2020年3月末のネット証券4社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券)のつみたて(積立)NISA口座数は約87万口座に達しています(「日本経済新聞」2020年4月23日付)。1年前の約43万口座から倍増しており、つみたてNISAへのニーズの高まりが証明されたかたちです。すでに一般NISAで運用を始めているものの、つみたてNISAへの変更を考えている人もいるのではないでしょうか。

NISAは1年ごとに金融機関を変更したり、一般NISAからつみたてNISAに切り替えたりすることができます。より有利に運用できる証券会社にNISA口座を切り替えたいという人もいるでしょう。本記事では一般NISAからつみたてNISAへの切り替え方法をはじめ、運用商品の違いや証券会社を選ぶときのポイントなど、つみたてNISAのすべてについて解説します。

1.NISAは1年ごとに口座の切り替えができる!NISA口座の変更方法

NISA制度が始まった当初は、年間買付限度額は100万円で、最長4年間は金融機関を変更できませんでした。しかし、2015年からは1年ごとに、「一般NISA」と「つみたてNISA」で口座を切り替えることができるようになりました。ここでは一般NISAからつみたてNISAへ口座を切り替える方法と、金融機関を変更する方法を紹介します。

1-1.どちらを選ぶ?変更する?一般NISAとつみたてNISAの違い

一般NISAとつみたてNISAの違いをまとめると以下のようになります。

▽一般NISAとつみたてNISAの違い

一般NISA つみたてNISA
課税制度 非課税 非課税
投資対象 口座を開設した金融機関が
取り扱う商品全て
(例:株、投資信託、ETFやREITなど、
様々なものに投資可能)
金融庁が定める一定の基準を満たすもので、
投資信託とETFにのみ積立投資可能
(通常買付不可)
年間投資
(拠出)可能枠
年間120万円まで 年間40万円まで
非課税運用期間 5年
※ロールオーバーで最大10年まで
20年
ロールオーバー利用 不可
口座開設可能期間
(予定)
2023年12月31日
(2024年からは新NISA開始)
2042年12月31日

※ロールオーバー:5年間の非課税期間が終了した後、翌年の一般NISA非課税投資枠へ移すこと。一般NISAの場合は合計で10年間に延長可能

おおまかにいうと、一般NISAは「投資経験者向け」、つみたてNISAは「投資初心者向け」といえます。また、つみたてNISAは、以下のような特徴から、一般NISAとは異なるメリットがあるといえます。

・リスクの低さ(リスクが低い長期運用に適した商品が金融庁によって選定されている)
・運用に手間がかからない(ファンドマネージャーが運用してくれる)
・投資対象の数が少なく選びやすい
・投資枠が小さいため負担が少ない(得られるリターンも少ないことは確認しておく)
・非課税の特典が20年という長期にわたって得られる

ですから、投資目的によっては一般NISAよりもつみたてNISAの方が適していることも考えられます。 NISAは「併用」はできませんが、一般NISAとつみたてNISA双方への「切り替え」は1年ごとに可能です。また、金融機関(口座)を変更することもできます。次の項目で説明します。

1-2.同じ金融機関内でNISAを切り替える手続き方法

2.「一般NISA」から「つみたてNISA」へ変更する方法と証券会社の選び方
〔画像出典元〕楽天証券 NISA口座(つみたてNISA/一般NISA)区分変更方法のご案内
(画像=『ANA Financial Journal』より引用)

同じ金融機関内で一般NISAからつみたてNISAに切り替える手続きは、簡単です。つみたてNISAへの「変更届」を出すだけで完了します。ここでは楽天証券の例で説明します。

(1)楽天証券のウェブサイトにログインし、「NISA・つみたてNISA」を選択→「口座開設・区分変更」を選択→「区分変更」の申込書類を請求する
(2)申込書類に必要事項を記入し、返送する
(3)楽天証券での手続き完了後、通知があるので確認する

なお、一般NISAとつみたてNISAは、年ごとにどちらかを選択することはできますが、同じ年に併用することはできません。また、その年に一度切り替えした場合、一般NISA→つみたてNISA、つみたてNISA→一般NISAのどちらも、翌年まで切り替えはできないので注意してください(2-2も参照)。

1-3.金融機関自体を変更する手続き方法

3.「一般NISA」から「つみたてNISA」へ変更する方法と証券会社の選び方
〔画像出典元〕楽天証券 NISA口座金融機関変更方法のご案内
(画像=『ANA Financial Journal』より引用)

NISA口座を開設する金融機関そのものを変更したい場合は、これまでの金融機関から「勘定廃止通知書」を取寄せると同時に、新規につみたてNISA/一般NISAを始める金融機関に、「口座開設届出書」と「勘定廃止通知書」を一緒に提出する必要があります。ここでは、「他の金融機関から楽天証券に変更する」ことを例に説明します(楽天証券の総合取引口座をすでに開設しているケース。総合取引口座を持っていない場合はNISA口座と同時に申請可能)。

