まずは、傾聴。8割以上「聴く」ことを目標にする。

さくらインターネットES本部 人材支援グループでマネージャーをしている矢部です。

前回の「1on1ミーティングとは? 人事マネージャーが伝える心得 準備編」に続いて、今回は実践編をお届けします。

1on1のベースは傾聴です。傾聴とは、耳を傾けて心で聴くという意味。

以前、当社で1on1のアンケートをとった際、「上司が9割話していて辛かった」というコメントがありました。そうならないためにも、まずはメンバーの話を聴くことからはじめましょう。

うなずく、あいづちを打つ

メンバーの話や表現に対して、それを否定したり、批判したり、疑念を挟んだりせずに傾聴しましょう。そして傾聴していることをメンバーに伝えるために、うなずきやあいづち、そのほか言語的、非言語的な表現を繰り返すことが大事です。

まずはメンバーの話をありのままに受け止め、自然で落ち着いたタイミングで、心のこもったうなずきやあいづちを全身で返すようにしましょう。

オンラインの1on1では、雰囲気などの非言語の情報を受け取りにくくなりました。より意識して態度で示すことが重要になります。

キーワードを伝え返す

メンバーが話す言葉の中で重要なキーワードや、独特の言い回しを伝え返します。これはオウム返しとも言われますが、単に機械的に言葉を繰り返せばよいというものではなく、メンバーが話していることを正確に理解し、キーワードや言い回しを中心にして伝え返すことが大切です。

伝え返しはメンバーにとって、テニスの壁打ちのような役割を果たします。

自分自身で壁に向かって不満や不安を吐き出し、壁に当たって跳ね返ってくる、そして、なぜこう思うのだろう? と内省する循環が回るのです。

具体化する

「○○っていうのは?」「もう少し詳しく教えて?」こう問いかけることで、より具体的に説明をしようとする中で、自分の内部を探索し始めます。

要約する

メンバーの話が一段落したと感じた時に、「私は○○と理解したのですが、△△さんの言い方でまとめるとどうなりますか?」と問います。

要約は上司の完璧な理解を示すための行為ではなく、メンバーが違和感に気づき、言い直そうとすることで自分が言いたかったことの本質に迫っていくことができます。

1on1の流れ

1.初回の1on1で伝えること

まず目的と背景を伝えます。そのうえで、メンバーに「1on1をどんな時間にしたいですか?」と問い、対話の中で合意形成をおこないましょう。「100%あなた(メンバー)の時間であること」を伝えることも大切です。

毎回、少なくとも8割はメンバーが話せるようにしましょう。

2.チェックイン(はじまりは感謝と称賛)

続いて前回の振り返りと感謝と称賛をします。

「前回は●●の話をしてましたよね。やってみてどうでしたか?」

など、1on1をポジティブな気持ちで始められるよう、メンバーがやってみたことを共有し、感謝や称賛の気持ちを伝えましょう。どんなに小さなことであっても、プロセスと行動そのものに着目することがポイントです。

1on1のはじまりとおわりは、感謝の気持ちを伝えましょう。

3.アジェンダの確認

1on1をはじめる前に「今日は何か話したいことはありますか?」と問いかけます。メンバーがどんな時間にしたいのかを自分で選択することが1on1のスタートです。

1on1のアジェンダは大きく分類すると「課題解決」か「キャリア相談」にわけられると思います。業務の進捗報告だけ、または雑談だけの時間になることは出来るだけ避けましょう。そうならないためにも、初回で1on1の目的の合意形成をおこなうことが重要になります。

「課題解決」は、社内調整がうまく進められず悩んでいる、仕事の進め方がわからなくて悩んでいる、目標や期待値に対して自分がパフォーマンスを出せているのか悩んでいる、など。

「キャリア相談」は、今の仕事と自分の目指す道とのギャップに悩んでいる、自分の目指す方向性が定まらず漠然とした焦りがある、などです。

コミュニケーションの手法としては、傾聴をベースとして、3つの手法を用いると効果的に進められるかと思います。

  • ティーチング:自分の経験や専門性をもとに、相手を指導すること
  • フィードバック:客観的に見て、良かった点や改善点を伝えること
  • コーチング:未来に向けて相手の行動変容を促すために支援すること

3-1,課題解決の場合

困っていることや支援が必要なことを具体的に聞きます。

特に目標や期待値が設定されている場合は、目標や期待値に届かない理由、解決策、支援策についての話を具体的におこないます。

そのうえで課題を解決するためのアクションまで決定します。

・ティーチング

社内ルールのように上司が答えを持っていて、かつ部下にとっては単に知っていればよいことについては、ティーチングを用いて指導をします。例えば、稟議申請の仕方、コンプライアンスに関わること、資料の格納先などはティーチングのほうが早いということになります。

・フィードバック     

1on1ミーティングとは? 人事マネージャーが伝える心得 実践編
(画像=『さくマガ』より引用)

1on1においてのフィードバックとは、ひとつは、上司がメンバーに期待する仕事の水準と、メンバーの行動や成果のギャップを示すこと。もうひとつは、上司や周囲からメンバーがどう見えているのかを伝えることです。

ここでは、耳の痛いことでもメンバーにしっかり伝えてメンバーの成長を立て直すことが求められると思います。どう見えているのかを伝えることは、他人は知っているが自分は気づいていない「盲点の窓」に該当し、メンバーの成長を大きく後押しするきっかけになることもあります。

5年ほど前に、副社長から「僕は矢部さんを天性でコミュニケーションができる人だと思う。だからコミュニケーションについて学んだことがないのではないか?」

とフィードバックを受けたことがありました。ポイントは、アイメッセージで伝え、問いを立てることです。

アイメッセージ(僕は)+問い(学んだことがないのではないか?)で私の盲点の窓が開きコミュニケーションについて学ぶきっかけを得ることができました。

それまでコミュニケーションであまり苦労をした経験がなく強みだと思っていた私は、コミュニケーションについて学ぼうとは考えもしませんでした。「強みが覆い隠してしまっている弱み」は現象としては弱みが発現していないため自分で気づくことはできません。

そこから私は、自己研鑽として、ワークショップ、クリティカルシンキング、コーチング、カウンセリングなどを自ら社外に出て学びました。

それまでなんとなく強みでやれていたことの裏付けとなる理論や実践方法を体系的に学ぶことで、より効果的に実践に繋げられるようになったと思います。副社長のフィードバックがなければ、コミュニケーションを学ぶことはなかったと思います。

・コーチング

仕事の課題の多くは、仕事そのものより、対人関係の悩みであることが多いように思います。

「仕事が難しく思うように進まない」と相談をしてきたメンバーに、「進まない理由はなにか?」と尋ねると、多くの場合、チームメンバーがやってくれない、意見が合わずに前に進まない、など対人関係の課題に直面します。

もちろん、ハラスメント行為など状況が酷い場合は、上司が介入しますが、それ以外の対人関係の課題は、上司が介入することで更に関係が悪化することのほうが多いのも現実です。

「目標や期待値に対しての今の状況は?」

「何が解決したら、仕事がうまく進むのか?」

「チームメンバーとどのような関係性で働けたら仕事が進むのか?」

「本当はどんなチームで働きたいのか?」

「そのために自分ができることはなにか?」

私たちは、仕事をしている以上、会社の内外問わず、誰とも関わらずに仕事をすることはできません。

また、他者を変えることもできません。

だからこそ、働くうえで繰り返し起きる対人関係の課題解決においては、メンバー自身の行動変容を促すために上司が支援することが重要だと思います。