水沼貴史「監督業には覚悟が必要」現在は解説者として活躍中
(画像=『さくマガ』より引用)

水沼貴史 最後の試合

チームを引き継いだ後、最初は岡田さんのシステムを継承して3バックの3-5-2をやったんですけど、途中で4バックに変えたんです。選手の「個」が強いから3バックが出来てたんですけど、あるとき「見ている人は楽しくないんじゃないか」と思って。 決定的に「これは3バックをやめたほうがいい」と思ったのは、ビッグアーチでやった広島とのアウェイの試合で、結果は0-3でした。

試合後にその試合を映したスカウティングのビデオを1人で見たんですけど、スピードが感じられないんです。飛行機が近くを飛んでいるとすごく早く感じるじゃないですか。でも遠くを飛んでいるとすごく遅く感じますよね。ビッグアーチはトラックがあって観客席から遠いから、すごくスピードがないとゆっくりした、面白くないサッカーに見えたんです。

日産スタジアムだと遠いところもあるけど近い部分もあってそこまで感じてなかったんですけど、このビッグアーチの経験で、これは変えたほうがいいと。 それで4バックにしてコンパクトにして、どんどんハイプレッシャーをかけて、早く攻める形にしたんです。

最終節は、「イビチャ・オシム」監督の息子の「アマル・オシム」監督が率いていたジェフとの試合で、すごくいいサッカーができて2-0で勝ったんです。それが僕が指揮を執った最後の試合です。最後に何かその年を完結出来た気はしました。やっぱりこれだって。監督と選手はドライな関係じゃないといけないと思うけど、若い選手たちにアプローチしてたことが伝わってた気がして、すごくうれしかったですね。

当時若手だった選手が今、あのときにやってた練習や雰囲気がよかったみたいなことを言ってくれて、短時間だったけど、自分の中では間違ってなかったのかなって。 結局、僕の成績は7勝1分7敗のイーブンだったんです。前年と同じ9位でした。とりあえず責任は果たした気がします。勝ち越せれば良かったけど、さすがにそこまでは出来なかったですね。

延長オファーを断った理由

監督としての延長オファーもあったんですけどね。でも自分としてはいろいろな理由があって断ったんです。その一つは、コーチに戻ってもう一回若い選手を見させてほしいから。思ってもいなかったところから監督になったんですけど、それなりに成績を残したから、翌年も監督をやったら次は自分のやりたい形でチームを作れる、ゼロからもう一回スタートできる。そういう部分で、延長オファーの魅力はありました。

でも、僕が現場に入った最初の理由は、マリノスの過渡期に若い選手たちを育ててスムーズに移行させるためだったし。3年ぐらい若手をちゃんと見て、そこからチャンスがあったら監督になりたい、という思いがあって。だからもう一回コーチに戻って、そこから自分なりに選手たちと付き合いながら成長していきたいって、そんな考えでいたんです。

ただ、2007年は2006年よりも難しかったですね。いろんな選手がチームを離れて、作り直しでしたから。練習場も戸塚から「みなとみらい」に移って、社長も代わって。 早野さんが監督になって「高橋真一郎」さんがコーチに入って、僕は若い選手を見るというイメージだったんですけど、ちょっと難しかったな……。

結局、その年の監督とコーチ陣は1年で終わりでしたから。さすがに「なんでだ?」って、不思議に思ってました。よくわからなかったですね。

水沼貴史「監督業には覚悟が必要」現在は解説者として活躍中
(画像=『さくマガ』より引用)

乾貴士の感性

その年でよく覚えてるのは乾貴士ですね。練習終わってもよく話をしていました。乾はシュートもうまいしドリブルはあるし、ファーストタッチがうまいんです。けど、自分だけの感覚でプレーすることがあって、ボールロストすることが結構あったんですよ。

それを直したほうがいいか、乾の感性を生かしたほうがいいか。直しすぎると選手の特長を消しちゃうのでよくないんです。でもボールを失うというのはチームとしてデカいミスなんですよ。悩んだんですけど、もう少し精度を上げたほうがいいと思って、乾とはパスの練習を何回かやったんです。

その後の乾にいきたかどうかわからないですけど、感覚的な部分と精度を求める部分の折り合いをつけるというか、そういうのは僕にも乾にも勉強になったと思います。

いろんな選手をどう育てるかという練習はいっぱいやりましたね。小宮山尊信とはクロスの練習を繰り返したし、天野貴史とか田中裕介とか長谷川アーリアジャスールとかとずっと練習していました。

あるとき、トップに入っていない若い選手たち中心で香港に遠征したことがあって、そのとき僕が監督で行くということになったんです。乾を連れて行きたいと思ったんですけど、早野監督はトップで使いたいということで連れて行けなかったんですよね。

香港って結構熱いんですよ。応援とかね。あの遠征、一緒に行った選手たちはすごく覚えているようなので、乾にも経験させたかったですね……。

一番大切なのは「鈍感力」?

