(本記事は、井戸美枝氏・中野晴啓氏の著書『iDeCoとつみたてNISAにダブル投資入門』、扶桑社、2018年12月7日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
定年後の生活を想像してみましょう
高齢者は今、どんな生活をしているのでしょうか。
それを知ることで自分たちの将来をイメージできるはず。
ここで具体的に自分の定年後の生活を考えてみましょう。
公的年金だけでは赤字になる生活!?
現役で仕事をしているときには、定期的に収入があるので、それだけで安心です。
しかし、定年退職後、そのままほかに仕事をしなければ、給料という定期収入はなくなります。
では、実際に定年後はどのような暮らしが待っているのでしょうか。
総務省が行っている「家計調査報告(家計収支編)2017年」を参考にしてみます。
左ページ上の「高齢夫婦無職世帯の家計収支」(夫が65歳以上、妻が60歳以上)では、高齢夫婦の1か月の平均収入は、公的年金など社会保障と民間の保険などで、約21万円です。
支出は税金など削れない部分が約3万円、そのほかの生活に関わる支出の合計が約23万5000円となっており、ひと月の支出は総額26万5000円です。
収入は21万円なので収支は5万5000円の赤字。
単純計算で、1年間で66万円もの赤字が毎年、累積されていくことになってしまうという結果が出ています。
次に「高齢者単身無職世帯の家計収支」です。
「収入」を見ると一目瞭然ですが、男女に大きな差が出ています。
シングル男性は実収入と支出の差額が約6000円のマイナス。
一方、女性は実収入が約14万円で不足分は2万466円、1年間で約25万円の赤字となります。
ただし、シングル女性で総合職の正社員として働いてきた場合は、高齢者単身無職世帯の家計収支の男性の収入を参考にしてもいいでしょう。
現在の年金受給世代は男女雇用機会均等法施行前なので、一般職女性の受給額と捉えられるからです。
この「家計調査報告」を見てもわかるように、定年退職後に仕事をせず公的年金だけで暮らそうとすると、シングル男性以外は、毎年大きな赤字になる可能性があるということです。