「理系に進学するのは男性」「エンジニアは男性の職業」――このような意識をいつの間にか抱いてしまっている人は、少なくないのではないだろうか。

事実、日本において理系の女子学生の割合は、世界の先進国と比較して極めて低い水準にある。そんな課題を解決すべく活動しているのが一般社団法人Waffleの田中沙弥果さんと斎藤明日美さんだ。

「IT分野のジェンダーギャップを教育とエンパワメントを通じて是正する」というミッションを掲げ、女子中高生対象のプログラミング講義や女性IT起業家育成のための女子中高生向けアプリコンテストの運営などを行っている。

 

CEO of Waffle.org 
田中沙弥果 Sayaka Ivy Tanaka
1991年大阪府生まれ。小中高は田舎の公立・共学に通う。2017年NPO法人みんなのコード入職。文部科学省後援事業に従事したほか、全国20都市以上の教育委員会と連携し、学校の先生方がプログラミング教育を授業で実施するための事業を推進。2019年にIT分野のジェンダーギャップを解消するべく一般社団法人Waffleを設立。2020年には日本政府主催の国際女性会議WAW!2020にユース代表として選出。SDGs Youth Summit 2020 若者活動家 選出。情報経営イノベーション専門職大学 客員教員。2020年Forbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満30人」受賞
@ivy_sayaka

 

Co-founder of Waffle.org
斎藤明日美 Asumi Saito
1990年東京都生まれ。データサイエンティストとして外資系IT企業、AIスタートアップを経て、IT業界のジェンダーギャップを解消するべく一般社団法人Waffleを立ち上げる。2020年Forbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満30人」受賞。米国アリゾナ大学大学院修士課程修了
@AsumiWaffle

 

一方、Waffle創設者の田中さんと斎藤さんは「女子学生へのアプローチだけでは、理系の世界に女性がいない問題は解決しない。その背景には構造的な問題がある」と語る。

構造的な問題とは何か、理系女子が少ないことによって生まれる弊害とは何か——。1月28日、メディア・官公庁向けに開催されたオンラインイベントで、二人はその詳細を語った。

なお、本イベントのモデレーターはフリージャーナリスト、『「男女格差後進国」の衝撃: 無意識のジェンダー・バイアスを克服する』(小学館)著者の治部れんげさんが務めた。

 

フリージャーナリスト 
治部れんげ
昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社入社。経済誌の記者・編集者を務める。2014年からフリーに。国内外の共働き子育て事情について調査、執筆、講演などを行う。著書に『稼ぐ妻・育てる夫―夫婦の戦略的役割交換』(勁草書房)、『ふたりの子育てルール』(PHP研究所)、『炎上しない企業情報発信 ジェンダーはビジネスの新教養である』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃: 無意識のジェンダー・バイアスを克服する』(小学館)など がある 
@rengejibu

 
本記事では、田中さん・斎藤さんの二人による講演パートの内容の一部をまとめてご紹介しよう。

 

中・高・大と、どんどん減っていく理系女子

斎藤:現在内閣府は第五期科学技術基本計画の中で “Society5.0”というものを掲げています。これは、サイバー空間とフィジカル空間を融合させたシステムによって経済発展と社会課題解決を両立する、という社会のビジョンです。

難しいことのように感じる人も多いかもしれませんが、実はとても身近なものになりつつあります。

例えば、最近ではコロナ禍でZoomを使った会議が当たり前になりましたが、このようにデジタルツール、AI、ドローンなどのIT技術が社会の隅々まで入っていくことによって、よりいっそう便利な社会になりましたよね。

今後、“Society5.0”を実現するためには科学技術の発展そのものが不可欠なわけですが、そこで「教育の問題」が浮き彫りになってきます。

何が課題なのかということを見ていく前に、まずはジェンダーギャップの現状をご説明します。

一般的に、日本の教育では高校生の進路選択で文系・理系のどちらかを選びますが、そこから大学、大学院と進むにつれて理系の女性割合はどんどん減っていく傾向にあります。

高校生の時点で、すでに理系を選択する女子学生は3割程度しかいませんし、その後、大学では理学部・工学部に進学する女子学生がそれぞれ27.8%、15.7%に、大学院では23.9%、14.1%とさらに減っていきます。これはOECD諸国の中で最も低い数字なんです。

この状況はもちろんその後の就職先にも影響を及ぼしています。概算ですが、科学技術系の専門職として働いている女性は、全体の13.5%しかいません。

最近では技術職の女性を増やそうと努力している企業も多いですが、そもそも学生の時点で理系女子が少ないので、すごく小さいパイの取り合いになってしまっているんです。

つまり、女性の技術職を増やすのであれば、それ以前の教育の段階からテコ入れをしなければなりません。

「女子は理系が苦手」は間違い。ジェンダーギャップ解消の鍵は「親」と「学校」

斎藤:こういう話をすると必ず言われるのが「そもそも女子は理系の科目が得意ではないのでは?」ということ。でも実際は、そんなデータはありません。

小中高の理数系科目の学力調査では、男子・女子のどちらも大差ないという結果が出ています。では、学力に問題があるわけでもないのに、理系に進む女子が圧倒的に少ないのは何故なのでしょうか。

それは、外部環境にすでにジェンダーギャップが発生しているからなんです。

例えば、保護者による影響です。子どもたちはいくらSNSなどでたくさんの情報を得ていたとしても、最終的に一番身近にいる保護者の影響を大きく受けます。

実際に、女性の保護者の最終学歴が理系だった場合、文系の場合と比べて、20%も多くの女子学生が理系を選択しているという調査結果があります。

また、子どもの進路に関しても、男子学生の保護者の方が、子どもに理系の仕事に就くことを期待する傾向があります。

そして、教員も大きなロールモデルの一つです。

中高では数学・化学・物理・生物など多くの理系科目を学習しますが、それらの全ての科目の教員が男性だった場合と一人でも女性の教員がいた場合を比較すると、女子学生が理系を選択する割合が11%も異なるんです。

女子学生は外部環境の影響を受け、気付かないうちに自身をステレオタイプにはめ込んでしまう傾向があると言えます。