非課税で運用できる代表的な制度が「iDeCo(イデコ)」と「つみたてNISA(ニーサ)」です。将来のために運用しながらお金を積み立てる制度で、利益に税金がかからない魅力があります。
どちらも有利な制度ですが、併用は可能なのでしょうか。 本記事では両制度の併用と使い分けのポイントをご紹介します。記事の後半ではお得でおすすめの証券会社もご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
iDeCoとつみたてNISAは併用が可能

結論からいうと、「iDeCo」と「つみたてNISA」は併用可能です。必要に応じて両者を同時に利用することができます。
投資の税制優遇制度はほかに「一般NISA」もあります。一般NISAもiDeCoと併用可能ですが、つみたてNISAとの併用はできないため注意しましょう。
まとめると以下のようになります。
【3制度の組み合わせ別 併用の可否】
併用 | |
---|---|
iDeCoとつみたてNISA | 〇 |
iDeCoと一般NISA | 〇 |
つみたてNISAと一般NISA | × |
それぞれ単独の利用は問題ありませんが、併用する場合は上記ルールに気を付けましょう。
iDeCoとつみたてNISAの違いとは

iDeCoとつみたてNISAの大きな違い
両者の 大きな違いは「投資できる商品」と「途中解約」、「投資額の所得控除」です。
iDeCo | つみたてNISA | |
---|---|---|
利用できる人 | 20歳以上60歳未満の方 | 20歳以上の方 |
投資できる商品 | 投資信託 定期預金 保険商品 |
投資信託 |
投資タイミング | 積立投資 | 積立投資 |
投資できる金額 | 14.4~81.6万円/年 | 40万円/年 |
最低投資額 | 5,000円/月 | 100円/月 ※金融機関による |
投資できる期間 | 原則60歳まで | 2042年まで |
途中解約 | × | 〇 |
運用益の非課税期間 | 原則60歳まで | 投資した年から20年間 |
投資額の所得控除 | 〇 | × |
受け取り時の控除 | 年金形式:公的年金控除 一括受取:退職所得控除 |
非課税 |
つみたてNISAは投資信託だけに投資できますが、iDeCoはほかに安全性の高い定期預金や保険商品(いわゆる貯蓄型保険)にも積立できます。
またiDeCoは原則60歳まで解約できませんが、投資額と同額の所得控除を受けられます。積み立てと節税が同時にできる点が魅力です。一方つみたてNISAはいつでも解約できますが、iDeCoのような所得控除はありません。
iDeCoとつみたてNISAの共通点
iDeCoとつみたてNISAの共通点は次の3点です。
- 投資信託で運用できる
- 積立投資
- 運用益が非課税
どちらも投投資信託にお金を少しずつ積み立てていくものです。共通点として最大のポイントは、運用益が非課税になる点です。 本来運用益には20.315%の税金がかかりますが、両制度はどちらも非課税です。税金が取られない分、効率的に運用できるメリットがあります。
出典:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」

両制度は少しずつお金を積み立てる制度です。まとめて投資せず、時期をずらして投資する戦略を「時間の分散」といい、リスクを下げる効果が期待できます。安定的に運用したい方には向いているでしょう。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
iDeCo独自の特徴

ここから両制度それぞれの特徴を確認しましょう。まずはiDeCoについて解説します。 iDeCoの特徴は次のとおりです。これらはいずれもつみたてNISAにはない特徴です。
- 「積立時」と「受け取り時」の税制優遇
- 投資対象の商品が豊富
- 原則として60歳まで引き出せない
それぞれ簡単に解説します。
「積立時」と「受け取り時」の税制優遇
iDeCoは運用益の非課税以外に、積立時と受け取り時の両方で税制優遇を受けられます。
- 積立時:掛け金全額の所得控除(小規模企業共済等掛金控除)
- 受け取り時:公的年金控除or退職所得控除
出典:iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)のイイコト」
積立時の税制優遇は所得控除です。 iDeCoに積み立てた金額と同額の所得控除が受けられるため節税になり、給与の手取りが増えるメリットがあります。つみたてNISAにはない、iDeCoの大きな強みです。
受け取り時の税制優遇は特別な控除です。 iDeCoから引き出したお金は課税対象ですが、「公的年金控除」か「退職所得控除」が適用されるため、引かれる税金が少なくなります。
たくさんの税制優遇を受けられる点がiDeCoの魅力といえるでしょう。
投資対象の商品が豊富
つみたてNISAは投資信託だけが投資対象ですが、 iDeCoならほかに定期預金や保険商品にも投資できます。元本の安全性が高いため、より確実にお金を積み立てることができるでしょう。
iDeCoは定期預金などに投資しても、上述した積立時の所得控除は受けられます。「節税だけ行いたい」という方におすすめです。

