事実婚の夫婦です。もしも会社員の夫が亡くなったら、遺産を相続できますか? また、遺族年金はもらえますか?
法律婚であれば、会社員の夫が亡くなったとき、妻は遺族厚生年金をもらえる可能性があります。また遺産も相続できます。事実婚(内縁)については、民法に明確な規定はありませんが、婚姻の意思があり、夫婦同然の共同生活の事実があることによって成立すると考えられています。   つまり、法律上の婚姻(民法742条)とは認められないけれども、届け出を出していないだけなので、婚姻に準じた状態をいいます。そうであれば、事実婚も法律婚と同じように相続や遺族年金ももらえてもよさそうです。

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内縁と相続

通常、夫が亡くなったときに、妻は相続する権利があります(法定相続分は2分の1)。
 
しかし、事実婚の妻は「配偶者」(民法900条)ではないため相続人にはなれず、内縁の夫の遺産を相続する権利はありません。当然、配偶者に認められている「配偶者の税額控除」「小規模宅地等の特例」の優遇税制は受けられません。
 
なお、事実婚の妻との間の子どもがいる場合、夫がその子どもを認知していれば、子に相続権があります(民法779条)。
 
内縁の夫に相続する人が1人もいない場合、財産は原則として国庫に帰属することになります(民法959条)。相続債権者等への弁済(民法957条)の手続きを経て残余財産がある場合、事実婚の妻は、家庭裁判所で「特別縁故者」の手続きをとることで、遺産の全部または一部を受け取れる可能性があります(民法958条の2)。
 
夫が自分の死後、事実婚の妻に財産を残したいと思うのであれば、対策が必要です。たとえば、生前に財産を贈与するという方法があります。
 
また、遺言書に、事実婚の妻に財産を遺贈する旨の記載をすることで、財産を残すことが可能となります(相続税の2割加算の対象)。事実婚の妻を死亡保険金の受取人とする生命保険に加入するのもいいでしょう。
 
ただし、非課税限度額(500万円×法定相続人数)は受けられません。これらは、夫に判断能力(意思能力)があるうちにしておきましょう(民法3条の2)。
 

内縁と遺族厚生年金