「親を扶養に入れると、税金や社会保険の負担が少なくなる」ということをご存知ですか?配偶者や子どもだけでなく、親も条件を満たせば扶養に入れることができます。

少しでも負担が減らせるのなら検討してみたい……でも一体どうしたらいいの?という方のために、親を扶養に入れるメリットや条件をご紹介します。

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そもそも“扶養に入れる”とは?

「扶養に入れる」「扶養から外れる」というフレーズを聞くことがありますが、これらはどのような状態を指すのでしょうか。

「扶養」という言葉には、助けて養うという意味があります。親を「扶養に入れる」とは、その家族を経済的な面で助け、養っている状態にすることです。

税金や社会保険料の仕組みにおいては、親を扶養に入れることで金銭的なメリットを受けられるようになっています。

扶養には、以下の2種類があります。

税制上の扶養 扶養者(子)が支払う所得税と住民税の額に影響
健康保険の扶養 被扶養者(親)が支払う健康保険料の額に影響

これらはひとまとめにして語られることが多いのですが、実は「扶養の定義」も「扶養に入れる方法」も違います。それぞれのメリットや条件について詳しく見ていきましょう。

〈詳しくはこちら〉
家族を扶養に入れるとお得なの?年金受給の親を扶養に入れるメリットと条件

親を扶養に入れるメリット

親を扶養に入れると、税金と社会保険の負担が少なくなるというメリットがあります。

税制上の扶養のメリット

扶養家族がいる場合は、所得税や住民税の計算において「扶養控除」を受けることができます。

所得税や住民税は入ってきたお金(所得)をもとに支払うべき金額が計算されますが、控除を受けることで計算の基準となる課税所得が減り、税金が安く済みます。

親を扶養に入れたときの控除額は、以下のとおりです。

・所得税
親が69歳以下……38万円
親が70歳以上(別居)……48万円
親が70歳以上(同居)……58万円

・住民税
親が69歳以下……33万円
親が70歳以上(別居)……38万円
親が70歳以上(同居)……45万円

例えば、69歳で年金暮らしの親を扶養に入れた場合、子の年収が400万円(所得税20%、住民税10%)とすると、(扶養控除38万円×20%)+(扶養控除33万円×10%)=10.9万円ですから、年間10万円以上も税負担が軽くなります。

両親共に扶養に入れる場合は、控除額が2人分になりますのでさらに節税効果が高まります。

〈税金についてはこちら〉
結婚すると税金の何が変わる?配偶者控除、扶養控除、年金は?

健康保険の扶養のメリット

親を扶養に入れることで、税金だけではなく、健康保険においてもメリットがあります。

それは、親の保険料が免除になることです。子が加入している会社の健康保険(1人分の保険料)で、親の健康保険までカバーすることができるのです。

ただ、子が自営業などで、会社の健康保険ではなく国民健康保険に加入している場合は、扶養控除を受けることはできません。国民健康保険には扶養という概念がないため、1人ずつ独立したものとして、それぞれが保険料を支払うことになります。

親を扶養に入れるための条件

親を扶養に入れるための条件は「税制上の扶養」と「社会保険の扶養」でそれぞれ違います。

税制上の扶養:扶養控除を受ける条件

以下の条件をすべて満たす必要があります。

(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
自分の親はもちろん、結婚相手の両親も対象になります。

(2)納税者と生計を一にしていること。
これは、「同じお財布で生活している」ということです。親が別居の場合でも、定期的に仕送りして生計を支えている場合などは対象になります。

(3)年間の合計所得金額が38万円以下であること。
所得金額というと少々わかりにくいですが、親の収入が年金のみの場合は、64歳以下なら収入108万円以下、65歳以上なら収入158万円以下が対象になると考えましょう。

(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

例えば、子が経営する事業を親が手伝っており給与を受け取っている場合は対象になりません。

健康保険の扶養:被扶養者になる条件

加入している健康保険(保険証の発行主体)によって異なる可能性がありますが、ここでは全国健康保険協会(協会けんぽ)の例を見てみましょう。

協会けんぽでは、親が同居でも別居でも「主として被保険者に生計を維持されている」かどうかが重要なポイントになります。

「主として被保険者に生計を維持されている」とは、子の収入で親の暮らしが成り立っている状態のことで、具体的な基準は以下のとおりです。

・収入要件

親の年間収入:130万円未満(親が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)親の年間収入:130万円未満(親が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)

かつ

親と一緒に住んでいる場合:親の年収が子の年収の半分未満
親と離れて暮らしている場合:親の年収が子からの援助額(仕送り額)未満

健康保険では75歳以上の親は扶養に入れることができません。75歳以上の方には「後期高齢者医療制度」という特別な医療制度があり、そちらに加入することになるためです。

親を扶養に入れるにはどうすればいいの?

