なんだか新しいことに挑戦したくなる春。お料理や手芸、スポーツや語学…いろいろと挑戦したいことはあるけれど、今回おすすめしたいのはカリグラフィー!カリグラフィーとは、古くから西洋にある文字を美しく描く手法のひとつ。その中でも、トラディッショナルなカリグラフィーをベースに、自由にアレンジしたスタイルをモダンカリグラフィーと呼びます。
今回はそのモダンカリグラフィーについて、商品やデザイン用に文字を描いたり、レッスンの講師も務められているカリグラファーの島野真希さんに教えてもらってきました。
場所や時間、時代を選ばないカリグラフィー
幼少期から書道を習っていたという島野さん。ウェディングのお仕事に関わりながら筆を使うお仕事もされていたのだそう。結婚後、出産を期に退職した島野さんは場所や時間を選ばず、時代や流行に左右されずにずっと仕事にできるライフワークを探しはじめました。その中で、「文字を書くのが好き」という気持ちが蘇り、「文字でプロになろう」と決心。
「最初は日本の文字(書道)だけでプロになろうと思っていたんですが、ブライダル業界にいた頃からの友人から『最近、アメリカのウェディングシーンで、トラディッショナルではない自由な発想で描くモダンなカリグラフィーが流行りはじめている。日本の書道だけじゃなくてモダンなカリグラフィーもやってみたら?』と勧められたんです。
その話を聞いて、ウェディングをもっと自分らしくアレンジできるツールになるかもしれない、文字でウェディングをもっと素敵に変えていけると思い、そこから学びはじめました」。
当時、日本にはまだモダンカリグラフィーを描ける人はいなかったので、アメリカで有名なカリグラフィーアーティスト、ローラ・フーパーに問い合わせてキットを取り寄せたり、ネットのオンライン動画やSNSで探して、見よう見まねで覚えていったのだそう!
トラディッショナルとモダンの違いって?
トラディッショナルなカリグラフィーは、小文字の高さ、文字の高低差、美しく見せるための傾斜というのがそれぞれ決まっているのもの。対して、モダンカリグラフィーは、高低差、文字間を自由にしてOKなのだそう。
「モダンカリグラフィーのアルファベットはアーティストによって、全然違います。トラディッショナルスタイルで描いたものは誰が描いてもだいたい同じものに仕上がり、それが美しくていいのですが、モダンはそれぞれのアーティストのスタイルによりますし、アーティストひとりでもいくつものパターンを描くことができるんです」。自由に表現できる文字、それがモダンカリグラフィーなのです。
必要な道具を揃えてみよう
必要な道具はインクとホルダー、ニブ(ペン先)と描く紙。
ホルダーはオブリークホルダーとストレートホルダーがあります。ペン先を横に挿すオブリークホルダーは持った状態で傾斜がついているので傾斜がある文字が描きやすく、ストレートは初めての方が筆圧をコントロールする感覚や、ペン先の扱い方を理解しやすいものだそう。どのくらいの傾斜で文字を書くかもアーティスト次第です。
※傾斜のある文字・ない文字はどちらのホルダーでも書くことができます。
「最初は筆圧のコントロールを覚えていくという意味では、ストレートホルダーの方がいいかもしれませんね。ただ、傾斜のあるクラシックな筆記体(カッパープレート体)を崩して描きたいという方はオブリークホルダーの方が馴染みやすいと思います」。
紙やインクは相性があり、組み合わせによってはにじむことがあるとのこと。いろいろと組み合わせを試す中で見つけていくのがよいそうです。ちなみに島野さんはトモエリバーという紙を使って練習しているとのことでした。
必要な道具が詰まったキットも島野さんは作っています。オンラインショップで購入することができるので、チェックしてみてください。
さっそく描いてみよう!