(1)現在NISA口座を開設している金融機関から、「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を取得する
(2)楽天証券にNISA口座の申込書類を請求し、「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を同封して返送する。提出書類は原本のみ有効
(3)楽天証券および税務署の審査完了後、取引が可能になる。税務署の審査・開設処理は1~2週間程度かかる

金融機関変更に必要な書類は、「①NISA口座申込書(届出書)」「②勘定廃止通知書または非課税口座廃止通知書」「③マイナンバー通知届出書」の3点です。マイナンバーを登録済みの場合は、マイナンバー通知届出書は不要です。

2.一般NISA→つみたてNISAへ変更するときに知っておくべき注意点

一般NISAからつみたてNISAへの区分変更をする場合、注意しておくことがいくつかあります。この章では変更前に認識しておくべき点を説明します。

2-1.一般NISAからつみたてNISAに変更しても保有資産の売却は不要

一般NISAの資産は5年間非課税でそのまま保有可能です。たとえば、一般NISAからつみたてNISAに区分変更した場合、一般NISAで購入した商品については、5年間は元のまま非課税になります。

ただし、一般NISAで購入した商品をつみたてNISAの条件に変更することはできません。5年間が過ぎると課税対象になります。

2-2.一度でも購入すると年度途中の変更はできない

NISAの口座で1回でも買い付けを行うと、年度の途中で金融機関を変更することはできなくなります。また、一般NISAとつみたてNISA間の変更もできなくなるので注意が必要です。したがって、1月分の積み立て(初回の買い付け)が行われれば、その時点で当該年度の金融機関や口座の内容が確定することになります。

2-3.解約や利用無しでも「投資枠」の再利用はできない

一般NISA、つみたてNISAともに、非課税上限投資額が定められています。年内に使わずに残った非課税枠は、次の年に引き継ぐことはできません。また、積み立てた投信を解約した場合、その枠を再度上限額までの中に組み込む(再利用する)ことはできません。

3.「一般NISA」から「つみたて(積立)NISA」に変更すべき人とは?

つみたてNISAは、その特性である「少額からコツコツ資産を増やせる」「20年間長い間、非課税のメリットを受けられる」などから、多くの人に向いているといえます。そんななかでも特につみたてNISAに向いている人、そして、つみたてNISAに変更したほうがよい場合について考えてみましょう。

なお、どんな方であっても、突発的な事態に対応できる程度の預貯金は別に持っておくべきです。NISAはリスクが少ないとはいえ、あくまでも「投資」のため、預貯金を持たずにつみたてNISAに投資することは避けましょう。

3-1.銘柄の選び方や売買のタイミングがわからない投資初心者

つみたてNISAは、先述したとおり、「投資初心者」向けの商品です。以下、特徴を確認しておきましょう。

・リスクが低い:投資信託を中心に、リスクの低い長期運用に適した商品が金融庁によって選定されている。基本的に積立投資を行うしくみ
・運用に手間がかからない:上記のとおり、商品自体の安全性に加えて、ファンドマネージャーが運用してくれるため積立をするだけでよい
・投資対象の数が少なく選びやすい:上記に加えて対象が絞り込まれているため、どれを選べばよりよく運用できるか迷う必要があまりない
・投資枠が小さいため負担が少ない:ただし、得られるリターンも少ないことは確認しておきましょう
・非課税の特典が20年という長期にわたって得られる

もちろん、「投資」なのでリスクはあります。しかし、毎月決まった金額を買い続けるだけで、長期的に見ると購入価格は平準化するといえます。

3-2.給与所得のない人、少ない人(専業主婦など)

給与所得のない人や、限られている人が資産運用をする場合、ハイリスク・ハイリターン商品に手を出すことはかなり難しいでしょう。しかし現在の金利では貯蓄だけで資産を増やすことも難しいといえます。この条件の方でも、つみたてNISAならばある程度リスクを抑えながら資産運用することが可能です。

3-3.50代以降になって初めて資産運用し、老後資金準備などに充てたい人

一般的に、年齢層の高い人のほうが預貯金額は大きくなります。投資に充てる金額も大きくなる可能性があります。しかし、50代以降に初めて投資を行う「投資未経験者」の場合は、投資に慣れるためにも、初心者向けのつみたてNISAで堅実に運用することから始めるほうが適しているでしょう。老後資金を増やそうと、最初から大きな金額を投資に使うことは避けたほうがよいといえます。つみたてNISAは上記のとおり、商品のおおよそが投資信託で、投資方法も積立投資なので、分散投資を無理なく行えます。

なお、同じ非課税運用商品の場合、「老後資金」を貯めるなら「確定拠出型年金(iDeCo)」の名前を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、制度上、60歳までと掛け金の拠出できる年齢が定められているiDeCoは、50代を過ぎた方にはつみたてNISAに比べると不利といえます。