遠方で暮らす母に「認知症」の心配が出てきました。父がいるので母の介護は問題ないと思っていましたが、先日父が緊急入院! 母の介護に対し私はどう備えるべきですか?
親の認知症に備えるテーマとして、「介護」と「相続」があります。今回は「相続」を取り上げます。“誰がどこで介護をするのか”は喫緊の問題ですが、相続の問題も実は待ったなし。後回しにしていると後々大変なことになります。

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どうする? 母親が認知症かも

「お母さんの様子、少し変じゃない? もしかして認知症が始まったのかもしれない」妹からの電話に不安を覚えたAさんでしたが、遠方で暮らす両親を気にしつつ、そのまま過ごしていました。ところが、元気にしていた父親が緊急入院することになりました。“両親は2人でいるから大丈夫”と楽観していましたが、母親をひとりにしておくことも心配です。Aさんは介護休暇をとり、父親が退院して落ち着くまで帰省することにしました。
 
父親の術後経過は良好ですが、両親の今後を思うと悩みは山積みです。62歳のAさんは、実家近くのマンションに転居することを考え始めました。今の会社で65歳まで働くことは可能ですが、転職も視野に入れ夫婦で移住するつもりと言います。実家で同居することは考えていません。「両親2人の時は実家で、どちらかが亡くなりひとりになったら実家を売却して費用を捻出し、施設に入ってもらう」をAさんは想定しています。同様な想定をしている人はいらっしゃるのではないでしょうか。
 
この話を聞いて、「介護も重要だけど相続の準備は大丈夫だろうか?」と心配になりました。認知症と診断され判断能力がなくなると、相続の手続きも難しくなります。
 

円満家族でも遺言書は必要

一般的に「被相続人(想定されているのは父親)が認知症になる前に遺言書を書いてもらわないと、認知症になって判断能力なしと診断後に書かれた遺言書には効力がなくなるので気をつけよう」ということは一般に認識されているでしょう。ですが、残された相続人(想定されているのは母親)が相続発生時に認知症になっていることは、あまり想定されていないかもしれません。
 
Aさんの場合、将来相続の対象となる財産は父親名義の自宅不動産と預貯金です。父親が亡くなったら、母親とAさん姉妹の3人で相続することになります。