NHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』第12週、「逆転しない正義」が始まりました。今週は戦争かぁ、というわけで、前作『おむすび』で「今週はコロナかぁ」と、なんとなく身構えていた時期を思い出しましたね。ついでに、紙芝居のことでなんやかんや言ってる嵩(北村匠海)を見ていると、大量にコロナの重症患者が搬入されてくる横で「おかずはタラか、サケか、ふりかけはどうするのか」と深刻な顔で悩んでいたバインダー姫を思い出します。
『あんぱん』史実をなぞるだけ
いや、この宣撫班というのはプロパガンダ部隊であって、戦地における重要な役割であることはわかるんですけど、重要な役割であるわりに扱いがユルいんだよな。
まず宣撫班に配属される段取りですけど、八木ちゃん(妻夫木聡)の似顔絵がきっかけだというんですね。小倉からの出陣前夜、嵩が描いてあげた似顔絵を八木ちゃんは大事に中国まで持ってきたということです。その画用紙には折り畳んだ跡すらない。クリアファイルに入れてきたとしか思えない。連隊はけっこうハードに山道を歩いたり伏せたりしてたみたいだけど、ずいぶん丁重に持ってきたんだな、八木ちゃん。嵩のこと好きすぎるだろ。
で、その八木ちゃんは到着早々、軍曹殿にその似顔絵を見せに行ってる。ものすごい敏腕マネージャー、24時間365日、嵩のためだけに奔走してる。嵩がほかの塹壕掘り部隊にやっかみを言われていたら、フォローまでして見せる周到ぶり。このあたりで、八木ちゃんが嵩に熱烈片思いをしていて、嵩がそれに気づかない鈍感系主人公に見えてくる。
嵩が絵が上手いから宣撫班へ、という流れをなんとか飲み込んでみると、今度は村人が従来の紙芝居に反発している様子が描かれる。
村人をプロパガンダしていくために講話や歌だけでなく紙芝居もやってみよう、というアイディアがあって、描き手がいないから嵩をスカウトしたならまだわかるんです。けど、桃太郎の紙芝居を描いた人がすでにいたわけですよね。お話はどうか知らんけど、とりあえず桃太郎の紙芝居のイラストはよく描けてたじゃんね。村人が反発したのは画力の問題じゃないよね。そりゃ嵩のモデルのやなせたかし大先生が稀代のストーリーテラーであることを私たちは知っているけれど、この時点で似顔絵1枚を根拠に嵩を宣撫班に引き入れる理由がないんです。桃太郎チームが村人の反発を買ったのは嵩に宣撫班加入が命じられた翌日ですから、代替のイラストレーターが必要な段階でもない。