育児を機に転職した方の話を伺っていると、「これでよかったのかな」という迷いや後悔が言葉の端々ににじむことがあります。それでも仕事も育児も毎日こなせるのがワーママの強さ、美しさですが、前に進めないときは無理にがんばろうとしないで、過去を振り返ることで見えてくるものがあります。

わかってもらえない、転職後のつらさ

育児を機に転職。これでよかったのかなと後悔するときは
(画像=『LAXIC』より引用)

毎日ギリギリの状態で仕事をして、家事や育児の負担も重くて・・・という毎日のなか、じっくり考えたり夫婦で話し合ったりする時間が十分とれないまま転職したという方は多いと思います。家族のことも考えての転職ですから、「もっと自分のキャリアを大切にしたかった」「これからのことをよく考えてから転職したかった」と不本意に感じても無理はありません。

そうした気持ちは今の仕事への意欲を失わせることでしょう。どうしても以前の仕事が良く見えて、なんとか続ける方法があったんじゃないかと考えてしまい、転職に失敗したような気がしてしまいます。それなのに家族や友人からは転職できたからよかったじゃないと言われるかもしれません。とてもつらいですよね。

過去を振り返って見えること

育児を機に転職。これでよかったのかなと後悔するときは
(画像=『LAXIC』より引用)

私たちは多くの過去を「良い思い出」「悪い思い出」とラベル付けしています。

でも良い悪いの判断抜きにただありのままを思い出してみると、新しく見えてくるものがあるのです。

「なんで転職したんだろう」「以前の仕事が続けられていたら」という迷いや後悔で心が一杯になるときは、転職までの経緯など思い出したくないかもしれませんし、逆にある時点を思い返しては悲しくなることの繰り返しかもしれません。

でも、こうしたときこそ転職までのあれこれを良い悪いの判断抜きに一度思い返してみてください。

自分と周囲はどんな状況だったか、自分は何を考え、どう感じていたのか。

そうした細かなところまでじっくり振り返ってみてください(冷静に振り返るために文字にしておくことをお勧めします)。

自分がかつては何を考えていたか、細かいところまで普段は意外と思い出さないものです。同じように周囲の状況についても一つの見方からしか思い出さなくなっていきがちです。転職を後悔すればするほど、どうしても感情に引っ張られて、あの時〇〇していれば、あの人が〇〇してくれていたら・・・と同じ見方からしか過去を思い出さなくなっていくのです。

それ自体は自然なことですが、そのせいで見えなくなるものがあるのも事実です。失敗かもと感じている転職も、その時々でできるだけのことをしてきた結果ではないでしょうか。家族の将来を考え、新しいことを始めようと決め、何かを手放す決意をして・・・。そうしたことがだんだんと思い出せるようになると、悔やんでいたことも「十分頑張った、あれ以上はできなかった」と自分を認める気持ちになるかもしれませんし、苦い経験にも「あの状況では仕方なかった」と自分や他人を許す気持ちになるかもしれません。一方で新しい仕事への決意を思い出したり、自分に足りなかったところが見えてくるかもしれません。

過去のとらえ方が変わると、今の状況を引き受けられるようになる

育児を機に転職。これでよかったのかなと後悔するときは
(画像=『LAXIC』より引用)

こうして過去を振り返ると、貴重な事実に気づくと思います。それは、かつて持っていた価値観は絶対ではなく、むしろ今の現実を受け入れる妨げになりうるということです。

以前のコラムで紹介した、かつてのキャリア観を手放すことや「自分はこうあるべき」というイメージから解放されることの大切さはここにあります。過去のある時点で大切にしていた信念は、もはや今の自分にはふさわしくないかもしれない。そうしたものを通して現在の状況を見ていたから苦しかったのだと気付けるでしょう。

過去は変えられないと言いますが、実は過去のとらえ方が変わると現在の受け止め方が変わってくるのです。迷いや後悔で凝り固まった気持ちから離れ、「もう以前の仕事には戻れないし、私の居場所はここなんだ」と現在の状況を静かに引き受けることができるようになります。

これは過去や現在のすべてを前向きにとらえましょうということではありません。良いことも悪いこともあって当然で、迷いや後悔が簡単に消えるわけはないですよね。でも、現在を引き受けることができるようになると、そうした気持ちに心をかき乱されることはなくなっていき、共存できるようになります。