ワーキングマザーの応援CMが話題になるなど、“育児と仕事の両立は大変なもの”というイメージが根深い現在の日本社会。実際、出産や子育てをきっかけに、好きな仕事を辞めてしまう女性も少なくない状況だ。

一方で、世界の先進国に視野を広げると、ワーキングマザーが活躍できる環境が急速に整い始めている。特に、新しいテクノロジーを使ったビジネスが多く生み出されるサンフランシスコを中心としたアメリカの西海岸地域では、多くのワーキングマザーが活躍中。女性リーダーも多い環境だ。

「キャリアアップしない選択肢なんて、私の人生には無いわ」と穏やかな笑顔で語るのは、世界最大級のファッション検索サイト『SHOPSTYLE』を運営するPOPSUGAR Inc.エグゼクティブ・ヴァイスプレジデントのメリッサ・デイビスさん。31歳という若さで『SHOPSTYLE』の副社長に就任し、現在ではゼネラルマネジャーとして世界中に存在する『SHOPSTYLE』掲載ブランドの統括、マーケティングを行う傍ら、4歳と2歳の2人の子どもを育てる母でもある。

「仕事を辞める」選択肢はない
短時間で質の高い仕事をする方法を考えた

「キャリアアップ=管理職になる」だけじゃない! 世界的ファッションサイトの運営者が語る、米国ワーキングマザーのワークライフ事情
(画像=POPSUGAR Inc.
Executive Vice President and General Manager, SHOPSTYLE
メリッサ・デイビスさん
2008 年にPOPSUGAR Inc.に入社後、米国国内でのビジネスディベロップメントを担当。その後、2010 年より『SHOPSTYLE』の米国でのビジネスを統括。2014 年以降は『SHOPSTYLE』の世界展開を統括し 、1400 以上のブランド、EC サイトとのパートナーシップの責任者に就任。現在では10,000 人以上のメンバーを誇るブロガーマーケティングプログラム、『ShopSense』 も管轄している。10 年以上のデジタルメディアとE コマース分野での知識や経験を持つ
『Woman type』より引用)

日本での展開を始めて5年が経った『SHOPSTYLE』。世界中から月間1700万人の人が訪れるサイトだが、その中で最もアクセスが多い都市は東京とのことで、メリッサさん自身も日本の女性たちに強い関心を抱いている。

「私は、東京の女性たちのファッションが大好き。彼女たちのコーディネートは本当に自由でユニーク。東京にしかない個性的なスタイルをたくさん見ることができるので、日本に足を運ぶのはすごく楽しみなんです。一方で、日本の働く女性たちを見ていると、ワークライフバランスに関して多くの課題を抱えているように感じます。仕事はとにかくハードだと聞きますし、夜遅くまで働いている女性も多い印象です」

メリッサさん自身も、子育てを始める前は会社に一番早く出社し、一番遅くまで仕事をしているタイプだったそう。長時間労働を強制されるような雰囲気があったわけではなく、彼女自身が仕事にのめり込んでいたのだ。だが、1人目の子どもが生まれたことをきっかけに、「これまでのようには働けない」ということを痛感。ワークライフバランスに対する考え方も変わっていった。

「当時は、以前のように仕事できなくなったことが、すごくショックだった。海外で行われるコレクションを観に行く回数や日数も減らさなければいけなくなったし、そもそも仕事に割ける時間がぐっと少なくなって……。でも、だからといって仕事を辞めるという選択肢は私にはなかった。仕事は自分の毎日に刺激を与えてくれるものだし、自分にとっての生きがい。ならば、どうやったら短時間で質の高い仕事ができるのかを考えていこうとシフトチェンジしました」

アメリカの女性たちは
ワーカーとしての能力アップに意欲的!

「キャリアアップ=管理職になる」だけじゃない! 世界的ファッションサイトの運営者が語る、米国ワーキングマザーのワークライフ事情
(画像=『Woman type』より引用)

メリッサさんが『SHOPSTYLE』の副社長に就任したのは、1人目の子どもが2歳になり、2人目の子どもが生まれたとき。育児の大変さも2倍になったところでの責任あるポジションのオファー。思わずしり込みしてしまいそうな状況だが、メリッサさんは悩まず「Yes」と答えたそうだ。

「子育てをしていると、もっと子どもと一緒にいてあげたいと思うこともたくさんあります。以前は仕事のことばかり考えていた私も、こういう気持ちになるものかと自分でも驚きました。でも、だからこそ仕事をしている時間は本当に貴重なんだ、と思うようになって。子どもと一緒にいる時間を削って働くんですから、以前よりももっと仕事を楽しんで、もっと新しいことに挑戦して、自分自身が成長しなければ勿体無いと感じたのです。なので、このタイミングでの昇進は私にとって歓迎すべきものでした」

日本では女性管理職の少なさが問題視されているところだが、アメリカの女性たちは一般的に「キャリアアップにすごく意欲的だと思う」とメリッサさん。

「特に、私が働いているサンフランシスコの女性たちは、ワーキングマザーであっても仕事を楽しみ、自分を向上させていくことに非常に前向きです。キャリアアップといっても“管理職になる”という一義的なことではなく、もっと大きな目で見て、ワーカーとしての自分の価値を恒常的に高めていこうと考えている人が多い印象ですね。そのために、管理職というポジションに就いて自分の経験したことの無い業務をやってみるとか、裁量の大きな仕事で自分の力を試すとか、そういったことに当たり前のようにチャレンジしています」

こうした女性たちの意欲が醸成される背景には、「アメリカ、特にサンフランシスコならではの風土も影響しているのでは」とメリッサさんは分析する。

「サンフランシスコは女性にとってすごく働きやすい場所。ワーキングマザーへのサポートに積極的な企業が多いし、新しいテクノロジーやサービスを生み出すスタートアップも盛ん。一人一人がそれぞれのライフステージに合わせて、働き方をフレキシブルに選択できるような文化が根付いています」

“理想的なワークライフバランスの実現”というと、「仕事とプライベートの時間をきっかり分けられる環境があること」といったようなイメージを持つ人も少なくないだろう。だが、メリッサさんが考える理想のワークライフバランスは、あくまで「フレキシビリティー」が最重要。

「育児中であっても、とことん仕事がしたいときは仕事ができる。どうしても子どものために時間をつくりたいときには仕事を休むことができる。こうしたフレキシビリティーを一人一人が持てるような環境が、理想的なワークライフバランスをつくる上で欠かせません」

日本ではワーキングマザーへのサポートを行う企業は増えつつあるものの、個々人の志向を踏まえ、個別の事例で裁量を与えている企業は少ないかもしれない。

「社員一人一人が自律的な存在としてみなされ、1日1日の働き方を決めることができる。そうすれば、仕事と家庭の両立への悩みも少なくなります。その時々で自分にとってプライオリティーの高いことを選択できる自由度を持っていることこそが大切なんです」