元プロ雀士・元弁護士の小説家、新川帆立さん。

デビュー作『元彼の遺言状』で第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、今年10月には続編『倒産続きの彼女』(ともに宝島社)を刊行。デビュー1年足らずでシリーズ累計は50万部を突破した。

【小説家・新川帆立】「人生遠回り」の伏線は、いつか回収される。“リスクを避けつつ我を通す”元弁護士作家の生き方
(画像=新川帆立さん
1991年2月生まれ。アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業。元弁護士。プロ雀士としても活動経験あり。作家を志したきっかけは16歳のころ夏目漱石の『吾輩は猫である』に感銘を受けたこと。現在はアメリカ在住 Twitter:@hotate_shinkawa、『Woman type』より引用)

エンターテインメント性が高い“お仕事ミステリー小説”で人気を博す一方、新川さんはその異色の経歴でも注目を集めている。

「高校生の時から小説家になろうと決めていた」という彼女は、なぜ最短距離で目標に向かわなかったのだろう。

「目標を諦めざるを得ない状況」を回避したかった

ーー小説家になる前、新川さんはプロ雀士や弁護士だったんですね。高校生の時から小説家になりたかったそうですが、すぐに小説家を目指さなかったのはなぜですか?

プロ雀士は趣味なので仕事という感じではないですが、あえて遠回りをしたのではなく、「リスクを取らずに戦うにはどうすればいいのか」という発想で自分の人生を考えていました。

最短ルートで小説家になるには、リスクを取らなければいけないんですよ。

【小説家・新川帆立】「人生遠回り」の伏線は、いつか回収される。“リスクを避けつつ我を通す”元弁護士作家の生き方
(画像=『Woman type』より引用)

ーーリスク?

小説家の場合、大学在籍中から小説を書きまくって、投稿して、デビューできなかったらアルバイトをしながら小説を書いて……というのが、ある種の王道であり、最短ルート。

でも、それだと経済的に困窮して、小説家になる夢自体を諦めざるを得ない状況に陥りがちです。日本社会では、新卒で就職をしないと「うまくいかなかったとき」の再起も難しい。

私は「小説家になる」という目標をかなえることにコミットしたかったので、夢を諦めざるを得ない状況に陥るリスクはなるべく排除しようと思いました。粘り強く、少しずつ目標に近づいていくイメージで考えていて。

小説家は年齢制限がないから、健康と経済さえ大丈夫なら諦める理由はないはず。なので、経済的な基盤を整える意味で、弁護士になりました。

「目標に向かい続けるための環境づくり」を大事にした感じですね。

ーー 一番のリスクは「小説家になれない」ことではなく、「小説家を目指せなくなる」ことだったんですね。

実は弁護士だった時も3回転職をしているのですが、それも小説家を目指す環境づくりの一つでした。

忙しい弁護士事務所から一般企業に転職して、さらに時間にゆとりを持つためにもう一度転職して。仕事と小説を書くことを両立するために、あえてキャリアダウンをしています。

才能とかセンスとか、考えても仕方がなくない?

【小説家・新川帆立】「人生遠回り」の伏線は、いつか回収される。“リスクを避けつつ我を通す”元弁護士作家の生き方
(画像=『Woman type』より引用)

ーーあくまで小説家になる目標を優先したと。ただ、10年くらい小説を書いていなかったと聞いたのですが……?

そうなんですよね。高校生の時に小説家になろうと決めて、本当はその時点で小説を書き始めればよかったんですけど、先延ばしにしちゃって。

小説家を目指すために資格を取ろうとは思っていたので、「環境を整えてから始めればいいや」っていう。早くやれよって感じなんですけど(笑)

ーーその状況で、どうして「小説家になれる」と信じられたんですか?

自信満々だったというよりは、冷静に考えて大丈夫だと思っていました。

オリンピック選手になるのは無理だけど、小説家は何歳でもなれるし、「これをやったら目指せなくなる」という類のことも全くない。客観的に、諦める理由がないと思うんですよ。

ーー「小説家には才能が必要」みたいに考えちゃいそうな気もしますが……。

そういう世界かもしれないですけど、才能とかセンスとか、全く悩んだことがないです。

今後スランプに陥ったら悩むかもしれないですけど、「それを今から考えていても仕方なくない?」って思ってしまう自分がいますね。

ーーどういうことですか?

「才能がなくて苦しむかも」という問い自体が検証不可能じゃないですか。絶対に答えが出ないと分かっていることに悩む必要はないというか。

ーー検証不可能だけど、つい人と比べて「私はこういうふうにはできないな」と最初から諦めてしまうことってありませんか?

【小説家・新川帆立】「人生遠回り」の伏線は、いつか回収される。“リスクを避けつつ我を通す”元弁護士作家の生き方
(画像=『Woman type』より引用)

人前に出るようになって思うんですけど、他人の評価って全然正確じゃないですよ。私の場合は経歴のキャッチーさに注目されることが多いけど、私にとってそれは自分の中のごく一部でしかないですし。

同じように、自分から他人への評価も、あてにならないものだと思います。

それに私の場合は「小説家になりたい」っていう気持ちが強かったんです。弁護士として成功する自分よりも、小説家を目指してうまくいっていない自分の方に納得感があった。

もちろん「執筆スピードがもっと速ければ」とか「語彙を増やしたいな」とか、具体的な悩みはありますけど、漠然とした検証不可能ことで悩んでもあまり意味がないかなと思います。

【小説家・新川帆立】「人生遠回り」の伏線は、いつか回収される。“リスクを避けつつ我を通す”元弁護士作家の生き方
(画像=現在はアメリカに移住して暮らす新川さん、『Woman type』より引用)