こちらも「税金」と「健康保険」で方法が違いますが、条件を満たしたからといって勝手に扶養家族として扱われるわけではなく、それぞれ手続きが必要です。

税制上の扶養に入れる手続き

年末調整の時に会社からもらう「給与所得者の扶養控除等申告書」という書類に、必要事項を記入して提出しましょう。

健康保険の扶養に入れる手続き

健康保険の手続き方法は、加入している健康保険(保険証の発行主体)によって違います。

協会けんぽの場合は「健康保険被扶養者届」という書類と、親との間柄や収入要件を確認するための証明書類を、会社で健康保険関係の事務を担当している部署(人事や総務など)に提出します。

親を扶養に入れると介護費用がアップすることも

親を扶養に入れるときに、注意しておきたいことがあります。

扶養に入れることで税や健康保険の負担は軽くなりますが、扶養に入れてしまったために親の介護費用の負担が増してしまうことがあるのです。

介護保険制度では、介護サービスを受けるとき、所得が低い人ほど金銭的負担が軽くなる仕組みになっています。ここでいう所得は、親個人の所得だけでなく、世帯としての所得も問われます。
出典:厚生労働省 『サービスにかかる利用料』

つまり、別世帯であれば親の所得だけが考慮されて負担軽減措置の対象になるものが、収入がある自分と同じ世帯にしたことで世帯収入が高くなってしまい、負担軽減措置が受けられなくなることがあるのです。

どんなケースで介護費がアップする?具体例で説明

どんな場合にどのくらい負担が増すのか、Aさんの例で見てみましょう。

  • Aさんの年収:400万円
  • Aさんの母親の年収:70万円(年金のみ) 預貯金など:500万円
  • 扶養に入っていない場合の自己負担額:1万5,000円 Aさんが離れて暮らしていた母親と同居し、家計も共有、扶養に入れることにした場合、何と介護費の自己負担額が4万4,000円まで上がります。

    同じ介護サービスを同じ回数利用した場合でも、1ヵ月あたり2万9,000円も高くなってしまうのです。

    なぜ介護費用がアップするの?

    これには、「高額介護サービス費」という制度が関係しています。この制度は、介護費用の負担が大きくなりすぎることを防ぐため、1ヵ月に支払う介護サービス費用が一定額を超えたときに、その超えた分を支給するというものです。

    自己負担の上限額は、以下のとおりです。

    対象者 自己負担上限(月額)
    【現役並み所得相当】
    課税所得145万円以上の被保険者がいる、かつ
    世帯年収520万円以上(単身の場合は383万円以上)
    4万4,400円(世帯)
    【一般世帯】
    市町村民税課税世帯(現役並み所得相当を除く)
    4万4,400円(世帯)
    ※1割負担者
    (年金収入280万円未満)
    のみの世帯は年間上限
    (44万6,400円)設定あり
    【市町村民税非課税世帯】
    全員が市町村民税を課税されていない世帯
    2万4,600円(世帯)
    ・本人の合計所得金額と課税年金収入額の
    合計金額が80万円以下の方
    ・老齢福祉年金受給者の方
    2万4,600円(世帯)
    1万5,000円(個人)
    生活保護を受給している方 1万5,000円(個人)

    (厚生労働省「高額介護サービス費の見直し」より作成)

    表のとおり、この制度では「世帯」としてどのような状況にあるのかということが問われます。

    Aさんの母親は個人の収入だけなら非課税世帯と判断され、1ヵ月の負担が1万5,000円に抑えられますが、市町村民税が課税されているAさんと同世帯になることで、負担が大きくなってしまうのです。

    特別養護老人ホームの自己負担上限額もアップするかも

    Aさんの母親が特別養護老人ホーム(多床室)を利用した場合、1ヵ月の負担額は以下のように増えます。

これは、介護保険施設を利用するときに低所得の人ほど負担が軽くなる「補足給付」という仕組みによるものです。

この仕組みでは、利用者の状況に応じて負担段階が4段階に分かれています。

利用者負担段階 主な対象者
第1段階 ・生活保護受給者
・世帯全員が市町村民税非課税である老齢福祉年金受給者
第2段階 ・世帯全員が市町村民税非課税であって、
年金収入金額+合計所得金額が80万円以下
第3段階 ・世帯全員が市町村民税非課税であって、第2段階該当者以外
第4段階 ・世帯に課税者がいる者
・市町村民税本人課税者

(厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会 参考資料」より一部引用にて表作成)

Aさんのケースではもともと、母親が単身世帯の場合は負担軽減が受けられる「第2段階」に該当していましたが、Aさんと母親が同じ世帯となったことで「第4段階」に変わります。

税金や健康保険料を抑えるために扶養に入れたのに、それ以上に介護費用が高くなってしまうのは避けたいものです。

扶養に入れて税金と社会保険料を抑えるか、扶養に入れずに介護費用を抑えるか、自分の収入や親の健康状態なども考慮して、どちらが得になるのかよく考えて選択してください。

〈詳しくはこちら〉
いまさら聞けない「扶養」のメリット・デメリット

制度をうまく利用しよう

扶養の制度は少しわかりにくいかもしれませんが、うまく使えば親子両方の負担軽減につながります。親が退職したときなど、収入が減ったタイミングで時間をとって話し合ってみてはいかがでしょうか?

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土曜9:00~17:00
平日10:00~19:00
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