結婚して子どもを産むのがスタンダードではなくなりつつある今、私たちにはたくさんの選択肢がある。もはや結婚する・しない、子どもを産む・産まないなんて単純な話じゃない。結婚せずにパートナーと同居することだってできるし、子どもを産まずに養子を迎えることだってできる。

ただ、そう頭で理解はしていても、自分自身が“人と違う道”を進むとなると、話は変わってくる。先駆者がいないからイメージできないし、なんだか怖いような気もしてしまう。

そこで、日本の家族の変遷と今後についての考えをまとめた著書『家族終了』を刊行した酒井順子さんと、“未婚のプロ”であり、ラジオ番組や雑誌で数多くの女性たちの悩み相談に答えてきたジェーン・スーさんの元を訪ねた。

“幸せな家族像”は幻想。一つの正解を求める癖は改めた方がいい【酒井順子×ジェーン・スー】
(画像=酒井順子さん(写真左)
1966年、東京都生まれ。高校在学中から雑誌にコラムを発表。立教大学卒業後、広告会社勤務を経て執筆に専念。2004年に『負け犬の遠吠え』(講談社)で婦人公論文芸賞、講談社エッセイ賞を受賞し「負け犬論争」を呼び起こす。著書に『ユーミンの罪』(講談社)『地震と独身』(新潮社)『子の無い人生』(KADOKAWA)など多数。最新刊は変わりゆく日本の家族スタイルを論じた『家族終了』(集英社)
ジェーン・スーさん(写真右)
1973年東京生まれ。コラムニスト/作詞家。著書に『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)、『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社)などがある。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のパーソナリティを務める。最新刊は『私がオバさんになったよ』(幻冬舎)
Twitter:@janesu112 ラジオ:『ジェーン・スー生活は踊る』、『Woman type』より引用)

2人ともパートナーと長く生活を共にしているが、籍は入れていない。「結婚して子どもを産む」という従来のスタンダードとは異なる道をゆく酒井さんとスーさんに、働く女性たちの「結婚する・しない/子どもを産む・産まない問題」を相談してみた。

「結婚する・しない」を決めずにいたら、なんとなく今の生活にたどり着いた

−−お二人とも籍を入れずに、パートナーと長く同居されていますよね。籍を入れないことに何か理由はあるんですか?

酒井さん(以下敬称略):結果的に今の形になっただけで、これといった理由はないですね。

ジェーン・スーさん(以下敬称略):私も完全に結果論です。そもそも「決める」ことが得意ではないんですよ。これまでもこの先も、ビジョンや計画のようなものがない。だから今だって結婚しないと決めたわけではないんです。「結婚する・しない」を決めずに流されていくと、こういう中洲にたどり着くんでしょうね。酒井さんはパートナーと入籍する・しないについて話し合いをしたことはありますか?

酒井:ないですね。相手も特に入籍したいと思っている感じはないですし、本当になんとなくでここまで来たという感じです。

ジェーン・スー:『家族終了』の中に、入院する時に籍を入れておいた方が何かと都合がいいから入籍した、という熟年カップルのエピソードがありましたよね。そういうのもいいなと思いました。利便性を考えると、籍を共にしておいた方が楽だよねっていう選択。

酒井:スーさんは“内縁おじさん”とは何年くらい一緒にいるんでしたっけ?

ジェーン・スー:30代終盤からだから、7年くらいですかね。

“幸せな家族像”は幻想。一つの正解を求める癖は改めた方がいい【酒井順子×ジェーン・スー】
(画像=『Woman type』より引用)

酒井:私も今のパートナーは30代末期からの付き合いです。そのくらいの時期ってなんというか……ねぇ?(笑)

ジェーン・スー:分かります、いろんなものに対して「もういいかな」って思う時期ですよね。30代前半は、結婚ができない自分は不完全な人間だと思っていたんですよ。一生に一人の人として誰からも選ばれないだなんて、何か欠陥があるんじゃないかって。でもだんだんと、それで特に問題はないと気づいたし、そこまで自分が結婚したいと思っていないことに気づいた(笑)。

酒井:40代が見えてくると、「普通の道を歩まなくても別にいいか」みたいな気持ちになるんですよ。子どもを産むこともほぼないだろうという気持ちにもなってきて、「まっとうな道」に対する諦めや踏ん切りがつくのかもしれないですね。しかも、「まっとうでない道」は思っていたよりも楽しい。普通の道から外れるのは怖くないっていうことは、まずお伝えしておきたいですね。

