さくらインターネット代表の田中です。この連載は「働くすべてのビジネスパーソン」に向けて書いていきます。

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私たちは何のために働くのか?会社で働く人にとって幸せな未来とは

最近は、これまで以上に多様性が大事になってきました。そこで大切なのは、他人を肯定的に捉えることではないでしょうか。

 さくらインターネットの行動バリューの一つに「肯定ファースト」という考え方があります。肯定ファーストは発言する側ではなくて、受け手側の意識についての話です。

肯定的に相手に伝えることよりも、相手が言っていることを一度肯定することで、自分の心理的ハードルが下がります。

「こうあるべき」「この人の考え方は間違っている」という考えから入ると、おかしくなってしまいます。

 たとえば、同性愛について。正直、私も最初は驚きました。高専に通っていたとき、クラスメートは男性ばかりでしたが、たまに男性同士で付き合っている人がいたのです。

中学生のときには、女の子みたいな男の子もいました。当時は変わった人だなという目で見てしまいました。とても反省しています。

こうした方たちに対しても肯定的に「同性同士で付き合ってもいい」「女の子っぽくてもいい」と肯定できればいいと思うんです。

 「認知的不協和」という言葉があります。これは自分が正しいと思うことが間違っていたとしても、その不快感や矛盾を解消するために、そのことを正当化してしまうことです。そのため、肯定ではなく否定から入ってしまうと、他人を受け入れる心理的ハードルが上がってしまうのです。

相手のことを受け入れる。これを習慣化していくといいです。相手に敬意を表する、対等に見ることが大切です。

そんなこと、言われなくてもわかっているよと思うかもしれません。非常にシンプルなことですが、わざわざ言わないといけないくらい、人間は標準的にはできないことなんだろうと思います。

 ユヴァル・ノア・ハラリさんの著書『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』にも書いてありましたが、人間の脳は体の消費エネルギーの25%を使います。脳が大きいのは人間の強みでもありますが、脳の処理量をいかに減らすかを最適化して進化してきたといわれています。だから余計な計算をしたくないわけです。

目では見ているんだけど、脳で処理をしていないことは当たり前です。労力がかかるので、人間は見たいものしか見ません。バイアスのかかった見方をするのも同じ理由からです。

人間の進化からいうと、考える量を減らすようにプログラミングされているので「考えさせられる」こと自体が負荷になるんです。でもそれを乗り越えて、他人を認めたほうがいいんじゃないかと思っています。

まとめると、相手に対して失礼のないようにする。これに尽きるわけです。

ダイバーシティを前提とした制度

 さくらインターネットの場合、一つひとつの制度というよりは、すべての制度がマイノリティを意識したダイバーシティを前提とする制度になっています。

たとえば、2016年からはじめたリモートワークは、子育てしている社員が大変だという話をきっかけにはじまりました。そこで重要なのは、子育てしている人を助けるためではなくて、子育てしている人にフォーカスしたうえで、そもそもの制度を変えることです。多くの会社ではマイノリティにのみターゲティングして、施策をしています。障がい者雇用にしてもそうです。

 私が話すミーティングでは、文字起こしをしてテキスト化をしています。これは、もともと耳が聞こえない社員のためにおこなったことです。

この施策のおかげで、周りに人がいる環境でもイヤフォンをしないで会議に参加できるようになりました。それに議事録として文字で残るので、当日参加できなかった人も確認ができます。

マイノリティのことを考えて、前提を変える。そうすることで、多くの人が得をするわけです。それが私たち、さくらインターネットの大原則です。

 マイノリティを優遇するのではなく、マイノリティが困らないように全体を変える。

全体を変えることは大変なので、多くの会社はしません。全体がリモートワークになったら、管理職の方が存在感をなくしてしまう。だから多くの会社でリモートではなく、出社するようになっているわけです。

ただし、マイノリティの人たちが下流にいてはいけません。マイノリティの人たちが上流にいて、その人たちが困っていることを前提に世の中を変えていった結果、マジョリティの人も得することが大事です。この違いを明確にしておきます。

ハイコンテクストな決め方をやめよう

 日本におけるものごとの決め方で、もっともいけないと言われているのが、ハイコンテクストな決め方です。ハイコンテクストは、コミュニケーションの際に相手の意図を汲み取ってなんとなく通じてしまう環境で、あまり直接的な表現をせず、立場や人間関係などに配慮します。日本では「空気を読む」「忖度する」といった言葉もあるくらいです。

「なぜそうなったのかはわからないけど、誰かの意図をくみ取って決まった」

このように文脈が非常に難しいものごとの決め方をしがちです。結局、どうしてそう決まったのか。説明不可能になるケースが多いわけです。みなさんの会社でもこのような経験はないでしょうか。

 私はそれをできるだけ減らしたい。そのため、役員会の議事録を公開するなどして、社員に伝えるようにしています。それでも、まだまだ不足しています。

リモートワークとなり、チャットツールなどのテキストを中心に仕事が進むことで、以前よりはハイコンテクストではなくなってきました。

 アスペルガーやASDといった広汎性発達障害の方は、相手の気持ち読み取りにくく、ハイコンテクストなものごとの理解は難しいと言われています。

(参考:厚生労働省 発達障害の理解 ~メンタルヘルスに配慮すべき人への支援~)

合意的にものごとが進めば、いままで働くことが難しかった人たちが活躍できるようになるわけです。