忙しいときこそ、「焦らず、慌てず、諦めず」

とはいえ、医療とは畑違いのビジネスの世界。理想を掲げるも、まずビジネスの専門用語についていけず、概念を理解するのに数カ月かかることもあったという。

またビジネスとして成り立たせていく以上、数字や納期とも向き合わなければならない厳しい現実とも向き合った。

「なかなか思う通りにいかないときは『焦らず、慌てず、諦めず』と、唱えて乗り切っています。これはがん治療でも大切にされている考え方なんですよ。焦って、大事なものを見落としてしまっては、元も子もありません」

目の前の仕事に追われて忙しいときこそ、大切にしたい価値観に立ち返る。

「そもそも、なぜこの事業を始めようとしのか?」「誰に、どんなカトラリーを届けたいのか?」「私たちがつくりたい社会はなにか?」時間はかかるかもしれない、すぐには結果は出ないかもしれない。

それでも着実に物事を進めることを大切にしたいと柴田さんは話す。

日本人の食事に欠かせない「お箸」づくりへの挑戦

上手くいかないときこそ、「焦らず、慌てず、諦めず」 がん経験から起業家に転身した女性が目指す世界
(画像=『Woman type』より引用)

2021年4月には、摂食嚥下障害などを持つ人にとって、口当たりに違和感がないようにこだわって開発した『iisazy お箸』を発売する。次々と新しい挑戦に踏み切る柴田さんのエネルギーはどこから来るのか。

「食べることへ悩みを抱える仲間やユーザーから『これまでにいろんなカトラリーやお箸を試してきたけど、どこか使いにくい。なかなかいいお箸に巡り会えなくて……』と不満の声を受け、周囲が喜んでくれるお箸を作りたいと思ったのがきっかけです」

いつだって、誰かのために、という思いが原動力になってくれますね。そう話す柴田さん自身も、当事者としてお箸選びは悩みの種だったという。

「割り箸は小さなとげが刺さって安全性に欠けるし、プラスチックのお箸だと味気ない。外食するときも持ち運びがしやすく、お店で使っていても周りと浮かないお箸があったらいいな、と思っていました」

猫舌堂の思いを受け、実際に形にしたのは、熊本県で半世紀以上続く老舗お箸メーカー・ヤマチク。これまで老若男女に向けて、年間500万膳のお箸を届けてきた、竹のお箸のシェアで日本一を誇る企業だ。

あらゆる世代の食事シーンに寄り添ってきたヤマチクが、猫舌堂の思いを受け、みんなにやさしいお箸を制作した。

「ヤマチクさんが作ってくださったお箸は、口触りが良く、手になじむ。外食先でも違和感のないデザインで、持ち運びにも最適なお箸でした。いいお箸に巡り会えない……。そうぼやいていた仲間たちに使ってもらうと、使いやすいと大絶賛で。笑顔が見られ、うれしかったですね」

人の人生を好転させる、カトラリーを届けたい

上手くいかないときこそ、「焦らず、慌てず、諦めず」 がん経験から起業家に転身した女性が目指す世界
(画像=『Woman type』より引用)

「たかがカトラリー。されど、カトラリー。本当にそう思うんです。スプーンやお箸を変えるってほんの小さな変化かもしれない。でも食事を楽しめるようになったことをきっかけに、毎日の暮らしが楽しくなったり、社会とのつながりを持てたり、家族とのだんらんが戻ったり。その人らしい人生を歩む姿が見られたらうれしいですよね。諦めなくていいんだよって、伝えたいです」

人の人生を好転させるカトラリーを届けたい。思いを掲げる柴田さんから、どんな状況でも「焦らず、慌てず、諦めず」一歩ずつ進んでいけばいいと背中を押してもらった。


提供・働く女のワーク&ライフマガジン『Woman type』(長く仕事を続けたい女性に役立つ、キャリア・働き方・生き方の知恵を発信中)

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