監督をもう一回やりたいという気持ちは当然あるし、それを持っていないとサッカーに対する熱はなくなってしまうと思います。ただ、監督ってキツいですよ。半年でも思いました。みんなすごいなって。

監督って、堂々としている部分がなきゃダメだし、何を言われても自分を律して、はねのけられる精神的な強さもいると思います。そして一番大切なのは「鈍感力」かなと思うんですよね。

なんだかんだ言われて、それを全部受け入れてしまっては、たぶんやっていけないですよ。だから監督をやってる人はすごいと本当に思います。

デリケートな人、センシティブな人は難しいと思うし、考え過ぎちゃったらとことん深みにはまると思うし。 S級ライセンスを取ったときの同期だった「ポイチ(森保一 日本代表監督)」は、「感じてるんだけど感じない」という能力を持ってると思うんです。

そうじゃないと代表監督は絶対無理ですよ。 岡田さんも今はワールドカップに初めて出た1998年ごろの話を普通にしているけど、あのときなんか、自宅にパトカーが24時間警備で付いていたんですからね。もし自分の家がそんなになったらと思うとゾッとしますよ。

監督という職業は魅力的ではあると思うけれど、覚悟が必要だと思いますね。自分だけじゃない、自分の家族も、選手も選手の家族も、チームに関わってるスタッフ、サポーターも、たくさんの人を自分の一つの采配で変えてしまうことになる。いいこともあれば悪いこともある。それをすべて覚悟してやる職業なんだと。

監督と選手との関係

それから、選手との「線」の引き方も考えなきゃいけないですからね。クラブもいろんな形が出てきて、どんどんJリーグは変わっていってると思いますし、時代も変わって、選手が自分をどう分析するかとか、インターネットでいろんなデータが見られるし人の意見も聞けるし。

今は選手以外の人が強くなったとも思います。選手を囲んでいる人たち。どのクラブもその影響力は相当大きい気がします。そしてクラブはそっちの人たちの声をすごく考えると思います。ステークホルダーって考え方は昔はあんまりなかったですからね。

だけど本当は、選手にとって大切なのって監督が指向しているサッカーや、勝つために必要なことをどれだけ遂行できるかってことなんですよ。そのためには監督と選手はちゃんとコミュニケーションとらなきゃダメだし、そういう人と人とのつながりの部分って昔から変わらないと思います。

だから僕はずっと話をしていきたいと思うし、選手たちにはしっかりコミュニケーションをとれる人であってほしい。何でも「ノー、話が違う」というのではなくて、話をしてみるとか、そういうのが必要だと思います。

水沼貴史「監督業には覚悟が必要」現在は解説者として活躍中
(画像=『さくマガ』より引用)

水沼貴史の「やりたいこと」

今やりたいことは、サッカーの環境をもっとよくしたいということですね。環境というのは選手たちの待遇面もそうだし、サッカーの質、日本代表の質を上げるということもです。もっと進化させていく、変えていくためにメディアは大事だと思います。

もっとサポーターの人たち、サッカーに関心がある人たちを増やしていかなければならないと思うし、そのためにはプレーを伝える側がどうメッセージを発信できるかというのが大事になってくると思うんです。

僕は今、そういう役割にいます。最初に10年メディアの仕事をやって、そこから現場をやって、またメディアの世界に戻ってきたというので、どうやればいいのかすごく考えてるんです。しかも、テレビだけじゃなくてネットでサッカーを見るとか、観戦の方法も変わってきているから。

今、僕は自分個人じゃないんですよね。クサいんですけど、自分が「何かになりたい」とか「何かをしたい」じゃなくて、今の日本のサッカーの状況をもっとよくするために自分は何ができるかを考えて、それをやることが自分のやりたいことになってるのかなって。

もう来年60歳なんで、普通だったら定年で再雇用されるという年齢になっています。そう考えると、今の立場は定年を自分で決められるし、永年勤続で仕事ができるという立場なので、そこは幸せなんですけど。

でも、視聴者の人たちに飽きられないように自分で進化しながらやらなければいけないと思うし、メディアの変化に対応しなければならないと思うし。そのために今は努力を続けています。

やりたいことを実現するためには健康が必須

「自分がやりたいこと」を実現するためにやっていることは「健康」の維持です。食事も大切ですけど、一番は体重管理です。体重の管理はずっと続けている簡単な健康法です。 まず体重計を買う。そして毎日乗る。太ったから乗る、太ったから知りたくない、じゃない。毎日乗る。出来れば同じ時間、食事前、お風呂入る前、とか。体重計は出しておく。隠さない。片付けない。

体重の変化があれば、そこには原因があると思うので、それが食べ過ぎたか、飲み過ぎたか、それを自分で考える。今日は太っていたんだけど、そんなに食べていないと思ったら、前の日とか、その前の1週間を振り返る。

そういう変化を自分で知ると、今日は何をしなければいけない、何を控えなければいけないかがわかってくるんです。そうすると体重が安定してくる。そして急に体重が減ったりしたら、どこかおかしいって自分でわかるんですよ。そういう何かしらの変化に気付くことができるかというのが一番大事だと思うんです。

だから僕は知り合いが結婚したとき、2組ぐらいに体重計を贈りました。旦那さんと奥さんと両方乗れって。お互いを大好きな気持ちを何十年もキープするには、まず体重をキープすることが第一だって。

奥さんは旦那さんがご飯をたくさん食べてくれるとうれしいだろうけど、太ってしまったらイヤじゃないですか。そんなときは旦那さんが運動して体重キープするとか。そういうのがいいんじゃないかなって。 毎日体重を量るっていうのは、すごく効果的だと思います。ぜひやってみてくださいね。

水沼貴史「監督業には覚悟が必要」現在は解説者として活躍中
(画像=『さくマガ』より引用)


提供・さくマガ(「やりたいこと」を「できる」に変えるWEBマガジン)

【こちらの記事も読まれています】
生産性向上の方法とは? 3つの具体的施策と2社の成功事例から考える
男性の育休について、男性育児休業取得率から考える
ブラック企業ものがたり。アンガーマネジメントを全て間違えてた課長
フレックスタイム制とは? さくらインターネットでの導入事例を紹介
パラレルキャリアとは? パラレルキャリアのメリットや実践での注意点を解説