まずはペンの使い方を教えてもらいました。
ペン先にインクをつけ、真ん中にある穴にインクを溜めます。
下から上に描いていくと細い線に、上から下に筆圧をかけて描いていくと太い線になります。この筆圧のコントロールで、太い線、細い線の違いが出てくるのです。この線の使い方をマスターすれば文字を描くことができるので、まずはこの細い線、太い線の描き方を練習していくとよいでしょう。
このとき、コツは手の角度をキープすること!普通のペンとは違い、ペン先と紙の角度、ペン先の方向が変わってしまうとうまく描けないので、手と紙の角度を45°くらいにキープし、ペン先が回転しないように固定しながら描くことを意識してみましょう。焦らずゆっくり描いてみてください。
「もちろんうまくなるまでにはそれなりに時間はかかりますが、練習の成果が目に見える楽しみがあります。5分でも10分でも継続してペンを握ることが、未来につながるんだと思っています。描けるようになると、こう描きたいという思いも出てきますし、他の人の文字を見るのも楽しくなってきますよ」。
自分のアレンジを見つけるのもカリグラフィーの楽しみ
描けるようになったらやっぱり自分の文字を見つけていきたいもの。島野さんはアレンジのバリエーションをどのように作っているのでしょう?
「好きなアーティストのAからZをいろいろ見て探していますね。でも、この人のこの文字は好きだけど、この文字はあのアーティストの方が好きだな…、と組み合わせながら自分のスタイルを作っていきます。文字の書き順は決まっていますし、線の太さを見れば『こうやって描けばいいんだ』というのは検討が付きますので」。
好きな文字を見つけたり、自分なりのアレンジを探したり、自分の文字を作っていく楽しみができるのもまた、モダンカリグラフィーの楽しみなのです。
使い方は自在!ちょっと描き添えるだけでグッとおしゃれに!
描いたカリグラフィーをどのように活用しているかも気になるところ。島野さんの活用例を見せてもらいました。ウェディングやパーティの招待状やメニューカードに添えるとグッとエレガントに。シンプルなメッセージカードに少し添えるだけでも、印象が華やぎます。最近はポーセラーツなどで、陶器に描くこともあるのだそう!
カリグラフィーは旅のようなもの
最後に島野さんにカリグラフィーの楽しみや魅力を聞いてみました。
「カリグラフィージャーニーという言葉もあるんですけど、カリグラフィーは旅に近いものだと思っています。文字ってすごく自分の気持ちや感情に寄り添うものだと思うんです。自由に描くことのできるモダンカリグラフィーには、そのときそのときの自分を映し出してくれるようなおもしろさがあります。半年前に描いた文字と今描いた文字では、好きなテイストや描き方が少しずつ変化しているんですよね。それを振り返りながら見るのも楽しいですし、今後こういう風に描いていきたいというのを見つけることもできます」と教えてくれました。
また、忙しい日々の中で、文字を集中して描く時間を持つことで、リフレッシュや精神的な癒やしにもなっていると島野さんは言います。
文字は一生使えるもの。実際、島野さんのレッスンには、いくつになっても使えるスキルやもともと学んできた経験や趣味と組み合わせて使えるスキルとして学びに来る方も多いのだそう。なにか新しいことに挑戦したい春。モダンカリグラフィーに挑戦してみませんか?いつまでも使えるスキル、そして自分らしさを表現する方法として、きっとこれからの未来に寄り添ってくれるはずです。
島野真希(しまの まき)さん
習いごとの一つとして幼い頃から書道を始め、その世界に魅了され、ブライダル業界でウェディングプランナーとして在籍しながら筆を持つ仕事にも携わる。結婚・出産を機に退職後、本格的に書道家として始動。時同じくしてモダンカリグラフィーの世界を知る。まだ日本に先駆者がいないかったため、海外のカリグラファーから手ほどきを受け、独学で学ぶ。洗練されたウェディングアイテムや和と洋を組み合わせた独自の世界観に定評がある。
公式HP: Maki Shimano Calligraphy
Instagram:@mscalligraphy
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