どのくらい差が出るのかシミュレーションすると?

――仕事を続けた場合と辞めた場合の収入の差は、実際にどのくらいあるのか教えてください!

厚生労働省の「平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況」によると、平均婚姻年齢は29歳です。29歳から年金受給資格発生の65歳になるまでの36年間の収入を比較してみましょう。

例1:ずっと正社員として働き続ける
女性の年齢別平均年収から収入合計を算出(※)
29~64歳までの平均手取額合計(所得税・社会保険控除後)→9600万円

※厚生労働省「平成29年雇用形態別の賃金」をもとに試算

例2:正社員→結婚を機に専業主婦
29~64歳までの手取額→0円
 
例3:正社員→結婚を機にパートタイム(配偶者の扶養に入る)
以下のケースで手取額を試算します。

  • 29歳で結婚し、1年間は配偶者特別控除が一番多い150万円をパートで得る
  • 30歳で出産し、44歳まで時間を制限してパートで年間100万円を得る
  • 45~64歳まで年間150万円のペースにもどしてパートで働く 29歳:150万円/年×0.8=120万円(所得税・社会保険控除後)
    30~44歳:100万円/年×15年間→1500万円(非課税)
    45~64歳:150万円/年×20年間→3000万円×0.8=2400万円(所得税・社会保険控除後)
    29~64歳までの平均手取額合計(所得税・社会保険控除後)→4020万円

    平均婚姻年齢の29歳から年金受給資格発生の65歳になるまでの36年間、正社員として働き続けた場合、収入の合計は約1億2千万円にもなります。そこから税金と社会保険料の合計を約2割としても手取りの総額は9600万円となります。

    一方、結婚を機にパートとして働き、妊娠・出産や子どもの年齢で働き方の変化を想定して算出した場合、このケースの収入の合計は4650万円となります。150万円の収入のある年は、所得税が課税され、さらに社会保険加入が義務となるため収入の約8割が手取りとなります。その結果、手取りの合計は4020万円となりました。

    結婚後も引き続き正社員として働くと、途中で出産や育児休暇などで多少の減額があったとしても、専業主婦をずっと続けた場合との差は9600万円、パートで働いた場合との差でも5580万円となりました。
     

――具体的な金額にすると、差が大きいですね。

この差をどう捉えるかは、お金とそれ以外の時間やゆとりとの比較となるので、それぞれの価値観によるところも大きいかと思います。

「結婚イコール寿退社」と結論を出す前に、結婚後の出産・妊娠の時期、子どもの教育方針(学校は公立か私立かなど)、住宅は賃貸のままか購入するのか、また購入するとしたらいつ頃どの程度の物件を購入するのかなど、一度ライフイベントをもとにキャッシュフロー表などを作成して、パートナーとじっくり相談しながら決めていくと良いのではないでしょうか。

人生100年時代をみすえた計画が重要

――ファイナンシャル・プランナーの視点で、結婚を機に仕事を辞めることはどう見えるのかアドバイスをお願いします!

内閣府の「結婚・家族形成に関する意識調査」や厚生労働省の「婚姻件数、出産率の推移」などによれば、結婚観だけでなく、結婚を機に女性が仕事を続けるか仕事を辞めて専業主婦になるかなど、価値観が時代とともに変わってきていることがわかります。

少子高齢化で労働人口の減少が危惧される面もあり、結婚を機に一度専業主婦になった人が子どもの成長とともに社会復帰を果たす機会も増えてきました。

さらに少子高齢化により将来の社会保障に対する不安や、教育費が高止まりしていることなどを考えると、働ける環境のあるうちは少しでも収入を増やし、不測の事態や将来へ備えることが必要となってきます。

また、普段から家計の管理を強化し生活するための費用をしっかりと把握することも大切なことです。結婚後は、出産・妊娠、子どもの教育費や住宅購入などライフイベントも目白押しです。つい目の前のことに気を取られがちですが、子どもが巣立ち、ようやく子育ても終わったとほっとしたのも束の間、その後はすぐに夫婦の老後が待っています。

人生100年時代と言われる中で、お金の不安で身動きがとれなくなることがないよう、明るい将来のために計画的に過ごしていきたいものですね。
 

――ありがとうございました!

正解はない。大切なのは……?

(写真=marekuliasz/Shutterstock.com)

人によって、家族や仕事に対する価値観はさまざまです。育児に専念したい期間、親の介護に専念したい期間など、ライフステージによって優先順位は変わってきます。結婚を機に仕事を辞めて収入減になったとしても、時間にゆとりができて得だと考える人もいれば、収入も生きがいもなくなって損をしたと思う人もいるでしょう。

大切なのは、結婚を機に仕事を辞める決断をする際に、どのようなことが起こりうるのかメリットやデメリットを整理したり、他の選択肢がないか検討したりすることです。そして、結婚して仕事を辞めることは、自分だけの問題ではなく夫婦の問題でもあります。仕事を辞めるにせよ、続けるにせよ、家族の協力が必要になってくるからです。

「仕事を辞めたら、お金の問題はどうするか」「仕事を続けるなら、家事の分担はどうするか」など、今後のライフプランの方向性を夫婦でしっかり話し合っていきましょう。

文・和泉紫(ライター・キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)/DAILY ANDS

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