市場の常識を変える!挑戦ヒストリー
イノベーター列伝

市場の常識を変えるような華々しいプロダクトやサービスが日々メディアに取り上げられる今日。その裏では、無数の挑戦や試行錯誤があったはずです。「イノベーター列伝」では、既存市場の競争軸を変える挑戦、新しい習慣を根付かせるような試み、新たなカテゴリの創出に取り組む「イノベーター」のストーリーに迫ります

今回話を伺ったのは、アウトドアスタイル・クリエイターの四角友里氏。同氏は、日本であまり浸透していなかった登山用ウェア「山スカート」を世に広め、山ガールブームの火付け役となりました。道なき道を開拓する四角氏に、人生において大切にしていることを聞きました。

山ガールブームの火付け役、四角友里が“苦悩の時期”を乗り越えられたワケ「山では安全第一に。でも、自分らしくも大切に」
(画像=四角友里(ヨスミ・ユリ)
アウトドアスタイル・クリエイター。「山スカート」を日本に広めた、女子登山ブームの火付け役。全国での講演活動や執筆、アウトドアウェア・ギアの企画開発などを手がける。着物着付け師としての顔ももつ。アウトドアブランド・マーモットとのコラボウェアは多くの女性登山愛好者の支持を受け、2014年には、自身がプロデュースしたフリースが米国のアウトドアギアコンテスト「POLARTEC® APEX Awards」を受賞するなど評価が高い。 著書:『デイリーアウトドア』『一歩ずつの山歩き入門』『山登り12ヵ月』、『Woman type』より引用)

「だれかを笑顔にする人になりたい」という理想

子どものころの夢は、エレクトーンの先生になることでした。ところが、そのために必要な講師資格を、中学生のときに取得することができたんです。資格があるからといってすぐに先生になれるわけではありませんが、わずか15歳にして夢が叶ってしまいました。そこで、将来についてもう一度じっくり考えてみました。その結果、重要なのは「なりたい職業」ではなく、「将来どんな人になりたいか」ということなのでは、と考えるようになりました。そこで導き出した自分なりの答えが、「だれかを笑顔にする人になりたい」ということ。とても単純明快ですが、今でも大切にしている目標です。

山ガールブームの火付け役、四角友里が“苦悩の時期”を乗り越えられたワケ「山では安全第一に。でも、自分らしくも大切に」
(画像=『Woman type』より引用)

大学を卒業して、キャラクターグッズを企画・販売するサンリオに2002年に入社しました。キャラクターグッズを通して多くの人を笑顔にしていることが、同社を志望した理由でした。入社後は商品企画部に配属され、生活雑貨など大人の女性向けグッズのプランナーになりました。ものづくりをしながら、グッズを使ってくださる方のニコッとなる瞬間を想像するのがうれしくて、ほんとうにやりがいを感じていましたね。しかし、入社4年目に体調を崩してサンリオを退職。仕事はとても楽しかったのですが、がんばりすぎて無理がたたってしまったようです。

その後、わたしが就いた仕事は「着物の着付け師」でした。着付け師を目指すきっかけになったのは、元同僚の結婚式に参加する際に、着物を着付けてくださった先生でした。母の思い出の着物を着る予定だったのですが、わたしの身長が高すぎて、「丈が合わない」と何名かの着付け師の方に断られてしまったんです。着付けが難しい状況にもかかわらず、この先生だけはわたしの想いを汲み取り、技を駆使してうまく着付けてくださいました。大胆な転身と思われるかもしれませんが、その経験によって「着物を身にまとうと女性は笑顔になる」と感じたのが、着付けに興味を持った理由でした。

そのときの先生に弟子入りするかたちで、2006年から着付けの勉強を開始。当時は、平日は着物を着て、休日は趣味で山に登るという日々でしたね。

山でも自分らしくいたい

わたしが山登りにのめり込んだのは、2003年のことでした。まだサンリオで働いていたころに、北アルプスにある上高地の散策路を歩いたことがきっかけでした。上高地での体験は、それまでのキャンプなどのアウトドアとはまったく別物で、翡翠(ひすい)色の川や初夏なのに雪をかぶった山頂などすべてが美しく、「大きな自然に抱かれている幸せ」を実感したんです。山の魅力に気づいてから、わたしの人生はすごくカラフルになりました。

その後も、さまざまな山に行く中で、2004年に出会ったのが「山スカート」でした。ニュージーランドでトレッキングをしているときに、スカートをはいている女性を見かけたんです。当時、日本のアウトドアウェアはズボンが基本スタイルで、男性と同じようなデザインのものがほとんど。そんななかで、山でスカートをはいた女性を見た瞬間に「山でもオシャレをあきらめないでいいんだ」と感動したのを覚えています。

山ガールブームの火付け役、四角友里が“苦悩の時期”を乗り越えられたワケ「山では安全第一に。でも、自分らしくも大切に」
(画像=『Woman type』より引用)

早速、わたしも山スカートを購入し、山に登ってみました。すると、単にかわいいだけではなく、着替えやトイレのときに目隠しになってとても便利、かつ足の運びがスムーズになることがわかりました。機能性もある山スカートは、わたしのモチベーションや能力を上げてくれるマストアイテムになりました。

以降、海外から山スカートを取り寄せては、山で試しばきをする日々に突入しました。比較していくと、「タイツと相性が悪いもの」や、「キャンプにはいいけれど登山には向かないもの」などがあることがわかり、商品の仕様や使用感を自分のためにスペック情報としてまとめていきました。あくまで個人用の情報なのですが、もともとのオタク気質も相まって、かなりの自己投資をして山スカートの研究を重ねました(笑)。