誰でも簡単に作ることができる家庭料理だからこそ、最高峰を食べてみたい。そんな大人のわがままを叶えるべく向かったのが、行列の絶えない老舗。おにぎりの認識を変えるほどの味に出合う。

行列ができる有名店の究極旨おにぎり

ご飯を握るだけなのに、なんでこんなに美味しいの?究極の旨“おにぎり”2選
(画像=ぼんごの「おにぎり(卵黄・あさり)」、『女子SPA!』より引用)

すきっ腹に詰め込む食べ物、あるいは軽食の一つとして理解していたから、ある日、居酒屋の〆で食べた塩むすびの旨さにたじろいた。ごはんと塩というシンプルな組み合わせなのに、なぜか手が止まらなくなった。米と塩がなんでこんなにもうまいのか頭が混乱した。

 玄米や雑穀が幅を利かせるこの時代に、白いごはんはごちそうであると思った。その日から、おにぎりを一つの料理として尊重するようになったのかもしれない。

「ぼんご」は山手線大塚駅前にある人気店。店主の右近由美子さんは2代目にあたり、亡き夫が昭和35年にこの地に店を構えて60年以上がたつ。

 目の前に並ぶ具材を選び、その場で握ってもらうカウンタースタイルは昔から変わらない。今や行列必至の人気店だが、ようやくカウンターに辿り着いたら壁に貼られたメニューと、ショーケースに並ぶ具材でしばし一考。ごはんを誘惑する色っぽいネタと、白米が炊きあがる湯気に思わず腹が鳴る。

 寿司屋に近いカウンタースタイルだからこそ、その日の気分で好きなネタ……ではなく、具材を指さし注文。同時に威勢のいい声が返ってくる。おにぎりを作る職人がキビキビと動くさまは見ていて気持ちがいいし飽きない。

シンプルだからこそ職人技が光る奥深さ

 50種類以上ものメニューから、せっかくだからと、ここでしか食べられない変わり種の「卵黄」と「あさり」に決める。

ご飯を握るだけなのに、なんでこんなに美味しいの?究極の旨“おにぎり”2選
(画像=並ぶ具材はなんと56種。2つの具を組み合わせることもできる。人気は「すじこ+さけ」 、『女子SPA!』より引用)

白く輝くおにぎりを口に入れたら、次の瞬間には米がほどけて、米と具材の旨さが口の中いっぱいに広がった。

「うちは力を入れて握らないの。形を整えて海苔をつけるだけ」と店主が言うように、軽く握ったおにぎりは空気をたくさん含むので口当たりがよく、口の中でごはんとおかずが自由に踊っているような気持ちになる。

 冷凍卵の黄身だけを取り出して醬油に漬けこんだ「卵黄」は、熱々のごはんに程よく溶け出し、米の一粒一粒に絡み合う。生姜の風味がアクセントとなっている「あさり」は、佃煮のようなご飯に合う味付けでありながら、ふっくらとした貝の食感はまったく損なわれていない。

 どちらの具材も、かぶりつくとこぼれ落ちそうなほどの量だ。おにぎりだけで一食分として完結しているのである。

ご飯を握るだけなのに、なんでこんなに美味しいの?究極の旨“おにぎり”2選
(画像=味はもちろん、ボリュームの多さも自慢。ひとつでお腹いっぱいになる人も、『女子SPA!』より引用)

個性豊かで主張の強い具材たちが、おにぎりという楽曲の中では心地いいグルーブを生み出す。その瞬間を楽しんでほしい。

ぼんごの「おにぎり(卵黄・あさり)」 しぐれ煮にした甘じょっぱい味つけの「あさり」(260円)はごはんとの相性が抜群。人気の「卵黄」(310円)は冷凍してぎゅーっと濃縮させた後に、4~5時間醬油漬けし、絶妙な塩加減となっている