ジェーン・スー:アラサーの人たちから見たら異形の人に見えると思うんですけど、恐れることはないですよ。

「子どもがいないこと」をいつか後悔するときはくる

−−お二人のような生き方も全然アリだと思う一方、親や友人から「結婚したら?」「子ども産んだら?」とプレッシャーをかけられることもあります。そんな中で“普通の道”から外れるのは結構しんどいような……。

酒井:昔も今も、その辺は変わってないんですね。同じ道を皆が通ってきている。だからあなたも我慢しなさいとは言えないですけど、私はそういう外圧があること自体は悪いことではない気もしています。

“幸せな家族像”は幻想。一つの正解を求める癖は改めた方がいい【酒井順子×ジェーン・スー】
(画像=『Woman type』より引用)

ジェーン・スー:酒井さんは著作の中で一貫しておっしゃっていますよね、親や周囲からの圧がないとなかなか結婚できないし、それ自体は悪いことではないと。裏を返せば、現代の女性にとって、結婚は「自発的に飛び込みたくなるくらい良いシステム」ではないんだと私は思うんです。新刊の中にも「無理をしないと家族は作れない」とありましたが、同感です。

よほど結婚への憧れがない限り、特に都市部で働いている女性にとって、仕事と結婚・出産の相性は決して良いとは言えない。相手の家から期待される“嫁プレー”の負荷もあります。そう考えると外圧でもない限り、なかなか結婚に踏み切れなくて当然だと思います。「つがう」のは生きていく上で重要だけれど、結婚の動機になることってなかなかない。

酒井:子どもが欲しいと思ったときに、結婚に気持ちが向くのは自然ですよね。結婚してから子どもを産むことが一番ノーマルであることは、これからも変わらないでしょうし。「外圧」がなかったら、そちらの方へ進む人はますます減るのでは。

−−子どもが欲しい・欲しくないっていうのが定まっていればいいんですけど、自分の気持ちがはっきり分からない女性は意外と多いと思います。子どもがいなくても、人生は楽しめますし。ただ、今そういう判断をして子どもを持たずに生きていったら、いつか後悔するのかなぁ……なんて考えてしまいます。

酒井:子どもの存在感は、年齢によって全然違ってきます。若い時は子育ての大変さが目立つので「いなくてよかった」と思いがちですが、子供が育ってくると、今度は頼もしい存在になります。今、私の友人の子供達は成人しつつありますが、立派に育ちあがった子供達を見ていると「それに比べて私は」などと思ったりもする。それをどうにか言い訳しながら生きているわけで、だからこそ私は、産むことができる日年齢の人には軽々しく「産まなくてもいいんじゃない?」とは言えないですね。

ジェーン・スー:私も今のところ後悔はないですけど、いつかする時がくるのかもしれないと、覚悟はしています。先日出した新刊『私がオバさんになったよ』の中で酒井さんと対談させていただいた時に、「子どもがいなくて手が空いているのなら、親のいない子どもの援助をした方がいいんじゃないかって気持ちに駆られる」と話しましたけど、そういう罪悪感はありますね。

ただ、私はどこまで煮詰めても利己的で、自分が一番なんです。だからもしパートナーが産んでくれるんだったら、多分私は軽々しく「子ども欲しい」って言ったと思うんですけど。

酒井:私も、自分が男だったら、相手に何人でも産んでほしい。

ジェーン・スー:子どもは好きですが、自分のお腹の中で人間を育て、産んで、育てて、という流れをイメージできないままこの年になりました。酒井さんも自分の中に無償の愛みたいなものがないっておしゃっていましたね。

酒井:そうなんですよ。植物であろうと動物であろうと、「育てる」ってことが苦手です。

ジェーン・スー:それに関して後ろめたさみたいなものはあるんですか?

“幸せな家族像”は幻想。一つの正解を求める癖は改めた方がいい【酒井順子×ジェーン・スー】
(画像=『Woman type』より引用)

酒井:めちゃくちゃあります。「育てる」ことは私に全く向いてないので、そういう意味では子どもを産まなくて正解だったとは思いますけどね。

ジェーン・スー:30歳前後の時は、世の中の人が子どもを持たない理由がこんなにたくさんあることを、全く想像していなかったんですよね。欲しくてもできない人もいれば、向いてないと判断をした人もいるし、私のように自分最優先でいたらいつのまにか、という人もいる。当時は「子どもは持たなきゃいけないもので、いずれは持つもの」って考えだけがあって、そこにたどり着くステップをどうして踏めないんだろうってモヤモヤしていたような気がします。