財産の遺留分をめぐる「争族」を回避したいです。「夫婦相互遺言」という方法があると聞いたのですが、どのようなものですか?
子がいない50代後半のAさん夫婦。これまで順調に資産形成をしてきて、つつましく生活すれば老後の心配はなく少し安心していますが、その財産はすべて配偶者に渡したいということです。   調べたところ、もし遺言を書かなければ民法で定められた相続分に従って相続するか(法定相続)、相続人全員による話し合い(遺産分割協議)が必要であることが分かりました。   しかし、Aさん夫婦はそれぞれの兄弟姉妹と疎遠、かつそれほど仲がよくないとのこと。そのようななかでさらに調べたところ「夫婦相互遺言」というものを知ったそうです。   今回は、「夫婦相互遺言」について見ていきます。

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もし、遺言書がなかったら……

Aさん夫婦に遺言書がなければ、法定相続分で分割します。いろいろなケースが考えられますが、A:親が存命の場合、B:親が死亡し兄弟姉妹がいる場合に分けて考えると、以下のとおりになります。

A:配偶者3分の2、親3分の1
B:配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1

それぞれ複数人いる場合は、それぞれの割合をその人数で分けます。
 
例:兄弟姉妹が2人いた場合は1人当たり8分の1、両親とも存命の場合はそれぞれ6分の1
 
もちろん、これとは別に遺産分割協議を行い、上記以外の割合で相続もできます。よって、Aさん夫婦のようなケースでは遺言書を残さなかった場合は、法定相続分で兄弟姉妹と分ける、あるいは遺産分割協議の話し合いをしたうえで分けることになります。
 
さらに、自宅のような物理的に分割できない資産に関しては共有となり、預金を下ろす場合も配偶者1人でできないことになります。また、自宅を共有しない場合には、預貯金のなかから兄弟姉妹分の遺産分を渡さなければいけませんし、現金がなければ最悪自宅の売却で渡さなければならなくなるかもしれません。
 

夫婦相互遺言とは