定期預金や保険商品は安全性が高いですが利回りが低いです。iDeCo手数料を下回るケースに注意しましょう。iDeCoは加入時に2,829円、月に最低でも171円(積み立てない月は66円)かかります。なお、つみたてNISAにこれらの手数料はありません。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
原則として60歳まで引き出せない
iDeCoは老後資金を積み立てるための制度です。そのため、原則60歳まで引き出せない仕組みになっています。
これまでついお金を使ってしまい、なかなかお金を貯められなかった方はiDeCoを選んでみてはいかがでしょうか。 途中で引き出せないので確実に老後資金を貯めることができるでしょう。

iDeCoはお金を途中で引き出すことはできませんが、積み立てを止めることはできます。「運用指図者」へ変更手続きを行うことで可能です。積み立てを停止しているときも最低66円の手数料はかかるので注意しましょう。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
つみたてNISA独自の特徴

次につみたてNISA独自の特徴を確認しましょう。iDeCoにない、つみたてNISAならではの特徴は以下の通りです。
- いつでも自由に資金を引き出せる
- 低予算から始められる
- 年齢にかかわらず20年間活用できる
それぞれわかりやすく解説します。
いつでも自由に資金を引き出せる
iDeCoは原則60歳まで引き出せませんが、 つみたてNISAはいつでも解約・出金が可能です。また、積み立てだけ停止することも可能です。
教育資金やマイホーム資金など、60歳前に使う予定がある資金の運用に向いているでしょう。

つみたてNISAは年40万円まで投資できますが、解約してもこの投資の枠は復活しません。その年の投資枠を使い切っている場合、改めてつみたてNISAを利用するには翌年まで待たないといけないため注意しましょう。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
低予算から始められる
iDeCoは月5,000円が最低投資額ですが、つみたてNISAはより少ない金額から始められます。金融機関によりますが、 最低100円から利用可能です。
- SBI証券
- 楽天証券
- マネックス証券
- 松井証券
- auカブコム証券
少額から始めたい方にはうれしい特徴ですね。なお、おすすめの証券会社については後述するので、そちらも参考にしてください。
年齢にかかわらず20年間活用できる
iDeCoは原則60歳までの制度のため、始める年齢によっては非課税期間が短くなってしまいます。 つみたてNISAは年齢にかかわらず20年間の非課税期間を利用できます。
投資は一般に長期運用するほど有利になります。始める時期が遅くても長期投資しやすい点はつみたてNISAならではの特徴です。
使い分ける上でのポイント

iDeCoとつみたてNISAは併用できますが、「まずはどちらか選びたい」という方もいるでしょう。ここで両制度の使い分けのポイントも押さえましょう。以下に簡単にまとめました。
老後資金を貯めたい | マイホームや子供の 学費を貯めたい |
老後資金を 十分に貯めたい |
|
---|---|---|---|
iDeCo | ◎ | × | 併用がおすすめ |
つみたてNISA | 〇 | 〇 |
簡単に解説します。
老後資金を貯めるならiDeCoがおすすめ
iDeCoは原則60歳まで引き出せませんが、老後資金を貯めるうえではメリットです。途中で引き出せない仕組みなので、確実に老後資金を準備できるためです。
貯蓄が苦手な方にこそおすすめ。 ついお金を引き出してしまった経験がある方はiDeCoの利用を検討しましょう。

