一社に長く勤めれば安泰という時代は終わり、これからは主体的にキャリアを築かなければいけない時代。そう分かってはいても、一度乗ったレールを降りるのは怖いし、何となく現状維持を選択している人も多いかもしれない。

そんな悩める若手に対し、女性として、起業家として、初の経団連副会長に就任した株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)会長の南場智子さんは、「もっとわがままに、安心して寄り道をしてほしい」とエールを送る。その真意を聞いた。

DeNA南場智子「キャリアの寄り道」安心してできる社会へ。“優等生をやめる時”がきている
(画像=株式会社ディー・エヌ・エー
代表取締役会長
南場智子さん
1986年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。90年、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBAを取得し、96年、マッキンゼーでパートナー(役員)に就任。99年に株式会社ディー・エヌ・エーを設立し、現在は代表取締役会長を務める。2015年より横浜DeNAベイスターズオーナー。著書に『不格好経営』(日本経済新聞出版)、『Woman type』より引用)

レールを外れた人こそ、プレミア人材に

日本の教育は「レール上で誰が一番はやく、上手に走れるか」を競争させる教育です。勉学で評価されてきた人ほどレールに沿ってきていますから、いわゆる優等生ほどそこから外れることを恐れてしまう。

就職もそうです。多くの大企業や官庁では、新卒で入ることが幹部候補になるほぼ唯一の道。チャンスを逃さないように、新卒一括採用の仕組みに乗っかって、みんなが同じように就職活動をしてきました。

私は、新卒一括採用は最悪のシステムだと思っています。背負うものがなくて、一番ハチャメチャにやれて、好奇心も吸収力もある時期に、幅を広げさせない仕組みが日本の社会にはでき上がってしまっている。

一方で、企業が成長してイノベーションを起こすには、文字通りのトランスフォーメーションが必要です。同じ組織に何十年もいる人たちだけでそれができるとは思えません。

生物がみずみずしく生きられるのは分子が入れ替わるからであり、よどみが悪影響なのは会社も一緒。それは世界で競争力を失い続けている日本企業が、皮肉にも過去30年間で証明してきたことでもあります。

私は今年6月に経団連の副会長に就任しましたが、まず変えたいのは新卒一括採用の仕組み。同時に、若い人たちには経営メンバーの半数以上を中途入社者が占める会社を選ぶことを勧めます。

これからは寄り道をしている人を、企業がプレミアを付けてでも探すようにならなければいけません。絶対にそうしていきますから、若い皆さんはぜひ安心して寄り道していただきたいですね。

居場所ではなく「成長できる場所」を選んで

DeNA南場智子「キャリアの寄り道」安心してできる社会へ。“優等生をやめる時”がきている
(画像=『Woman type』より引用)

個人よりも組織が輝くことを目指す大企業は多いですが、今は個人が輝く時代。組織は個人が輝くためのステージの一つです。

プロジェクトをベースに志とスキルがある人が集まり、達成したら対価を分かち合って解散する。そんな働き方が主軸になるでしょう。

だからこそ、どんな船でもこげて、船が沈んでも海を泳げるように、若い時に自分へ投資をすることが重要です。

大企業は研修制度が充実していると言われますけど、それは決して“角度をつけた成長”をうながすものではないと私は思います。

むしろ自社に適した人材になるような育成をしますから、その会社でしか通用しない人材になるリスクも大きい。一度乗ったレールはずっと続いていくし、乗り続けやすい仕組みにもなっています。

そして、どの会社においても「絶対に安泰」なんてことはあり得ません。もしもその組織でしか泳げない人になってしまったなら、外の世界に放り出されたら溺れてしまう。

それに、大企業の守られた環境でヒリヒリするような成長痛を得ることは難しい。心身ともに自分の力を充実させることを主軸に考えて、自分の居場所を見つけるのではなく、自分が成長できる場所を選んでください。

これは我田引水ですけど、DeNAは本当にいいですよ。練習のノックではなく、最初から本物の打席にガンガン立たせてもらえますから。

そして、優秀な人の起業を本気で後押しするために、デライト・ベンチャーズというベンチャーキャピタルをつくりました。

数年前までは優秀な社員を囲い込みたい気持ちもありましたが、DeNAはみんな優秀だから、大黒柱がいなくなっても次の大黒柱が必ず現れる。

本物の打席に立って仕事ができる環境とセットでデライト・ベンチャーズがあることで、私は心からDeNAを推薦できます。