まだ収束の兆しが見えない世界的パンデミック。

今後の経営の見通しがつかないことから、昨年の緊急事態宣言の際には、企業の採用活動が一気に停滞。2020年度の有効求人倍率は1.18倍と前年度から0.42ポイントも低下する結果となった。

 

一方で、キャリア不安から転職を検討する人は増加傾向にある。

今年1月に発出された2度目の緊急事態宣言以降、「転職サイト利用者や、人材エージェントに登録する求職者が激増している」と話すのは、人材紹介やコンサルティング事業を手掛ける株式会社morichの代表取締役・森本千賀子さんだ。

では、企業の女性採用には、どのような変化が出ているのだろうか。コロナ禍の転職活動だからこそ、特に気をつけたいポイントとあわせて森本さんに話を伺った。

 

森本 千賀子さん
1970年生まれ。93年、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)に入社。累計売上実績は歴代トップ。入社1年目にして営業成績1位、全社MVPを受賞以来、全社MVP/グッドプラクティス賞/新規事業提案優秀賞など輝かしい実績を残す。2017年3月、株式会社morich設立、代表取締役に就任。25年在籍していたリクルートを17年9月で卒業。同年10月に独立。HRに限定せず外部パートナー企業とのアライアンス推進などさまざまなソリューションを提供している。 Twitter: morich_Corp

 

求人数は過去最大級。企業の女性採用も活発化

――新型コロナウイルスにより各業界が打撃を受けています。昨年から今年にかけ、2回の緊急事態宣言も発出されていますが、企業の採用活動にはどのような影響が出ていますか?

2020年度の有効求人倍率は1.18倍。近年、有効求人倍率は右肩上がりに上昇し、2018年度は1.62倍を記録していたことを考えると、コロナショックで人材採用も“自粛”傾向にあったと言えます。

ただ、リーマンショック直後の2009年度の有効求人倍率は0.45倍。数値で比較すると、リーマンショック時ほどの落ち込みではないんですよね。

それに、今年に入ってからはまた、企業の採用活動が大きく動きが変わりつつあるんです。

――どういうことですか。

求人数が急増しているんです。私たちのような人材エージェントが利用するデータベースがあるんですけど、そこに登録された2021年1月の求人数は2541件。これは過去最大級の登録件数なんです。

このデータベースの登録求人数も2020年6月時点では約1400件にまで落ち込んでいたのですが、その後、毎月着実に数字を戻し続け、この1カ月で一気に200件近く増加しました。

コロナによって一時期的に冷え込んだ求人も底は脱したと見ていいと思います。

――求人数回復の背景として、どんなことが考えられるでしょうか。

まずは単純にオンライン化が進み、ニューノーマル時代の採用・研修体制がある程度整備されてきたというのが一つ。

そしてもう一つはビジネスのデジタル化が進み、企業がAIやIoTなどのテクノロジーを取り入れていく中で、それに対応する人材のニーズが増加していることです。

こうしたポジションは、求められるスキルが違うため、なかなか既存社員では埋められない。結果、即戦力として業務を遂行できる人材を、今、企業が求めているのです。

――女性採用という点にクローズアップすると、いかがでしょうか?何か変化は出ていますか?

かなり活況ですね。特にニーズが高いのがスタートアップやベンチャー企業です。

――その理由は何なのでしょうか。

コロナ以降、リモートワークが広まり、働き方が一変したことが大きいと思います。働く上で時間と場所の制約がなくなった分、子育て中の女性、地方に住んでいいる女性など、採用対象が広がったことが挙げられます。

求職者の女性も、「リモートワークで働けるなら」とマッチングしやすくなりました。そこで、さまざまな企業が全国にいる優秀な女性の採用に乗り出しているんです。

――なるほど。今後のライフイベントも考慮した上で、なるべく柔軟な働き方ができる会社で働きたい女性のニーズとマッチするようになったんですね。

そうなんです。特にお子さんを育てながらお仕事をされている女性にとって、ベンチャー企業への転職は、関心はあってもハードルが高かった。

それが、リモートワークなら子育てと仕事を両立できるということで、今まで検討外だったベンチャーを視野に入れて転職活動を行う方も増えています。

あとは社外取締役とか非常勤監査役といったポストに女性を迎えたいという企業の声も多いですね。

――昨年1月のダボス会議でゴールドマン・サックスのCEOが「女性など、多様な取締役メンバーがいない企業については、そのIPO(新規株式公開)の主幹事を引き受けない」と宣言して大きな反響がありましたよね。

今や女性活躍推進やダイバーシティは企業にとって最も関心の高いテーマ。そうした時代の流れを受けて、女性役員を増やしたいというニーズが高まっています。

コロナ禍でも採用が活発なのは、DX企業とカスタマーサクセス

――いま、中途採用が特に活発な業界はどこでしょうか。

デジタル技術を活用し、ビジネスモデルや業務プロセス、サービスや製品の改革を行う企業のことを「DX銘柄」と呼びますが、こうした企業は非常に活発です。

サブスクリプションモデル、つまり製品を売って終わりではなく、契約期間の間サービスを利用できる継続課金型のビジネスモデルに、今、世の中全体がどんどんシフトチェンジしていますよね。

こうした製品・サービスを提供しているBtoB企業は今後も業績の伸びが期待できますし、必然的に人材ニーズも上昇し続けます。

企業規模で言うなら、大手はまだ採用を抑制しているところも多いですが、スタートアップやベンチャーは採用を活発に行っていますね。

――IT・Web系の業界は専門性が高く、なかなか未経験の人が飛び込むのは難しいイメージがありますが、いかがでしょうか。

職種によりますが、業界未経験の方でも転職のハードルはそう高くはないと思いますよ。

例えば、最近需要が高まっているのが、カスタマーサクセスというポジション。この職種のミッションは、顧客がサービスを利用することで課題を解決し、ビジネスを成功に導くためにさまざまな提案や支援を行うこと。

先ほど説明したサプスクリプションモデルのビジネスをしている企業にとっては必要不可欠の職種です。

簡単に言うと、成約後のフォローアップが主な仕事。専門的なIT知識より、きめ細やかなホスピタリティーが求められます。他の業界で接客や販売といった職種経験のある方の経験が生かせる仕事です。