厚生労働省「簡易生命表(2019年)」によると、男性で27.2%(約4人に1人)、女性で51.1%(約2人に1人)が90歳まで生存しています。「多くの方に長い老後がある」という事実を冷静に受け止め、老後資金をしっかり準備しておきましょう。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
60歳までに必要なお金を貯めるならつみたてNISAがおすすめ
60歳までに使うお金を貯める場合はつみたてNISAを選びましょう。iDeCoは60歳まで引き出せないため向きません。以下のようなお金はつみたてNISAが向いているでしょう。

これら以外でも、60歳までに使う予定のお金を積み立てる場合はつみたてNISAを選びましょう。

あまりに早く使うお金の場合、つみたてNISAにも向きません。時間の分散や長期運用の効果がうまく働かず、つみたてNISAのメリットを得にくいためです。
60歳までに使うお金のうち、ある程度期間に余裕があるものはつみたてNISAをおすすめできます。すぐに使う予定のお金は銀行預金で用意しましょう。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
iDeCoの限度額以上に資金を貯めたい場合は併用がおすすめ
iDeCoの注意点の1つに、投資できる金額の少なさがあります。自営業者は年に最大81.6万円投資できますが、給与所得者は年に14.4~27.6万円までです。満額で20年続けても288~552万円までしか積み立てられません(利回り0%の場合)。
つみたてNISAは誰でも年に40万円まで投資できます。 「iDeCoだけだと目標に届かない」という方はつみたてNISAを併用しましょう。
iDeCoとつみたてNISAを併用する際におすすめの証券会社
iDeCoとつみたてNISAを併用する場合、以下の理由から「SBI証券」か「楽天証券」をおすすめします。
- iDeCo&つみたてNISAの商品が豊富
- つみたてNISAのカード決済対応 ポイントが貯まる
「SBI証券」と「楽天証券」は豊富な取扱商品が強みです。またつみたてNISAのクレジットカード決済ができるため、カードから ポイント還元を受けられる点も魅力。
>>SBI証券の詳細はこちら(公式サイト)
>>楽天証券の詳細はこちら(公式サイト)
SBI証券 | 楽天証券 | ||
---|---|---|---|
iDeCo | 取扱商品の数 | 37本 | 32本 |
商品の種類 | 10種 | 11種 | |
つみたてNISA | 取扱商品の数 | 175本 | 177本 |
カード決済 ※()はポイント還元率 |
三井住友カード (0.5~2%) |
楽天カード (1%) |
※「iDeCo 商品の種類」は確定拠出年金教育協会によるカテゴリー
出典:確定拠出年金教育協会(iDeCoナビ)「商品内容で比較」
これからiDeCoとつみたてNISAを併用しお金を積み立てる場合、SBI証券か楽天証券のどちらかで口座開設するのがいいでしょう。

SBI証券のiDeCoは「SBIベネフィット・システムズ」という別サイトで管理します。つみたてNISAを管理する証券サイトとは異なるIDが必要なため、併用すると管理が少し手間です。
楽天証券のiDeCoは証券サイトで直接確認できます。同じIDで管理できるため、併用時も管理しやすい点が魅力です。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
目的に合わせてiDeCoとつみたてNISAを組み合わせましょう

iDeCoとつみたてNISAは併用可能ですが、それぞれ単独で利用することもできます。 お金を積み立てる目的に合わせ、両制度を上手に活用しましょう。
最初のステップは口座開設です。iDeCoやつみたてNISAを始めるならSBI証券か楽天証券がおすすめ。さっそく口座開設を申し込み、積み立ての第一歩を進めましょう。
iDeCoとつみたてNISA 併用に関するQ&A
つみたてNISAは「投資信託」だけに投資できますが、iDeCoは「定期預金」や「保険商品(いわゆる貯蓄型保険)」にも積立できます。またiDeCoは原則60歳まで解約できませんが、投資額と同額の所得控除を受けられます。積み立てと節税が同時にできる点が魅力です。一方つみたてNISAはいつでも解約できますが、iDeCoのような所得控除はありません。

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