俳優は、1年365日じゃない生き方をしている

――撮影期間中ずっとですか?

山田孝之が語る芝居論「その役の記憶を作って、人生を作っていく」
(画像=『女子SPA!』より引用)

山田「3週間の間、山田孝之がいて、得太がいて、感覚でいうと、ずっと50%でいる感じです。山田孝之と得太の間をふらふらしている。本番!となったときに、100%得太になる。あのクライマックスは長いシーンで、精神的にもキツイシーンでしたし、ちょっとでも山田孝之になってしまうと、もう戻ってこれない感覚があったので、ずっと得太のスイッチを切らずにいました。でも3週間ずっとは無理です(苦笑)。

 100%を維持したのはその日くらいですし、そんなことはほぼないですよ。過去に覚えているのは、『新宿スワン』で(綾野)剛とビルの屋上でセリフもありながら、殴り合いのアクションをしたときですね。7回戦くらいやりましたが、あのときも切っちゃダメだと思ったので、撮影が終わるまで、スイッチを入れたままでした。でもそうした究極なときだけです。それやると、崩壊するので。普段は、カットがかかったら、なるべくすっと落として、自分と役とどちらでもないようなふわふわした状態にします」

――想像できない世界です。

山田「俳優って、1年365日じゃない生き方をしてるんですよね。ほかの人の一生分も生きるから。そうすると年間に一生を何回もやっていると足りなくなる。だからやりすぎはよくないんです。演じすぎはよくないです」