ラシク・インタビューvol.186

毎日みらい創造ラボ/毎日新聞記者 今村 茜さん

コロナ禍に一躍脚光を浴びている「ワーケーション」旅が好きなママには興味深く映っているのでは。一方で「やってみたいけれど子どもがいるし……」と躊躇する声も。

そこでLAXICでは、「親子ワーケーション」を推進する今村茜さんにインタビューを決行。毎日新聞の記者である今村さんは、4年ほど前からワーケーションに関する取材を数多く行い、ご自身もまた、3年前に初めて親子ワーケーションを経験されました。

社内新規事業「Next Style Lab」を立ち上げ、イベント等を通じて新しい働き方を読者とともに考えその後の取材に反映するなど、上手にワークライフインテグレーションを実現しています。去年は第3子となる0歳児を連れてのワーケーションにも挑戦した今村さんに、親子ワーケーションの可能性とポイントを聞きました。

初めてのワーケーションで、和歌山県白浜町へ!

今村茜さん/オンラインにて取材を行いました

編集部:今村さんが初めてお子さんを連れてワーケーションにチャレンジしたのは、2018年の夏と伺いました。 「ワーケーション」という言葉が一般的になったのは去年あたりだと思うのでかなり早い段階で行動に移されていらっしゃるなと!

今村茜さん(以下、敬称略。今村):日本航空が2017年に人事制度としてワーケーションを導入した際に、最新の働き方として取材し、記事にしたのがはじまりでしたね。私自身もやってみたいと思いつつも、当時、小学校低学年と保育園児の2人の子がいてワンオペ状態だったので、難しいなとも感じていて……

そんなとき和歌山県から、親子ワーケーションのプログラムを白浜町で行うとの発表がありました。仕事は関係なく「行きたい!」と思い、応募したんです。

編集部:記者ならではの情報収集力と行動力ですね!

今村:実のところ、小2の娘を夏休み中ずっと学童に通わせることに罪悪感もありました。何より、子どもたちに多様な経験をさせてあげたいと願っていたんです。

編集部:長期休暇の過ごし方はワーママにとって課題ですよね。実際に参加してみていかがでしたか?

今村:すごく良かったです。和歌山県のプログラムはトータル4日間で、うち2日間は子ども向けのアクティビティが用意されていました。水族館のバックヤードツアーや、海や山を楽しむプログラムなど、至れり尽くせりで。その間、親は仕事に集中できる企画でした。

編集部:それはいいですね! お子さんたちの反応は……?

今村:行く前は「知らない子たちと一緒に遊ぶなんてやだ~!」って言っていました。でも行くとお友だちができてすごく仲良くなったんです。キッズキャンプのように親元を離れて宿泊するのではなくて、数時間遊んだら親元に戻れるのも安心材料だったのかもしれません。

編集部:子どもたちが喜ぶ姿は嬉しいですね。

今村:はい。それに親同士も仲良くなれたのが収穫でした。子どもが絡むと、ビジネスライクな会話にかたよらず、より広い話題になるんですよね。プログラムが終わってからも家族ぐるみのお付き合いをしています。

編集部:親子ともに充実した時間になったのですね!ちなみにお仕事ははかどりましたか?

今村:正直、難しい面はありました。キッズアクティビティがあるとは言っても数時間で、本来の1日分の就業時間には及びません。子どもたちが寝た後の深夜や、起きる前の早朝に仕事をしたりと、仕事時間の確保は大きな課題でした。でも同時に、「せっかくお金をかけてきているのだから、早く温泉を楽しみたい!」のような気持ちもあって、仕事中の集中力は高まりました(笑)。かえって仕事にメリハリがついてプライベートの時間も楽しめ、とても良い経験となりました。

親子ワーケーション準備のポイントは「子どもを預けるか決めること」と「子どもへの声掛け」

19年夏に和歌山県で開催された親子ワーケーションの一コマ。キッズアクティビティでは子どもたちがトルコランプを制作しました!

編集部:その後、何度も親子ワーケーションを経験されたのですね。小学生低学年くらいまでの子どもを連れて行こうとした場合、考えておくべきポイントはありますか?

今村:ひとつはワーケーション中に子どもを預けるか否かですね。これはワーケーションの目的によると思っています。ライフ重視型 、つまり休暇の合間に少しだけ仕事するというのなら、預けずにスキマ時間に仕事をする形になります。一方、仕事場を普段と違うところに移して働くのが目的のワーク重視型にしたいのであれば子どもを預けられるとベターです。会社員であれば、ワーケーション日が「休み」扱いであればライフ重視型、「出勤日」扱いだとワーク重視型という区別ですね。

編集部:なるほど。ただ、ワーケーション先での子どもの預け方ってどうしたらいいのでしょう?

今村:私が2度目に行った親子ワーケーションは世界遺産の知床がある北海道の斜里町という漁師町だったのですが、そこに決めたのは児童館で小学生を預かってくれると知ったからでした。斜里町は町営のテレワーク施設がある上に、テレワーカーをサポートする有志の方々による団体があるんです。今はコロナ禍で状況が違う地域も多いですが、斜里町のように子どもを預けられる地域、白浜町のようにアクティビティのある地域は少ないながらもあります。

編集部:ということは、親子ワーケーションに積極的な地域を探すのがひとつの方法ですね。

今村:あとはワーケーション先でできた知り合いに地域のシッターさんを紹介してもらうこともあります。ワーケーション仲間と数名で行って、交代でお世話をするのもアリですね。

編集部:預け方をイメージできると、始めるハードルが少し下がりそうです。

今村:子どもに対して「ママは仕事で来ているんだよ」ときちんと伝えることも大切ですね。子どもにしてみれば「旅行に来ているのになんで仕事ばかりして遊んでくれないんだろう?」と疑問に感じるかもしれません。ですから、「旅行じゃなくてお仕事なの」と、子どもに分かるようにワーケーションについて伝えることです。

編集部:確かに、旅行とワーケーションは似て非なるものですものね。ある程度言っていることが頭で理解できる年齢であれば、そうしたことも丁寧に伝えるといいですね。

今村:最初のうちはなかなか仕事に集中できないこともあり、「ママに仕事をさせてくれないと今度から連れてこられなくなっちゃうよ」と伝えたこともありましたが、最近はとても協力的で、アクティビティなどがないときはタブレット教材で勉強して過ごしてくれています。ママがお仕事できるように協力しないと次は来られないと分かっているみたいです(笑)