってみよう。

「できる限り」を尽くしてきた先に、単独主演映画の出演があった

私はいま役者業を中心にお仕事をしていますが、実は自分の意思でキャリアを決めてきたっていう感じではないんですよ。

基本的にはいただいたお仕事に対して、自分のできる限りを尽くすスタンスでずっとやってきていて。過去の仕事の積み重ねで今があります。

初の単独主演映画『幕が下りたら会いましょう』も、そうやって一つ一つ自分ができることを積み重ねてきた中でお話をいただけたのかなと思いますね。

【松井玲奈】もっと人に甘えていいのかも。初の映画単独主演で学んだ「一人で頑張り切らない」働き方
(画像=©avex entertainment Inc、『Woman type』より引用)

主演として物語を引っ張っていかなければいけないプレッシャーはありましたが、映画の主演は「いつかできたらいいな」と思っていたので、うれしかったです。今回も、自分が出せるものは全て出し切る気持ちで挑みました。

私が演じた麻奈美は、妹の死をきっかけに自分自身や妹と向き合うことになります。麻奈美が妹の死を追っていく過程は、彼女の成長物語でもある。

麻奈美がどうやって家族と向き合って、心を開いていくのか。ストーリー展開や設定が興味深いなと、プロットをいただいた時から、やりがいのある作品だと感じていました。

【松井玲奈】もっと人に甘えていいのかも。初の映画単独主演で学んだ「一人で頑張り切らない」働き方
(画像=©avex entertainment Inc、『Woman type』より引用)

演じ方も、これまでの作品とは違ったんです。監督からは「感情を抑えながら演じてほしい」と言われていて、役と自分を切り離して考えたというか。

影がある役や静かな役の経験はありましたけど、「感情を出さないでほしい」と言われたのは初めての経験でした。

私は親しい人に安心して気を許せるタイプなのですが、麻奈美は逆で、相手が親しければ親しいほど殻にこもってしまう。自分のニュートラルな状態とは全然違う感覚で、カメラの前に立っていたなと思います。

【松井玲奈】もっと人に甘えていいのかも。初の映画単独主演で学んだ「一人で頑張り切らない」働き方
(画像=©avex entertainment Inc、『Woman type』より引用)

例えば、うれしい気持ちをこらえる感じ。引き算をしていくイメージで、心をおさえつけて、お腹の底から上がってくる感情をぐっとおさえる。

普段はあまりしない行為なんですけど、感情を抑えるからこそ、抑えきれないものがお芝居に出てくるという体験ができました。それは初めての感覚でしたね。

もっと気楽に甘えたり、相手に委ねたりしていいのかも

私は、「一人で頑張れることを頑張ってやり切る」スタンスでお仕事をしている時間が長くて。人に委ねるとか、甘えるとか、あまり得意ではありませんでした。

でも今回、麻奈美を演じる中で感情を抑えていると、相手が投げ掛けてくれたものが、自分の中でおさえきれなくなってしまう瞬間があって。

【松井玲奈】もっと人に甘えていいのかも。初の映画単独主演で学んだ「一人で頑張り切らない」働き方
(画像=©avex entertainment Inc、『Woman type』より引用)

今まで以上に目の前にいる相手の役者さんに助けられていることを感じましたし、相乗効果というか、かけ算の影響がたくさんあったように思います。

もしかしたら、もっと気楽に甘えたり、相手に委ねたりしていいのかもしれない。麻奈美を演じたことで、「一人で頑張らなきゃって思わなくてもいいのかな」と考えるようになりました。

実は、撮影前に「私にできるだろうか」と不安だったシーンでも、それを実感することがあったんです。

それは麻奈美が食事をするシーン。監督からは「ご飯を食べた時に、これまで麻奈美が抑えてきたものが溢れ出すように」と言われていました。

それを踏まえた上で台本を読んでいましたが、監督が求めるような状態は表現できないかもしれない。そう感じて、ずっと不安だったんです。

【松井玲奈】もっと人に甘えていいのかも。初の映画単独主演で学んだ「一人で頑張り切らない」働き方
(画像=『Woman type』より引用)

実際にそのシーンを撮影するときも、私が緊張していることが監督も分かったみたいで。そっと近寄ってきてくれて、「大丈夫です!」ってガッツポーズしながら声を掛けてくださいました。

その時に、「あぁ、チームで仕事をしているんだよな」って思えて。

チームなんだから、相手が監督であれ誰であれ、何も怖がることはないんだなと分かって、肩の力を抜いて本場に臨むことができました。

すぐにOKテイクも出て、安心感と同時に、小さな一歩を踏み出せたような気持ちになりましたね。